太陽系外惑星探査を目的として、アメリカ航空宇宙局(NASA)により2009年3月6日に打ち上げられた衛星。特にハビタブルゾーンにある地球型惑星を発見し、地球型惑星の存在頻度、なかでも生命の存在する可能性のある惑星の頻度を明らかにするのが主な目的であった。搭載されたのはシュミット望遠鏡で、シュミット補正板の直径が95 cm、主鏡の直径が1.4 mである。105平方度の視野を2200x4200画素のCCD素子42枚でカバーした。はくちょう座の方向にある約10万個の恒星の明るさを連続的にモニターし、惑星が恒星の前を横切ることによる周期的な明るさの減少を観測する(トランジット法)のが主目的であった。
打ち上げ後僅か13ヶ月の観測データから1000個以上の惑星候補を発見し、太陽系外惑星探査に革命とも呼べる躍進をもたらした。2013年8月に姿勢制御系のトラブル(4個のホイールの2個が故障)で予定された主観測を終了した。2014年8月からは、使える2個のホイールを利用した新しい観測(K2ミッション)を開始したが、燃料をすべて使い切ったため、2018年11月15日にミッションは終了した。
ケプラーが9年半以上にわたって観測した恒星は50万個以上にのぼり、発見した太陽系外惑星の数は約2,800個に上る。恒星の変光そのものを1万分の1というこれまでにない高い精度で測光しているので、そのデータは、太陽系外惑星の研究ばかりでなく、変光星、連星系、星震学など恒星天文学にも大きく貢献している。
ホームページ:http://www.nasa.gov/mission_pages/kepler/main/index.html
現在の銀河を指す古い呼び名。ドイツの哲学者カント(I. Kant)による。1755年に出版された論文で、カントは、宇宙には星の集団が点在していると考え、その集団の一つ一つを大海に浮かぶ小島にたとえて島宇宙と呼んだ。ハーシェル(W. Herschel)は天の川が星の集団であることを示したが、当時はその集団、今日の天の川銀河(銀河系)、が宇宙そのものと考えられていた。1924年にハッブル(E. Hubble)が、アンドロメダ銀河は天の川銀河と同規模の恒星の大集団であり、このような大集団が宇宙に点在していることを示して、カントの島宇宙説は科学的根拠を得た。ただし、それらの恒星の大集団は現在では銀河と呼ばれ、島宇宙は歴史的用語となっている。
天体の軌道が基準面と交差するところ。天体が基準面の南側から北側へ通過する方を昇交点、逆に北側から南側へ通過する方を降交点と呼ぶ。太陽の周りを回る天体の場合は黄道面を基準面とすることが多く、昇交点の黄経(昇交点黄経 Ω)を用いてその位置を表現する。軌道要素も参照。
昇交点を参照。
2枚の平面鏡を組み合わせて、日周運動する天体を追尾するための仕組み。2枚のうち1枚は固定し、もう1枚を地球の自転軸に平行な軸(極軸)の周りに日周運動の半分の角速度(1時間に7.5°)で動かす。回転する鏡の角度を調整して、対象とする天体が固定鏡でいつも同じ角度に反射されるようにすれば、天体の日周運動を追尾できる。シーロスタットで導いた光をレンズや鏡などで結像すれば、固定式の望遠鏡となる。太陽望遠鏡(塔望遠鏡)の太陽追尾機構としてよく用いられる。太陽観測に用いるシーロスタットをヘリオスタット、恒星観測に用いるものをサイデロスタットと呼んで区別する。
1. 公転・自転の順行
中心天体の周りを公転する天体の運動の方向が、中心天体の自転の方向と同じであるとき、その運動は順行であるといい、反対方向であるとき逆行であるという。たとえば、太陽系の惑星はすべて、太陽の自転と同じ方向、つまり順行方向に公転している。惑星の周りを公転する衛星の場合も同様で、惑星の自転と同じ方向に運動するものを順行衛星、反対のものを逆行衛星と呼ぶ。木星、土星などの巨大惑星には、順行衛星のほか、逆行衛星も多数存在する。一方、天体の自転運動について、公転方向と同じ方向に自転する場合を順行自転、反対方向の場合を逆行自転という。太陽系の惑星のほとんどは順行自転しているが、金星は自転周期が243日という、ゆっくりとした逆行自転をしており、天王星は自転軸が公転軌道面に対してほぼ横倒しの状態で自転している。
2. 見かけ上の順行
地球から見た惑星が天球上を西から東に動いてゆくこと。逆行の3. を参照。
摂動を参照。
天体がその重心を含む内部の軸の周りを回転すること。この軸を自転軸、1回転するのにかかる時間を自転周期と呼ぶ。惑星や衛星、小惑星、彗星など、太陽系天体のほとんどは自転をしている。これに対し、天体が系の重心の周りを回る現象のことを公転と呼ぶ。スケート選手に例えれば、スケート場をぐるりと1周するのが公転、スピン・アクセルなど自身を軸にして回転する技が自転である。
自転周期は特徴ある地形や黒点の運動、明るさが変化する周期、電波が変化する周期などを観測することにより求めることができる。とくに、太陽や木星などガスからできている天体の場合は、緯度により自転周期が異なるので注意が必要である。
月をはじめ多くの衛星の自転周期は公転周期に等しいことが多く、母惑星に対して常に同じ面を向けている。そのほうが潮汐力による変形が小さくて済み、エネルギー的に安定だからである。
地球の自転と太陽の動き(前半)と地球の自転と月の動き(後半)を説明するムービー(製作「CGムービー人理科」)
https://youtu.be/8WjwJ-Vlb-4
惑星の自転 (@physicsJ 日本語版)
https://youtu.be/T1MrJvcllpY
惑星の自転
https://youtu.be/xSrSDMGwHa0
地球の自転が体感できる動画
https://www.youtube.com/embed/oZH1vS45oW4
アメリカ航空宇宙局(NASA)の衛星計画の名称。さまざまな波長でスペースから観測する次の4つの大型天文観測衛星を指す。1990年4月に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡(可視光線・紫外線・近赤外線)、1991年4月のコンプトンガンマ線衛星(ガンマ線)、1999年7月のチャンドラ衛星(X線)、および2003年8月のスピッツアー宇宙望遠鏡(赤外線)。これらの衛星と地上望遠鏡が協力して行った大規模な深宇宙探査「The Great Observatories Origins Deep Survey(GOODS)」は銀河の進化に関する貴重なデータをもたらした。
ホームページ:グレートオブザーバトリーズだけのものはもはやなく、NASAとESAの将来計画も含めた大型衛星をまとめた頁となっている。
https://science.nasa.gov/universe/observatories/
3つの質点が万有引力の相互作用でどのように運動するのかを調べる問題。三体問題は、特別な場合を除いて、一般的には解析的に解くことができないことが知られている。3つの質点の運動は一般的には非常に複雑になるが、数値計算などで調べる試みがなされている。1つの天体が他の2つに比べて質量が無視できるような場合は制限三体問題と呼ばれるが、この場合ですら解析的には解けない。ラグランジュ点も参照。
銀河の空間分布を調べるためには、2次元的な天球面上での位置に加えて奥行き方向の距離を得る必要がある。しかし、遠方銀河までの距離を直接測ることは難しい。そこで、銀河の赤方偏移により距離を推定して銀河を3次元空間にマッピングすることが一般的である。このような3次元空間を赤方偏移空間と呼ぶ。
実際には、静止した銀河を含む空間が膨張しているわけではない。宇宙の非一様性のために、個々の銀河は特異速度と呼ばれる固有の運動成分を持っている。このため、観測される赤方偏移は宇宙膨張成分と特異速度によるドップラー効果の合わさったものとなる。このため、赤方偏移空間における銀河分布は実空間におけるものと特異速度の分だけ異なってくる。赤方偏移空間における銀河同士の群れ集まり方と、実空間における群れ集まり方は異なる。これを赤方偏移空間変形と呼ぶ。大スケールにおいては、全体として密度が高くなっている方向へ銀河が特異速度を持つため、視線方向への銀河の群れ集まり方が大きくなる。この効果はカイザー効果と呼ばれる。逆に小スケールでは、群れ集まりのスケールを超えて特異速度により赤方偏移が変化するため、視線方向への群れ集まり方が弱くなってしまう。たとえば、銀河団を赤方偏移空間で見ると、視線方向へ引き伸ばされたフィラメント状に見えることになる。これを指に見たててフィンガー・オブ・ゴッド(神の指)と呼ぶ。
南北に扁平な回転楕円体に近い形状をしている地球に対し、黄道面近くにある月や太陽から引力が及ぼされると、地球の重心に対する力との差分(潮汐力)が偶力となって自転軸を起こそうというトルクが働く。すると、あたかも回転するコマが首を振るように、回転する地球も徐々にその向きを変えていく。この首振り運動を歳差と章動と呼ぶ。歳差はこの運動の永年項、章動は周期項である。前者はより厳密には赤道の歳差と呼び、地球の自転軸が黄道の極に対して約23.4°傾いたまま、自転とは逆向きに周期約26,000年で回転する。
一方、黄道面に対してさまざまな傾きを持つ惑星からの引力により黄道面そのものも変動する。この現象は黄道の歳差と呼ばれる。黄道の歳差では黄道傾斜角も変化する。
赤道の歳差と黄道の歳差を合わせたものを一般歳差と呼ぶ。
アメリカ航空宇宙局(NASA) とアメリカ国防省による共同プロジェクトとして、1994年に打ち上げられて月を観測した探査機。探査機はアメリカ海軍研究所が設計、製作をした。アポロ17号から20年の年月がたった1992年に開始したプロジェクトで、打ち上げまで2年、打ち上げを含めた費用8千万ドルという、それまでの宇宙探査の常識を覆す、開発が早く安価な計画である。1994年1月25日に打ち上げられて、2月下旬より約2か月にわたり極軌道から月全面を観測した。多波長カメラでの月全球のマッピングやレーザー高度計による地形計測を行った。このデータの解析から月全球の鉄の分布や、裏側の南極エイトケン盆地の凹地の様子などが明らかになった。月面までの距離は420-2950kmと大きく、高度計データが取得できたのは近月点付近のみである。そのため極域では高度計によるデータは得られていない。当初は、月探査の終了後に月を離脱して、地球と月で重力スイングバイを行い、小惑星ジオグラフォスに接近して観測を行う予定であったが、故障により中止となった。
J2000.0における1ユリウス世紀ごとの黄経の一般歳差の値。IAU1976天文定数系では5029.0966"、IAU2006歳差章動理論では5028.796195"である。
回転する座標系で運動する物体が、進行方向に垂直な方向に受ける見かけの力(慣性力)。19世紀のフランスの科学者コリオリ(G.-G. Coriolis)が導いたのでこの名がある。転向力ともいう。絶対系(慣性系)から見て物体が等速直線運動しているとき、それを回転系から見ると軌跡は曲がって見える。これを、回転系では運動している物体にみかけの力が働いて、進行方向に対して曲げられたと解釈する。これがコリオリ力である。コリオリ力は回転系の回転角速度と物体の速度に比例する。
地球は自転しているので、地球上での物体の運動はすべてコリオリ力の影響を受ける。特に、大気中の空気の流れである風や海水の流れである海流など大規模な運動ではその影響が大きい。地球上でのコリオリ力は緯度が高いほど大きい。地球の自転は西から東に向いているので、コリオリ力は北半球では進行方向に右向き、南半球では左向きに働く。赤道上ではコリオリの力の影響は現れない。台風や低気圧への大気の流れ込みが北半球では反時計回り、南半球では時計回りの渦を巻くのはコリオリ力によるものである。この様子は以下の映像からよく分かる。南半球の様子はタイムコードで2:37-2:47あたり、北半球での様子は10:00-10:28あたりがよく分かる。これは日本の気象衛星「ひまわり8号」が撮影した地球の全面画像を2015年12月21日から2016年12月21日までの1年分をつないで早送りで見せる動画である。アヌシー国際アニメーション映画祭2019のVimeo Staff Pick Awardを受賞したドイツのFelix Dierich氏による芸術作品であるが、宇宙から見た地球の1年がよく分かる科学映像としても高い価値がある。
『A Year Along the Geostationary Orbit』 https://vimeo.com/342333493
中心天体の周りを公転する小天体が他の天体から摂動を受けるとき、小天体の軌道傾斜角が大きい場合に見られる現象。古在由秀が1962年に初めて明らかにしたのでこの名がある。
古在は、太陽の周りの円軌道上を公転する木星と、木星より内側の軌道にあって太陽の周りを公転する小惑星の三体問題を考え、木星からの摂動による小惑星の軌道要素変化を調べた。その結果、木星軌道面に対する小惑星軌道傾斜角がある値(39.2°)より大きいとき、小惑星軌道の近点引数(小惑星軌道面上で昇交点から近点までの角度)が $\pi/2$ あるいは $3\pi/2$ の周りを振動する場合があることを発見した。このことを古在機構と呼ぶ。古在機構は「古在共鳴」と呼ばれることもあるが、外力の振動数と系の固有振動数が近いときに振幅が大きくなるという、通常の意味での共鳴現象ではない。上述の近点引数の振動の際に小天体の軌道離心率 $e$ は 0近くから1近くまで大きく変化する場合があるが、小天体の軌道傾斜角を $I$ とするとき $\sqrt{1-e^2}\cos I$ は保存される。この結果、離心率が小さく軌道傾斜角が非常に大きい状態と、軌道傾斜角は小さいが離心率が非常に大きい状態の間を振動することになる。 古在機構は小惑星だけでなく、惑星や彗星の運動、惑星の周りを公転する不規則衛星の軌道、さらには太陽系外惑星の軌道進化においても重要となる。
フォンツァイペル-リドフ-古在振動も参照。
地球重心を原点とし、地球に固定され、地球とともに回転する座標系。具体的には国際地球基準座標系(ITRF)によって構成される。 国際地球基準座標系における観測者の位置(X,Y,Z)は緯度φ、経度λおよび準拠楕円体からの高さhから、以下のように求められる。
X=(N+h) cosφ cosλ
Y=(N+h) cosφ sinλ
Z=[N(1-e2)+h] sinφ
ここで、N は卯酉(ぼうゆう)線曲率半径、e は準拠楕円体の離心率で、準拠楕円体の扁平率をf、地球の赤道半径をREとすると以下のようになる。
$$N =\frac{R_{\rm E}}{\sqrt{1-e^2\sin^2\varphi}}$$
e2=f(2-f)
(すなわち、地球の極半径Rpとすれば、$f=\frac{R_{\rm E}-R_{\rm p}}{R_{\rm E}}$である。)
国際天文準拠系(International Celestial Reference System; ICRS)は、歳差章動理論依存から脱却すべく考案された天球座標系の概念である。太陽系重心を原点とし、遠方の天体に対して回転しない座標系(慣性系)で、元期J2000.0においてこれまでの理論による赤道座標系およびFK5カタログとその誤差の範囲で一致するように定められた。1997年の国際天文学連合(IAU)総会で採択、1998年より採用されている。
ICRSという概念を当初具現化したのは電波観測に基づくICRF(International Celestial Reference Frame)であった。これは地上からの超長基線電波干渉計(VLBI)観測によって得られた、銀河系(天の川銀河)の外にある電波天体(クェーサーなどの活動銀河核)の位置を基準とした座標系であった。ICRFは国際地球回転・基準系事業(IERS)によって維持されており、観測の進歩に伴い2010年にICRF2、2019年にICRF3が採用された。
電波ではなく光学(可視光)観測によってICRSの実現に貢献した座標系は当初ヒッパルコス天球座標系(HIPPARCOS Celestial Reference Frame; HCRF)であった。この構築にはヒッパルコス衛星によるヒッパルコスカタログから多重星を除いたデータが用いられた。その後、より高精度のガイア衛星のデータが利用できるようになり、2022年からはGaia-CRF3が採用されている。
国際天文準拠系(ICRS)に関するIAU第31回総会決議B3(2021年)
https://drive.google.com/file/d/1a-gZ8NZQtGpKart-UOSa3WgnxVp4ls_3/view
天体が系の重心の周りを回る現象のこと。惑星が太陽の周りを回る運動、衛星が惑星の周りを回る運動、太陽系が天の川銀河(銀河系)中心の周りを回る運動、などが公転である。1周するのにかかる時間を公転周期と呼ぶ。
公転は自明なことと考えがちであるが、地球が公転していることを証明するのはじつは困難である。年周光行差や年周視差はその証拠になりうるが、とても小さな量で体感できるものではない。にもかかわらず、ケプラー(J. Kepler)は惑星の観測結果を筋道立てて分析することによりケプラーの法則を見出し、地球も太陽の周りを公転する天体の一つであることをはっきりさせた。
公転に対し、天体が自分自身の重心を含む内部の軸の周りを回転することは自転と呼ぶ。
天球上における太陽の平均的な通り道のこと。あるいは、地球が太陽の周りを公転するときの平均の軌道面(黄道面)と天球の交線といってもよい。厳密には地球-月重心の平均軌道角運動量ベクトルに垂直な面として定義される。太陽系のすべての惑星はほぼこの黄道面に近い平面上を公転運動しており、太陽系の惑星が一つの原始惑星系円盤から誕生したことが示唆される。黄道座標系も参照。
地球の自転軸は黄道に対して垂直ではなく、23.4°ほど(黄道傾斜角)傾いている。仮にこの角度が0°だとすると季節変化は起こらず、90°だと極端な季節変化が生じる。23.4°という適度な傾きがあるおかげで程よい季節変化が生じる。
