天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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減速定数

宇宙の膨張速度が時間変化する割合を示す無次元量であり、減速しているときに正、加速しているときに負になるように減速度で表す。宇宙のスケール因子aその時間に関する1階微分をa˙、2階微分をa¨とすると、現在時刻t0の宇宙の減速定数q0

q0=aa¨a˙2|t=t0

と書かれる。任意の時刻における宇宙膨張の減速度を、現在のそれと区別して減速パラメータと呼ぶことがある。

視太陽時では太陽南中するとき、平均太陽時では午前12時(お昼の12時)のこと。午後12時(真夜中、午前0時)は正子(しょうし)という。かつて十二支を使って時刻を表していたことに由来し、それぞれ午の正刻、子の正刻という意味である。
平均太陽時はもともと正午から正午までを1日と数えていた(天文時)が、1925年以降は正子から正子までを1日と数えるようになった(常用時)。

核子(陽子と中性子)から新たに原子核が合成される事象であり、ビッグバン時の軽元素(ヘリウム、重水素、リチウム)の合成(ビッグバン元素合成)、星の中での元素合成、超新星爆発時の元素合成、宇宙線星間物質の相互作用(核破砕)による元素合成がある。核融合も参照。

 

メトリックともいう。一般相対性理論における計量とは、時空間の局所的な構造を特徴づける基本的な量である。たとえばxy 座標の張られた平坦な2次元平面において、微小な間隔 (dx,dy) だけ離れた2点間の物理的距離の2乗はピタゴラスの定理により dl2=dx2+dy2 で与えられる。ところが曲がった空間においてはどのような座標を張ろうともこの形で表すことはできず、一般に次のようになる。

dl2=i,j=12gijdxidxjdx1=dx,dx2=dy

ここで 2×2 行列で表される量 gij がこの2次元面の計量と呼ばれる量である。

同様に4次元ミンコフスキー時空 (ct,x,y,z) 中で任意に微小な間隔だけ離れた2つの事象の距離は ds2=c2dt2+dx2+dy2+dz2 で与えられるが、一般の曲がった時空間では次のようになる。

ds2=μ,ν=03gμνdxμdxνdx0=cdt,dx1=dx,dx2=dy,dx3=dz

ここで 4×4 行列で表される量 gμν がこの時空間における計量である。

一般相対性理論におけるアインシュタイン方程式は、計量 gμν に対する非線形偏微分方程式となっている。それは時空間の構造を決める計量と、その中にあるエネルギー成分の状態を定量的に関係づける方程式である。

超重力理論に現れる素粒子の一種で、グラビトン(重力子)の超対称性パートナーである。スピン3/2をもつフェルミ粒子である。その質量は超対称性を破る機構と密接に関係し、たとえば重力によって超対称性を破る場合は102-103 GeV 程度の値をとるのが標準的であり、ゲージ相互作用を通じて破れる場合はもっと軽くてもよい。グラビティーノは超対称性粒子の中で最軽量である場合を除き不安定であるが、他の粒子と重力の強さでしか相互作用をしないため、その寿命は質量m3/2 だけで決まり、

τ108(m3/2100GeV)3[s]

と長い。そのため初期宇宙の軽元素合成後に崩壊し、生成した元素を壊してしまうため、その存在量は強く制限される。インフレーション後のグラビティーノの生成数密度とエントロピー密度の比は再加熱温度に比例するため、このことは再加熱温度の上限を与え、TR <106-108 GeV 程度の値を満たさなければならない。ただし、この制限は軽元素合成前に別のエントロピー生成機構があれば緩和される。

日本で3番目のX線天文学 衛星として、1987年2月に打ち上げられ、1991年11月まで観測を行った。4000 cm2 という大面積比例計数管を搭載し、2-37 keVのエネルギー範囲で、微弱なX線源までの感度を持つことを特徴とし、X線連星系活動銀河核など、さまざまな天体の観測を行った。打ち上げ後まもなく大マゼラン銀河に出現した超新星SN1987AからのX線の検出にも成功した。
ホームページ:https://www.isas.jaxa.jp/missions/spacecraft/past/ginga.html

強い相互作用の理論であるQCD(量子色力学)によれば、宇宙初期の高温高密度時にはハドロンバリオンと中間子の総称)は、クォークの自由粒子ガスとして存在していたはずである。宇宙の温度がQCDスケール(102 MeV 程度)に下がったときにクォークの閉じ込めがおこり、クォークは単体では存在できなくなり、バリオンまたは中間子としてカラーの自由度の中和された状態しかとれなくなる。この状態変化をクォーク-ハドロン相転移という。この相転移はかつてはバッグモデルなどの現象論的なモデルで解析され、一次相転移であると考えられてきたが、格子QCDを用いた大規模な数値計算の発展によって、現在ではクォーク相とハドロン相が共存しながら徐々にハドロン相に転移していくクロスオーバー型であると考えられている。

地上の万物は火・空気・水・土の四元素からなるという, 古代ギリシャのアリストテレス(Aristotle)の四元素説に追加される「第五元素」になぞらえて, 宇宙の構成要素としてバリオン光子ニュートリノダークマターに次ぐ第五番目の要素としてダークエネルギーの役割を果たすスカラー場のことをいう。このスカラー場はポテンシャルに安定な最小点を持たず、場の期待値が時間変化し続ける性質を持つため遁走型ポテンシャルと呼ばれる。これはスタインハート(P. Steinhardt)の命名によるが、彼らはこのような場があると、宇宙初期にはこの場のエネルギーは当時の主要成分である放射のエネルギー密度と一定の比を保ったまま減少し(このことをトラッカー解に従う、という)、物質優勢期になるとその相対的な比率が徐々に増して現在までに優勢になり、特殊な初期条件を取らずとも一般的に、現在の加速膨張が説明できる、と主張した。しかし、ポテンシャルの形状自体には相当の微調整が必要である。この考えが正しければ、ダークエネルギーの状態方程式パラメータ(圧力とエネルギー密度の比)は、-0.7程度になるはずであるが、現在の観測によると-1.0に十分近いため、この考え方はすでに棄却されているといってよい。一方ダークエネルギーが時間変化しないスカラー場のポテンシャルによって占められているという可能性自体は依然として残っている。

ロバートソン-ウォーカー計量の表式に出てくるパラメータ K のこと。空間の曲率の符号を表す。K が正の場合は正の曲率を持つ球面に似た空間、負の場合は双曲面に似た負曲率空間、ゼロの場合はユークリッド幾何の成り立つ平坦な空間を表す。

宇宙膨張とともに目盛が拡大する空間座標。固有時間と組になってロバートソン-ウォーカー計量の4次元時空座標として用いられる。共動座標は宇宙の物質に対して静止しており、共動座標から観測される銀河の分布や宇宙マイクロ波背景放射は大局的にみて等方的である。特異運動を無視すれば、銀河は共動座標に張り付いていると見なせるので、任意の2銀河の間の共動距離は時間によらず一定である。また、もし銀河が生成や消滅をしないとすれば、単位共動長で定義される体積(単位共動体積)当たりの銀河の個数も時間によらず一定となる(実際は銀河は進化しているので個数は増減する)。共動長に対応する物理的長さはスケール因子に正比例する。通常、共動座標の単位には現在の宇宙の物理的長さを用いる。赤方偏移 z の宇宙における 1メガパーセク(1 Mpc=326万光年)の共動長に対応する物理的長さは 1/(1+z) Mpc である。遠方宇宙の観測においては、銀河の空間分布や数密度は共動座標で表し、自己重力系である銀河や銀河団の大きさは物理的長さで表すことが多い。

共動座標で定義された体積。ある共動長に対応する物理的長さは宇宙年齢とともに変わる(スケール因子に比例する)ため、 通常共動長は、現在の宇宙における物理的長さで定義する。 したがって、1 Mpc3 の共動体積は、 赤方偏移 z の宇宙では1/(1+z)3 Mpc3 の物理的体積に相当する。 銀河が生成も消滅もしない場合、単位共動体積に含まれる銀河の個数は時間によらずに一定である (現実には銀河は進化するので個数は増減する)。光度関数や光度密度は共動体積に基づいて定義される。

宇宙(銀河間空間)の電離度を推定する方法の一つ。ガン(J. Gunn)とピーターソン(B. Peterson)によって1965年に提案された。中性水素はライマンα(アルファ)線(静止系波長121.6 nm)の波長の光子を選択的に吸収・散乱する。したがって、完全電離していない宇宙にある天体の観測スペクトルのうち自分自身のライマンα線の波長より短波長側は、天体と観測者の間にある中性水素による吸収・散乱を受けて、一様に弱く観測されているはずである。ライマンα線の波長を境にしたスペクトルの高低差から宇宙の電離度を推定するのが、ガン-ピーターソン検定である。

この検定は高い信号対雑音比のスペクトルを必要とするので、明るい天体であるクェーサーが主に用いられる。最近ではガンマ線バーストへも応用されている。この検定により、宇宙は現在から赤方偏移6程度までほぼ完全に電離していることがわかっている。ただし、ライマンα光子は極めて吸収・散乱されやすいので、ごく少量の中性水素があるだけで短波長側のスペクトルは完全にゼロになってしまう。そのためこの検定は、完全電離にごく近い状態の診断に適している。また、現実の銀河間空間はこの検定で想定されているような一様密度ではなく、さまざまな規模のガス雲(クェーサー吸収線系)が存在する。検定の際はこの効果も考慮する必要がある。

宇宙はビッグバン以来膨張を続けている。宇宙膨張を支配するものが通常の重力であれば、物質の引き合う性質により膨張は必ず減速するはずである。しかし20世紀終わりに、遠方にあるIa型超新星の観測によって、実際には宇宙の膨張が加速していることが示された。このことは、引力だけが働く通常の重力とは異なる力が宇宙の膨張に寄与していることを示唆する。この観測だけでなく、宇宙膨張の時間変化に感度を持つ大多数の観測は、どれも加速膨張する宇宙を支持している。
加速膨張の根本的な原因については、現在のところ確定的な結論は出ていない。最も単純な説明は、もともとアインシュタインが静止宇宙モデルをつくるために導入した宇宙定数によるものである。正の宇宙定数は宇宙全体に斥力を及ぼす。適当な値の宇宙定数の存在を仮定すると、観測に矛盾しない加速膨張を説明することができる。
素粒子理論の基礎である場の理論においては、場のゼロ点エネルギーに起因する真空エネルギーが自然に現れ、これは宇宙定数の役割をする。だが素朴に期待されるそのエネルギーの値は、観測的な宇宙定数とみなすには120桁以上も大きなものになる。これは素粒子理論における宇宙定数問題として長らく知られているものである。これまで真空エネルギーは何らかの対称性により完全に打ち消し合っているものと暗黙のうちに考えられていた。だが有限の値を持つとなると、その不自然さはさらに際立つことになった。
加速膨張の原因としてはその他にも、未知のスカラー場による説明や、余剰次元宇宙モデルをはじめとした一般相対性理論の修正による説明、人間原理による説明など、いろいろな考え方が提案されているが、どの説明も十分満足のいくものとは考えられていない。ダークエネルギーと名付けられた加速膨張の原因は、現代物理学の未解決問題である。

ゆらぎの統計的性質には無数の可能性があるが、そのうち特に簡単かつ一般的に現れやすい一群のゆらぎが、ガウスゆらぎと呼ばれる種類のものである。1変数のゆらぎに対しては、その分布関数がよく知られたガウス関数で表されるものがガウスゆらぎである。2変数以上のゆらぎに対しては、任意の2変数間のゆらぎの相関だけで、ゆらぎ全体の性質を表すことができる。ガウスゆらぎが一般的に現れやすいことは、中心極限定理によってある程度説明できる。ガウス分布(正規分布)も参照。

軽い銀河が最初に生まれ、それらが集合合体を繰り返して重い銀河や銀河の集団ができたとするモデル。われわれの宇宙のように冷たいダークマターが物質の大部分を占める宇宙では、銀河は必然的にこのように進化する。このモデルにおいて本質的な役割を果たすのはダークマターの重力束縛系であるダークマターハローである。ビッグバン直後に生じた原始の密度ゆらぎから軽いダークマターハローがまず生まれ、それらが集合や合体を繰り返して次第に重いダークマターハローになる。銀河はダークマターハローの中で星生成が起こることで誕生し進化すると考えられる。原始の密度ゆらぎの存在は、1992年に宇宙マイクロ波背景放射温度ゆらぎが見つかったことにより確実なものとなった。階層的集団化モデルは、銀河から宇宙の大規模構造まで、宇宙に見られるあらゆる階層の構造の進化を整合性をもって説明できる。銀河進化モデルも参照。

 

光学素子の表面に薄い膜を蒸着などによって付着させ、特定の性能を向上させる技術または膜のこと。レンズやクライオスタットの窓など光を透 過する素子では透過率が高い(反射率が低い)ほど好ましいが、素子の物質の屈折率に応じた反射(通常のガラスで1面当たり4%程度の反射率)がある。素子表面からの反射光の波としての位相と薄膜表面からの反射光の位相がちょうど逆になるような薄膜を形成することにより反射光を減少させる。このようなコーティングを減反射(AR)コーティングと呼ぶ。薄膜を多層にすることにより反射率やその波長依存性を用途に応じて最適化することが可能である。ミラーなどの反射率を高めるコーディングは増反射コーティングと呼ば れる。反射防止膜も参照。

X線ガンマ線検出器の前に置かれるランダムなパターンの穴を開けたマスク。穴一つ一つがピンホールカメラの穴に相当すると考えれば、検出器には複数のピンホールカメラの画像が写っていると考えることができるため、フーリエ変換など数学的な手法を用いて光源の像を再構成できる。斜入射X線望遠鏡を用いることのできない硬X線やガンマ線に対し、ある視野内の光子強度分布を、時系列あるいは検出器上の強度パターンに変調するために用いられる。実際に用いられた例として、インテグラル衛星スイフト衛星が挙げられる。すだれコリメータも参照。

夜空の星の分布を天域ごとに区切って写真撮影した天体写真地図集。パロマー山天文台の48インチシュミット望遠鏡を用いて1950-58年に赤緯-35度より北側の全天を大型写真乾板で撮影し、そのコピーが出版されたパロマー掃天写真星図(パロマーチャート)が有名。この星図は14インチ角で視野6.6度角をカバーする、青色と赤色に感度のある写真乾板936対からなる。より感度があるCCDが登場して、スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)などが新しい時代の空の地図を提供している。

カント(Immanuel Kant;1724-1804)は『純粋理性批判』(1781)、『実践理性批判』(1788)、『判断力批判』(1799)の3批判書で知られるドイツの哲学者。近世最大の思想家の一人。ケーニヒスベルグ出身で同大学に学び学位を取得、1770年から同大学教授に就任し、生涯同地に住んだ。
1755年に『天体の一般的自然史と理論』(Allgemeine Naturgeschichte und Theorie des Himmels)を出版。その中で、天の川はレンズ状の星の集団で、そのような島宇宙の一つであること、太陽系が星雲から形成されたとする星雲説(カント・ラプラスの星雲説)を唱えた。これは、星雲の中でガスが凝縮してたくさんの塊ができ、旋回して衝突合体が起こって少数の大きな塊となり、惑星になったという現代の太陽系形成論に通じる内容であった。また、月の潮汐摩擦により地球自転が遅くなることを示唆したり、「コペルニクス的転回」なる用語の創始者としても知られている。

直交した3平面での反射により、入射光の方向に180°光を折り返すための光学素子。ガラスの立方体の1つの頂点を切り出した形状を持つコーナーキューブプリズムや、3枚の直交する平面鏡で構成したコーナーキューブミラーがある。典型的な光学ガラス材BK7で製作したコーナーキューブプリズムは、正面から±5.7°の範囲内で入射する光に対し、3つの平面での反射が全反射となるため反射面をコーティングしない状態で効率が最大となる。これより広い角度からの入射に対しては、反射面をアルミなどで金属膜コーティングをしたものが利用される。レーザー測距時のターゲットなどとして用いられる。