天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

New

「QRコード付き名刺型カード」ダウンロード(PDF)

HEMT

高電子移動度トランジスタを参照。

星や銀河のスペクトルに見られる、4000Å付近を境に長波長側から短波長側への急激なスペクトルの落ち込み(ブレイク)のことをいう。主に銀河のスペクトル(多数の星のスペクトルが合成されたもの)に対して用いる。HK線と呼ばれる1階電離のカルシウム(Ca II)による吸収線(3934 Å, 3968 Å)をはじめ、4000 Åより短波長側に多くの金属元素(鉄やマグネシウムなど)による吸収線が集中しているために、このように顕著なブレイクが見られる。星の年齢と金属量が大きいほど、吸収線が強くなり、ブレイクの強さも増大する傾向がある。
若い星(特にA型星)でもバルマー吸収端(3646 Å)によるブレイク(バルマー不連続)が見られるが、これはバルマーブレイクと呼ぶ。両者の波長が近いため、銀河の低分散スペクトルではその区別は難しい。2つを一緒にして4000Åブレイクと現象論的に呼ぶと考えてよい。

現在、1秒の定義は1原子秒とされているが、原子の共鳴周波数は温度や電磁場、運動状態などによってわずかに変化をするものである。したがって、定義どおり厳密に1秒を取り出すことは極めて難しく、通常の原子時計ではそのような条件の違いは無視し、長期的な安定を目指している。逆に、定義どおりの1秒を目指すものを1次周波数標準器と呼び、国際原子時の正確さの評価などに用いられている。日本でも、情報通信研究機構などで研究開発されている。原子時計光格子時計も参照。

星が進化の果てに明るく爆発する現象を超新星と呼ぶが、その超新星の一種。水素のスペクトル線が見られるⅡ型と見られないⅠ型とに大別されるが、I型でもシリコンのスペクトル線が見られるものがⅠa型と分類される。

Ⅰa型は、連星系で、進化して巨星となった伴星から主星である白色矮星にガスが降り積もったり、白色矮星同士が合体することによって、白色矮星がその限界質量(チャンドラセカール限界質量)を超えたときに爆発すると考えられている。Ⅰa型超新星は増光の最大値(絶対等級)がほぼ一定であることが経験的に知られている。この性質を利用して、Ⅰa型超新星のモニター観測から光度曲線を作って最大光度時の絶対等級を求めて、見かけの等級と比較することによって超新星までの距離を知ることができる。超新星は明るいため遠くにあっても観測できるので、遠方銀河の距離指標によく使われる。宇宙の加速膨張の最も強い証拠は遠方のIa型超新星の観測から得られた。Ⅱ型超新星も参照。


NGC 1300銀河で発生したIa型超新星の画像と光度曲線 Credit: CAASTRO/Swinburne Astronomy Productions

https://www.youtube.com/embed/TY6Y5_7xQ8o?si=7gi_oTiSCijI444Q"

ヨーロッパ宇宙機関を参照。

銀河を構成する星々が仮に一斉に生まれたとすると、大質量星は素早く進化し、小質量星の進化には時間がかかるので、銀河全体の恒星からの放射は初期には高温の大質量星による紫外光が強いが、時間とともに紫外線成分が減じて全体に赤くなっていく。銀河からの放射はこのように時間とともに変化する。遠方の(昔の)銀河と現在の銀河を比較するときには、この効果を考慮する必要がある。観測的宇宙論において、この銀河の進化に対する補正をE補正という。Eはevolution(進化)のEである。K補正も参照。

地球外文明との交信(Communications with Extra-Terrestrial Intelligence)の頭文字をとった略称。SETIを参照。

天体の位置について研究する天文学の一分野。最近はアストロメトリと呼ぶことが多くなった。アストロメトリを参照。

天体の位置は最寄りの位置基準となる天体との相対的位置関係により決定される。その際、位置基準として用いられる天体が位置標準星で、 位置基準星ともいう。天体の精密位置を決める際の基準となる星。その位置は固有運動の情報などとともにカタログ化されている。代表的なものとして、可視光ではFK5カタログハッブル宇宙望遠鏡のポインティング用に作られたGSC、ヒッパルコス衛星によるヒッパルコスカタログ、アメリカ海軍天文台によるUCAC、USNO-A2.0 などのカタログがあり、近赤外では 2MASS カタログが用いられる。近年、撮像装置の広視野化が進み、多くの位置標準星を同時に用いて精度の高い位置決定が可能となっている。

コンプトンガンマ線衛星を参照。

光解離領域を参照。

炭素原子と酸素原子が1個ずつ結合した分子である。永久電気双極子モーメントを持つため電波のミリ波領域に回転エネルギー準位間の遷移による輝線を放射する。星間空間では水素分子(H2)の10-4 程度の存在量であるが、他の分子よりはるかに多いことと、電気双極子モーメントが小さいために熱平衡状態になりやすいことから比較的強い輝線を放射し、分子雲の主要な観測手段となっている。12COだけでなく13COやC18Oなどの同位体を含む分子からの輝線も観測される。CO(J=1-0)輝線が観測されるための臨界密度は103 cm-3 程度であるが、光学的厚みが大きいので、実際には102 cm -3 程度の低密度でも観測される。

クェーサーを参照。

1989年に打ち上げられたアメリカの人工衛星で、Cosmic Background Explorer(宇宙背景放射探査衛星)の頭文字を取ってCOBE衛星と呼ばれた。
FIRAS(Far-Infrared Absolute Spectrometer; 遠赤外絶対分光計)、DMR(Differential Microwave Radiometer; 差動型マイクロ波測定器)、DIRBE(Diffuse Inrared Background Experiment; 拡散赤外背景放射実験装置)と呼ばれる3つの検出器が搭載され、FIRASとDMRによって宇宙マイクロ波背景放射(CMB)、DIRBEによって宇宙赤外線背景放射が測定された。特に、FIRASによってCMBが高い精度で温度2.725±0.002 Kの黒体放射であることが示され、DMRによってCMBの全天に渡る温度分布のゆらぎが10万分の1 Kの精度で決定された。WMAP衛星プランク衛星も参照。
ホームページ:https://lambda.gsfc.nasa.gov/product/cobe/

歳差を参照。

アインシュタイン(A. Einstein)が特殊相対性理論提唱の10年後、1915年から16年にかけて到達したニュートン(I. Newton)の重力理論にとってかわる重力理論である。ニュートンの理論では重力は遠方まで届く遠隔作用でその伝搬速度は無限大となる。これは明らかに特殊相対性理論と矛盾する。重力の法則を特殊相対性理論と矛盾しないように拡張した理論が一般相対性理論である。
特殊相対性理論では個々の観測者の測る時間の進みと空間尺度は絶対性を失い、ミンコフスキー時空上の座標系の選択にすぎなくなったが、ミンコフスキー時空は絶対的な存在とみなされる。一般相対性理論ではミンコフスキー時空すら絶対性を失い、力学的自由度をもって運動することになる。したがって重力の存在はミンコフスキー時空からのずれとして幾何学的に表される。ミンコフスキー時空からのずれを時空の曲がり(あるいは時空のゆがみ)と表現する。時空の曲がりは4次元では20個の独立な成分をもったリーマンテンソルで表される。リーマンテンソルが重力場の数学的な表現である。物理法則はこの曲がった時空上の任意の座標変換に対して不変な形で表されるという要請(一般相対性原理)から導かれるのが一般相対性理論である。
一般相対性原理を満たす時空の曲がりを規定する方程式がアインシュタイン方程式で、物質のエネルギーと運動量の分布を表すエネルギー運動量テンソルからリッチテンソルを決める式である。リッチテンソルはリーマンテンソル(4次元では20個の独立成分をもつ)から作られるが、独立な成分が4次元では10個であるため、リーマンテンソルのすべての成分を規定することができない。すなわち物質が存在しない状況(真空)でも時空は曲がり、重力場が存在できる。例えば重力波ブラックホールはアインシュタイン方程式の真空解であり、天文学的にも非常に重要な解である。現在までのところ一般相対性理論と矛盾する実験や観測は知られておらず、天文学では一般相対性理論が正しいいとして観測事実を解釈することが行われている。たとえば重力レンズ現象では、レンズにより歪められた像の観測から重力源(レンズ天体)の質量分布を決定したり、重力波の観測から連星系の質量や軌道運動を決定したりする。

天の川銀河銀河系)の中心に対応する電波天体。地球から見ていて座の方向に見える。初期の電波観測ではいて座で最も強い電波源であったため、この名で呼ばれるようになった。分解能が高い観測が行われるようになると、電波放射の特徴および形態から3つの部分に分けられるようになり、今では、電波アークとアーチ状フィラメントとを除いた銀河中心を含む部分だけをいて座Aと呼ぶ。そこにある直径3分角ほどの環状の電波源は超新星残骸、その西寄りにある点状電波源いて座A*天の川銀河の中心にあるブラックホールに対応する。いて座A*周囲では回転するガス円盤と落ちつつあるガスによる渦状の天体(いて座A*ないしミニスパイラルと呼ばれる)が電波や赤外線で観測されている。

地球極運動のために、緯度が変化すること。

急冷炭素質物質を参照。

望遠鏡の観測装置焦点面に投影した天球上の角度縮尺のこと。通常、焦点面上の1ミリメートルが角度の何秒に相当するか、すなわち、角度秒/ミリメートル(arcsec mm-1)の単位で表す。写真乾板(フォトグラフィックプレート)が天文学の主たる検出器であったことを反映して、プレートスケール(あるいは乾板縮尺、乾板スケール)ともいう。またCCDに代表される近年の電子的二次元検出器では1ピクセル(画素)が角度の何秒に相当するかを表すピクセルスケール(画素スケール)という概念も使われる。イメージスケールは望遠鏡の焦点距離のみで決まり、焦点距離を $f$ (m)とすると $\frac{206}{f}$ [arcsec mm-1] となる。