天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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反物質

反粒子(身の周りにある物質を構成する素粒子と、質量とスピンが同じで電荷などが逆の性質を持つ素粒子)でできた物質。たとえば反水素は陽子の反粒子である反陽子の原子核とその周りを回る電子の反粒子である陽電子から構成される。粒子と反粒子が出会うと対消滅し、その質量に相当するエネルギーがガンマ線などとして放出される。また、エネルギーから粒子と反粒子のペアが対生成されることもある。
現在の宇宙は物質からできており、反物質はほとんど存在しないと考えられている。このようになるには、宇宙初期に対消滅からわずかな物質だけが生き残る必要がある。CP対称性の破れにその原因があると考えられているが、まだ未解決の問題である。

万有引力の法則を参照。

カール・セーガン(Carl Edward Sagan;1934–96)は、アメリカの天文学者、惑星科学者。ニューヨークに生まれ、1951年シカゴ大学入学、同大で1960年に天文学で学位を取得した。その後、カリフォルニア大学、スミソニアン天体物理観測所、ハーバード大学を経て、1971年にコーネル大学の教授に就任する。学問的業績は、金星が温室効果による高温高圧の大気を持つこと、土星の衛星タイタン木星の衛星エウロパに有機物質の液体の海があることを予見したこと、火星の砂嵐、核戦争による「核の冬」、人間が居住できるように他惑星の環境を変化させる「テラフォーミング」の提唱など、惑星科学の多くの分野にわたる。地球外知的生命体探査(SETI)の強力な擁護者で、NASAの惑星探査計画でも指導的役割を果した。また、啓発的なテレビ番組『コスモス』(1980年)を監修したり、多くの著書(『エデンの恐竜』『コンタクト』『惑星へ』など)があることでも知られる。

 

宇宙空間における銀河の空間分布と、大部分の質量を担うダークマターの空間分布は同一ではない。しかし、銀河の空間分布は直接観測できるため、銀河分布を用いてダークマター分布を推定することが考えられる。銀河分布の空間的ゆらぎとダークマターの空間的分布の関係は、特に小スケールにおいて複雑なものであるが、線形理論の成り立つような大スケールにおいては、両者の空間的ゆらぎは比例すると考えられる。このことは理論的にも観測的にもある程度確かめられており、このときの比例定数がバイアスパラメータである。銀河形成過程の詳しい解明がなされていない現状では、この比例定数を完全に理論的に求めることはできない。そのため、宇宙論的な銀河分布の解析では通常不定パラメータとして扱われる。簡単な場合には定数として扱われるが、スケール依存性や時間依存性を考慮しなければならない場合もある。

電離水素領域(HⅡ領域)の周辺部(リム)に存在する明るく輝く星雲のこと。ブライトリム雲の内部には若い星である赤外線点源が付随していることが多い。これらは分子雲の周囲が電離水素領域の高い圧力により圧縮されたことに誘発されて星生成が起きた例ではないかと考えられている。

恒星が数日のうちに急激に明るくなり、その後緩やかに減光し、爆発前の状態に戻る現象を新星と呼ぶ。白色矮星を含む連星系の相手の恒星から白色矮星表面にガスが降り積もりやがて核爆発を起こすためと考えられるので、新星は繰り返し現象であるが、その周期は長いものでは数万年以上にもなる。短周期のため2回以上新星現象が観測されたものを再帰新星という。回帰新星、反復新星、再発新星などとも呼ばれる。矮新星も参照。

ニュートン(I. Newton)が発見した物体間に働く引力の法則。質量が $m$$M$ の2つの質点が距離 $r$ だけ離れて存在しているとき、この2つの質点には、お互いを引っ張り合う方向に

$$F=G\frac{mM}{r^2}$$

ベクトル表記では、

$$\boldsymbol{F}=-G\frac{mM}{r^3}\boldsymbol{r}$$

の力が働く。
この法則とニュートンの運動方程式から、惑星の運動に関するケプラーの法則はすべて明快に説明付けることができる。 $G$ は万有引力定数と呼ばれる比例定数で、IAU1976天文定数系では

$$G=6.672\times 10^{-11}\,\,\,\,[{\rm m^3 kg^{-1} s^{-2}} ]、$$

IAU2009天文定数系では

$$\hspace{0.5cm}G=(6.67428 \pm 0.00067)\times 10^{-11}\,\,\,\,[{\rm m^3 kg^{-1} s^{-2}} ]、$$

CODATA (Committee on Data) 2018 推奨値では

$$G=(6.67430 \pm 0.00015)\times 10^{-11}\,\,\,\,[{\rm m^3 kg^{-1} s^{-2}} ]$$

である。万有引力定数そのものを正確に求めることは難しいが、万有引力定数に天体の質量を掛けた $GM$ という形では、精度よく計測されている。重力も参照。

脈動変光星の一種で、HR図上で、水平分枝のセファイド不安定帯に位置する種族Ⅱ(星の種族を参照)の変光星。RRライリとも呼ばれる。天の川銀河銀河系)の球状星団ハローに見られる。スペクトル型はA-F型、典型的な周期は0.5日、変更幅は0.5-1等である。絶対等級は0.0-1.0等の狭い範囲にあり、金属量の補正をするとかなり良い精度で推定できる。このため、種族Ⅱの1次距離指標として、種族Ⅰ(星の種族を参照)の1次距離指標であるセファイドがない種族Ⅱ天体、特に球状星団の距離決定に重要な役割を果たす。かつては星団型変光星と呼ばれたこともあるが、この呼び方は現在ではほとんど使われていない。

光度が非常に高く、表面温度の高い変光星。英語名からLBVと略称されることもある。HR図上で左上方に位置し、大質量星のなかでも特に質量の大きな星が主系列段階を終えた後の進化段階に対応していると考えられている。光度は太陽の30万倍から300万倍に達し、可視光では数時間から数百年で不規則に明るさが変化する。一般に活発な質量放出を示すが、太陽質量程度の物質を一度に噴出する現象がみられることもあり、りゅうこつ座イータ星にみられた1837-60年の増光が有名である。1万年程度続くこの段階で質量放出により外層を失った星は、ウォルフ-ライエ星へ進化するであろう。また、II型超新星の前駆天体であると考えられている。進化の模式図を参照。

白色矮星ロッシュローブを満たす晩期型主系列星からなる近接連星系の総称。大きな変光現象を伴う。連星間距離は太陽半径程度、軌道周期は1~10数時間。白色矮星表面で降り積もったガスが起こす水素の熱核暴走反応による新星降着円盤の物理状態の変化により大きな光度変化を起こす矮新星などがある。矮新星では、晩期型星表面から流れ込むガスが白色矮星の周りで降着円盤を形成し、やがて主星に落ち込んでいくが、白色矮星の磁場が強くて降着円盤の形成が妨げられる場合があり、強磁場激変星と呼ばれる。

伴星から流入するガスが降着円盤にぶつかる点は明るく輝き、ホットスポットと呼ばれる。ホットスポットは軌道位相によって見え方が変わり、系全体の明るさが変化するので、軌道周期を求めるのに利用される。

降着円盤は原始惑星系、X線連星、活動銀河核など、様々なスケールの天体現象で活動性の源となっている。再帰新星も参照。

セファイドを参照。

ここでは幾何光学における焦点の説明をする。幾何光学においては、光学系の光軸に平行に入射してきた光が光軸と交わる点を焦点と呼ぶ。焦点を通る光軸に垂直な平面を焦点面と呼ぶ。カメラレンズなど結像透過光学系では、光をどちらから入射するかによって焦点は実焦点と虚焦点の2つできる。このとき、それぞれの焦点を共役焦点と呼ぶ。2次曲面からなる反射鏡の場合も同様である。放物面の場合一つの焦点は無限遠となる。

太陽に比べて著しく金属(重元素)の組成の低い星。水素とヘリウム以外の元素は金属と総称されることが多く、太陽近傍の星の多くは太陽と同程度の金属量をもつが、稀に太陽の1/10あるいはそれ以下の星がみられる。それらは種族Ⅱの星と呼ばれ、天の川銀河銀河系)のハローを構成する年齢の高い星が多い。これらは宇宙初期に、まだ重元素が豊富にならない段階で形成された小質量星の生き残りと考えられる。また、球状星団矮小銀河にも多く見られる。どのくらいの金属量の星を金属欠乏星と呼ぶかは明確に決まっているわけではなく、研究対象によってかなり幅がある。

化学特異星を参照。

光学系の主点と焦点(focal point)の間の距離のこと。光軸に並行な入射光線が光学系によって焦点を結ぶとき、焦点に到達した光線を入射光側に延長し、それが入射光線と交わる点を通って光軸に垂直な面を主平面という。主平面が光軸と交わる点が主点である。一般に主平面および主点は2つできる。1枚の薄凸レンズの場合は、主平面は1つでレンズの中心面に一致している。1枚の反射鏡の場合は、主点は鏡の面頂点に一致する。

口径比を参照。

天体は内部運動を持つので、広がりを持つ天体の放射する輝線スペクトルは天体内の場所毎の視線速度に対応する波長で観測される。そこで、天体内の速度構造を知るためには、一定の視線速度の範囲ごとの輝線スペクトルの平均強度の分布図を描くと便利である。電波天文学では強度分布図をマップと呼ぶことが多く、一定間隔の視線速度は分光器のチャンネルに対応するので、これをチャネルマップと呼ぶ。実際の例を図に示す。電波連続波恒星の分布など視線速度情報を持たない強度分布図との比較の際に用いると便利である。

大きく広がった大気を持つ恒星(英語名称の最後の star は省略されることが多い)。光度階級ではIIIとIIに属する。赤色巨星赤色巨星分枝を参照。

化学特異星を参照。

赤色巨星白色矮星の連星系で、スペクトルに特異な特徴を持つ星。低温度星の分子吸収スペクトルと高温ガスからの輝線が同時に観測される。輝線は赤色巨星から白色矮星への質量移動によって形成された白色矮星周りの降着円盤から発せられると考えられている。