紫金山-アトラス彗星(C/2023A3)はオールトの雲起源の非周期彗星。2023年1月9日に中国の紫金山天文台で発見され、同年2月22日に南アフリカのATLAS望遠鏡(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System:地球衝突小惑星の発見を目的とした自動観測プロジェクト)で独立に検出されたため、両方の観測所の名前から名づけられた
近日点通過は2024年9月27日で、距離は0.391天文単位。地球に最接近するのは、2024年10月12日(0.47天文単位)。その前後に肉眼で見えるぐらいに明るくなるのではないかと期待されている。
東京大学アタカマ天文台(TAO)山頂施設で撮影された紫金山-アトラス彗星。2024年10月1日5時00分-6時20分(チリ時間)の80分間に得られた静止画803カットからタイムラプス処理をおこなって作成した動画。
撮影 : 東京大学TAOプロジェクト/中西昭雄
https://www.youtube.com/embed/PXNK62SQcd0?si=G9OPTdpLKXGBmbtm"
パーカー・ソーラー・プローブは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の太陽観測探査機で、2018年8月に「デルタ IV ヘビー」で打ち上げられた。
金星の重力を利用して計7回の減速スイングバイを行って軌道の近日点を太陽へ接近させ、最終的に太陽表面から約616万km(太陽半径の8.86倍)まで接近する予定。太陽からの熱や放射に耐えられるよう、厚さ11cmの炭素複合材で出来た太陽シールドを持ち、連結式の太陽電池パネルは水冷システムで低温に保たれ、太陽に接近する際には保護のために折りたたんでの収納が可能である。
打ち上げから3年後の2021年、8回目の近日点通過において、太陽表面から約1000万kmの距離まで接近し、コロナへの突入に史上初めて成功した。
この探査機は計画段階からソーラー・プローブ・プラス(Solar Probe Plus)と呼ばれていたが、宇宙物理学者ユージン・パーカーを称えて2017年5月に現在の名前に改称された。
明るく輝く高温プラズマ中にあるブラックホールを見ると、光子球の外側で表面輝度が高まるので、観測者にはブラックホールが光子リングに取り巻かれた影(暗い穴)となって見える。この影をブラックホールシャドウと呼ぶ。
イベントホライズンテレスコープ、M87も参照。
ブラックホールの事象の地平面の外側にある薄い球殻状の境界領域。この領域では重力が強いので、入射した光子はブラックホールの周りを周回する。周回した光子は最終的にブラックホールに吸い込まれるか、外側に飛び去っていく。光子球の内側から観測者に届く光子は少なくなるので、ブラックホールの中心付近は影となって見える。この影をブラックホールシャドウと呼ぶ。明るく輝く高温プラズマ中にブラックホールがあると、光子球の外側で表面輝度が高まるので、観測者にはブラックホールシャドウを取り巻く光子リングが見える。リング状に見えるのは、ブラックホールをどの方向から見ても同じである。
ブラックホールに突入するカメラが見る映像。銀河系中心にあるのとほぼ同じ、太陽質量の430万倍の回転していないブラックホールに落ち込んでゆく様子をアメリカ航空宇宙局(NASA)がスーパーコンピュータを5日間動かして制作した。タイムスタンプ1:36-2:23では、画面右下に光子リングと事象の地平面に対するカメラの位置が示されている(字幕は英語)。
https://www.youtube.com/embed/chhcwk4-esM?si=zRFqTArSXtEI9x5T"
インドの宇宙研究機関(Indian Space Research Organisation:ISRO)が行っている一連の月探査計画。チャンドラヤーンはサンスクリット語の「チャンドラ」(月)と「ヤーナ」(乗り物)による合成語で、直訳すると「月の乗り物」という意味になる。
チャンドラヤーン1号は2008年10月22日にインド国産ロケットPSLV-C11を使用し、サティシュ・ダワン宇宙センター(Satish Dhawan Space Centre)から打ち上げられ、11月12日に高度100キロの月周回極軌道に入った。搭載機器の月面鉱物マッピング装置「Moon Mineralogy Mapper(M3)」によって、月面における水の存在を確定的とする成果を挙げた。また、月面衝突装置「Moon Impact Probe」を探査機本体から切り離して、シャクルトン・クレーターに衝突させ、アメリカ、旧ソ連、日本、欧州宇宙機関に続いて5番目に人工物を月面へ到達させることに成功した。
続いて2019年7月22日にGSLV-IIIロケットでチャンドラヤーン2号が打ち上げられ、月面着陸を目指したが、着陸予定時刻直前に着陸機からの通信が途絶え、軟着陸は失敗した。
チャンドラヤーン3号は2023年7月14日にLVM3ロケットで打ち上げられた。8月23日に月の南極付近(南緯約69度・東経約32度)へ着陸し、インドはアメリカ、旧ソ連、中国に次ぐ4番目の月面着陸成功の国となった。その後、着陸船「ビクラム(Vikram)」から探査車「プラギャン(Pragyan)」を降ろすことにも成功している。月の夜を迎える9月4日には両者の受信機を有効にしたままスリープモードに入ったが、月が夜明けを迎える9月22日になっても通信は再開しなかった。
参考:https://www.isro.gov.in/Chandrayaan_1.html
https://www.isro.gov.in/Chandrayaan_2.html
https://www.isro.gov.in/Chandrayaan3_New.html
中国(中華人民共和国)が2020年7月23日に打ち上げに成功した火星探査機。2011年にロシアに打ち上げを委託した火星探査機(蛍火1号)の打ち上げが失敗したため、火星着陸に成功した中国初の火星探査機となった。これで中国は、火星軟着陸の成功においては、旧ソ連とアメリカについで3番目、ローバーによる探査においてはアメリカについで2番目の国となった。
天問1号は周回機(オービター)と着陸台(ランダー)および探査車(ローバー)から構成されている。2021年2月に火星周回軌道に投入され、2021年5月15日にランダーとローバーの「祝融」(Zhurong)が火星北部低地のユートピア平原への着陸に成功した。活動を開始した祝融は、ほぼ1年間で累計2000メートル近く走行し、大量の貴重な科学探査データを取得した。2022年5月に冬に入り、砂嵐に襲われたためにスリープモード(休眠状態)に入った。2023年1月時点では休眠状態からの復帰ができていない。
探査機の名称は戦国時代の詩人屈原が、宇宙創造伝説などへの疑問をつづった詩『天問』に由来し、探査車の名称は中国神話の火を司る神「祝融」に由来するとのことである。
アラブ首長国連邦(UAE)構成国の一つドバイ首長国が、UAEの建国50周年を記念し2021年の火星到達を目指して計画・開発した火星探査機。ミッション全体は、エミレーツ・マーズ・ミッション(Emirates Mars Mission)と呼ばれる。
2020年7月20日に日本の種子島宇宙センターからH-IIAロケット42号機で打ち上げられ、2021年2月9日に火星周回軌道に入った。探査機を火星周回軌道へ投入することに成功したのは、米国、ソ連(ロシア)、欧州、インドに次いで5番目である。火星の大気と気象の観測を行い、かつて表面に水を保持できた状態から現在に到った過程を研究することを目的としている。高解像度カメラと紫外線、赤外線用の二つの分光器を搭載している。
ホームページ: https://www.emiratesmarsmission.ae/
オサイリス・レックス(OSIRIS-REx;オシリス・レックスとも呼ばれる)は、アメリカ航空宇宙局のゴダード宇宙飛行センター (NASA/GSFC) が、アリゾナ大学の月惑星研究所などと共同開発した小惑星探査機。「アメリカ版はやぶさ」とも称され、小惑星ベンヌ(Bennu;べヌーとも呼ばれる)からのサンプルリターンを目的として2016年9月に打ち上げられた。2018年12月にベンヌとのランデブーに成功し、2020年10月にベンヌ表面から試料を採取、2023年9月にサンプル入りのカプセルを地球へ投下、推定250gの試料を採取することに成功した。
探査機本体は、再突入カプセルを分離後にミッション名をOSIRIS-APEXと改め、小惑星アポフィス(99942 Apophis)の周回探査(2029年到着予定)に移行している。
OSIRISは Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, Security の頭字語で、古代エジプトの神「オシリス」を表しているので日本語ではオシリスと発音されることが多いが、アメリカでは「オサイリス」に近い発音となる。ちなみにREx(レックス)はRegolith Explorerで「王」を意味するラテン語、APEX(エイペックス)はAPophis EXplorerの略である。
ホームページ:https://www.asteroidmission.org/
ベピコロンボ (BepiColombo) は、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) とヨーロッパ宇宙機関 (ESA) が協力して進めている国際水星探査計画。2018年10月にギアナ宇宙センターからアリアン5ロケットで打ち上げられ、合計9回の惑星スイングバイ(地球1回、金星2回、水星6回)を経て、2025年12月に水星周回軌道へ投入される予定。
JAXAが担当するのは水星磁気圏探査機「みお」(MMO: Mercury Magnetospheric Orbiter)で、水星の磁場を精密に観測する磁力計や、プラズマ・粒子観測装置など五つの計測機器を搭載している。ESAが担当する水星表面探査機(MPO: Mercury Planetary Orbiter)は、さまざまな波長を捉えるカメラで表面の様子や鉱物の組成などを詳しく調べる。2機の探査機を同時に水星周回軌道へ送り込み、総合的な観測を予定している。
水星の自転と公転の共鳴関係を発見し、スイングバイを惑星探査機の航行に利用した先駆者である、イタリアの数学者・天文学者のジュゼッペ・コロンボ(Giuseppe Colombo)の愛称に因んで命名された。
べピコロンボ(ESA)のホームページ:
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/BepiColombo
「みお」(JAXA)のホームページ:https://mio.isas.jaxa.jp/
プラズマベータを参照。
ガス圧を磁気圧で割った比のこと。磁場エネルギーに対する、ガスの内部エネルギーの目安でもある。プラズマベータが低いときは磁場が優勢な状態であり、磁場エネルギーが散逸することで高温になる現象が発生したりする。
Five College Radio Astronomy Observatoryの略。五大学電波天文台のこと。
Five College Radio Astronomy Observatoryを略したFCRAOと呼ばれることが多い(Astronomicalではないことに注意)。米国マサチューセッツ州東部のアムハーストにある、マサチューセッツ大学を含む5大学が共同で運用しており、以前は大学本部から東に5~6kmほど東のクオビン湖畔に設置された14m電波望遠鏡を運用していた。設立は1969年と古く、ミリ波観測の嚆矢となる多数の研究を行ってきたが、14m鏡は2011年には閉鎖された。現在の主力観測装置はメキシコにある大ミリ波望遠鏡LMTとなっている。
日中共同で中国チベット自治区の羊八井 (ヤンパーチン) 宇宙線観測所 (東経90.5度、北緯30.1度、標高4,300 m) に建設された宇宙線観測装置。面積 0.5 m$^2$ の地表粒子検出器 597台を約65,000 m$^2$の範囲に設置した空気シャワーアレイと、地下2.4mに設置されミューオンを観測する有効面積3,400 m$^2$の水チェレンコフ検出器、および空気シャワー観測装置の中心付近に配置された空気シャワーコア観測装置YACからなる。
1993年に、月および太陽の方向からの宇宙線が欠損している(「影」ができている)ことを報告した。これは、装置の角度分解能が十分高いことを実験的に証明する結果であるとともに、地球の影は宇宙線が地球磁場の、太陽の影は太陽活動の影響を受けていることを示した。
2006年に、銀河宇宙線の到来方向の異方性の観測結果が、コンプトン-ゲッティング効果で説明できることを示した。
2019年に、かに星雲方向から約20個の100 TeVを超えるガンマ線を観測 したと報告した。これはかに星雲がペバトロンの候補であることを意味している。
ホームページ:https://www.tibet-asg.org/index_ja.html
LHAASO (Large High Altitude Air Shower Observatory)は中国四川省甘孜県の稲城(東経100度8分、北緯29度21分、海抜4,410 m)に建設された高エネルギーガンマ線および宇宙線観測装置である。2019年から観測が開始されている。1.3 km$^2$の面積にわたって4911台の電子検出器と1118台のミューオン検出器を配置した空気シャワーアレイKM2A、その中央近くに接地された有効面積78,000 m$^2$の水チェレンコフ検出器WCDAと18台の固定式広視野(16度×16度)大気チェレンコフ望遠鏡WFCTA、および10,000 m$^2$の面積に配置された電子中性子検出器ENDAから構成される。
2021年に、1 PeVを超える超高エネルギーガンマ線点源を、KM2Aの観測データから12個同定したと発表した。これらはペバトロンの候補であることを意味している。
2023年には、ガンマ線バーストGRB 221009Aから200 GeVを超えるガンマ線を、WCDAの観測データから60,000個以上検出したと発表した。
ホームページ:http://english.ihep.cas.cn/lhaaso/
ドライヤー(Johann Louis Emil Dreyer;1852-1926)はアイルランドで活動した天文学者。ドレイヤーとも表記される。デンマークのコペンハーゲンに生まれ、1874年にアイルランドに渡り、第4代ロス卿(ローレンス・パーソンズ、第3代ロス卿の息子)の助手として口径180cm反射望遠鏡で観測した。1878年からダブリン近郊のダンシンク天文台に勤務、1882年から1916年までアーマー天文台の所長を務めた。
1886年に2300個の星の位置を示した『第2アーマー星表 』(Second Armagh Catalogue)を、1888年には7840個の星雲、星団などを収録した『NGCカタログ』(New General Catalogue of Nebulae and Clusters of Stars)を発表した。さらに1895年と1908年にはこの拡張版である『ICカタログ』(Index Catalogue)を発行した。
天文学史家でもあり1890年にデンマーク(同郷)のティコ・ブラーエの伝記を、1912年には『ウィリアム・ハーシェル科学論文集』を出版した。さらに15巻からなるブラーエの全集を1913年から刊行している。1916年に王立天文学会ゴールドメダルを受賞、1923年から1926年まで王立天文学会の会長を務めた。
セッキ(Pietro Angelo Secchi;1818 - 78) は、イタリアの天文学者。レッジョ・エミリアで生まれ、イエズス会の学校で教育を受けてイエズス会士となり、神学と天文学の研究を続けた。イエズス会がローマから追放処分を受けた1848年にアメリカに渡り、ジョージタウン大学の数学と物理学の教授となった。1849年に禁令が解かれローマに戻り、ローマ大学天文台長に就いた。同天文台で、日食をダゲレオタイプの写真(銀板写真)に撮影することに成功し、太陽の光球、彩層、コロナの構造を明らかにするなど、天体物理学の先駆的な研究を進めた。分光器を用いた恒星スペクトル観測のパイオニア的な存在であり、写真が有効に利用できない時代に4000個に及ぶ恒星を、その分光観測から五つの型に分類した。この恒星の分類は、やがてハーバード大学の分類法として実を結ぶことになる。また、星雲のスペクトルに水素と未知の元素の発する輝線を発見し、それがガス状星雲であることを明らかにした。
1858年に火星の地図を製作し、その模様にCanale Atlanticoと名付けた。セッキやスキアパレリが用いたイタリア語のcanali(溝、水路の意。単数形はcanale)が英語のcanals(運河)と翻訳されたことでローウェルらによる火星の運河の議論の端緒を作った。
デモクリトス(Democritus;c.BC460 - BC370)はトラキア地方のアブデラ出身の古代ギリシアの哲学者。レウキッポス(Leucippus)を師として原子論を大成した。アナクサゴラスの弟子でもあり、ペルシアの僧侶やエジプトの神官に学び、エチオピアやインドにも旅行したと伝えられる。哲学のほか数学・天文学・音楽・詩学・倫理学・生物学などに通じ、その博識のために「知恵(Sophia)」と呼ばれた。
デモクリトスとレウキッポスは、自然を構成する分割不可能な最小単位として「アトム(不可分なもの・原子)」が存在すると考え、アトムの存在やその運動の説明のため、「ケノン(空なるもの・空虚)」の存在を考えた。このアトムは分割できず、色々の大きさや形があり、生成消滅せずに常に運動しており、これらの組み合わせや配列によって感覚でとらえられる物質や現象が生じると考えた。
自然の根源についての学説は、アリストテレスが完成させた4元素説が優勢であり、原子論は長らく顧みられることはなく、デモクリトスの著作は断片しか残されていない。しかし、18世紀以降、化学者のドルトンやラヴォアジェによって原子論が優勢となり4元素説は放棄された。ただし、近代的な原子論は、デモクリトスの古代原子論と全く同一という訳ではない。
天の川が無数の星からなることを予想した最初の人であるとも言われている。
プトレマイオスを参照
