米国の重力波検出器で、ルイジアナ州のリビングストン(Livingston, Louisiana)とワシントン州のハンフォード(Richland, Washington)の2つの観測所(距離約3000 km)に設置されているL字型構造をしたレーザー干渉計で、リビングストンのものは腕の長さが4 km、ハンフォードには腕の長さが2 kmと4 kmの2機がある。インドにも同様の4 ㎞の干渉計(IndIGOと呼ばれる)1機が建設される予定である。
腕の中で光を反射鏡で何度も反射させることにより、実効約300 kmの基線長をもたせている。2つの観測所の最大の光行差は10ミリ秒であり、三角測量により重力波源の方向を計算できる。リビングストンの装置は 2004年に能動的な振動分離システムを採用し、0.1-5 Hz の振動ノイズを1/10に減少させた。2015年9月に太陽質量の数十倍のブラックホール-ブラックホール連星の合体から生じたとされる重力波の信号を2つの観測所で世界で初めて観測した、その後、ブラックホール-ブラックホール連星の合体からの重力波を3回観測した後、2017年8月に二重中性子星連星の合体から生じた重力波をVIRGO干渉計を含む3つの観測所で観測した。
マルチメッセンジャー天文学、キロノバ、KAGRA大型低温重力波望遠鏡も参照。
ホームページ:https://www.ligo.caltech.edu/
レーザー干渉計による重力波検出の原理。クレジット: LIGO/T. Pyle
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反射望遠鏡の主焦点の手前に主鏡の光軸から45度傾いた平面鏡を設置し、主焦点を鏡筒の外にまで引き出した形式の望遠鏡。ニュートン(I. Newton)が放物面鏡を用いた反射望遠鏡を発明した際に採用した形式であることから、このように呼ばれている。ニュートン焦点も参照。
地球接近小惑星のうち、軌道長半径が1.0 au (au は天文単位)以上で、近日点距離が1.017 au(地球の遠日点距離)から1.3 au の小惑星をアモールグループと呼ぶ。アモール群、アモール型と呼ばれることもある。小惑星1221 Amorにちなんで名付けられた。アモールグループの小惑星の軌道は地球軌道と交差することはないが、火星軌道とは交差しうる。アメリカ航空宇宙局(NASA)のシューメーカー探査機が探査を行った小惑星エロスは、アモールグループに属している。アテングループ、アポログループ、アティラグループも参照。
天文座標系の一つで観測者を中心とした座標系。天体の位置は高度と方位(方位角)で表す。観測者の真上にあたる方向を天頂と呼ぶ。これは観測地における測地楕円体面の垂線方向に等しい。また、天頂を通り、南北を結ぶ大円を子午線と呼ぶ。地平座標系は直観的に便利であるが、観測者ごとに異なり、地球の自転によって回転する回転座標系である。
方位角は北を 0°とし、天頂方向を軸として時計回りに東を 90°、南を180°、西を 270°のように測る。高度は地平線から測った天体の仰角で、地平線方向が 0°、天頂方向が 90°となる。高度と逆に天頂から測った角度を天頂距離と呼ぶ。天体の高度 h と天頂距離 z の関係は h = 90°- zである。
反射望遠鏡の焦点の一つ。反射望遠鏡主鏡の焦点(=主焦点)の手前に、主鏡光軸に対して角度を持った反射鏡(斜鏡(副鏡))を置いて光路を曲げ、焦点面を望遠鏡の筒より外に出すようにした焦点のことをいう(右図参照)。一般に斜鏡は主鏡光軸に対して45度の角度を持たせる。ニュートンが作った反射望遠鏡で採用された方式なので、この名前が付けられた。
ニュートン焦点は口径比(F比)が小さいため、明るく、小さな範囲に広い視野が収まるという利点を持つが、収差補正レンズなしでは広視野にわたって良像を得ることは難しい。焦点が鏡筒先端部にあるため、大型の装置を装着することが困難で、人が焦点に近づくのも容易ではない。さらに、主焦点を鏡筒外に引き出すには、望遠鏡口径に対して鏡筒がかなり長い必要がある。言い換えると、主鏡の口径比が大きい望遠鏡でないとニュートン焦点は設置できない。実際上は、主鏡のF比がF/4以下では設置不可能である。近年の研究用の望遠鏡は主鏡F比がF/2以下のものが主流となっており、したがって、ニュートン焦点が設置されることはなくなっている。ただし、アマチュア用の望遠鏡では、簡便に広い視野を得られることから、ニュートン焦点が設置されているものも多い。焦点(望遠鏡の)も参照。
目的とする天体の信号に重なる信号のこと。可視光以外の波長では単に背景(バックグラウンド)ということが多い。背景雑音も参照。
ルイ14世の時代の1667年にパリに開設された天文台で、現在は、付属施設としてムードンにある太陽観測所とナンセーにある電波観測所の2つを有する。初代の台長は、土星の輪の間隙を発見したカッシーニ(G. Cassini)。1679年に世界初の航海用の暦を発行した。1882年には口径33 cmの屈折望遠鏡が完成し、写真星図計画(Carte du Ciel)を開始した。また、1987年までは国際報時局が置かれていた。現在では隣接するパリ天体物理学研究所(IAP)とともにフランスの天文学の中心である。大学相当機関として教育にも関わっている。
ホームページ:https://www.obspm.fr/-observatoire-de-paris-.html
規則的な酸素原子の配列をもたない、ガラスのような構造の氷。実験室では、水蒸気を極低温の基板に凝結させることで生成される。温度を上昇させると結晶質氷Ic, Ibへと変化する。逆に結晶質氷を低温にしてもアモルファスにはならない。低温で、氷(Ic)の結晶に紫外線、イオン、電子線などを照射するとアモルファス氷になる。太陽系では、木星の磁気圏高エネルギー粒子の照射環境にある氷衛星エウロパ、ガニメデの表面にアモルファス氷が存在する。また宇宙空間では低温下の分子雲中でも、ダストの表面をアモルファス氷が覆っていることが赤外観測により確認されている。
ナル干渉計を参照。
背景光の統計誤差に起因する雑音(ノイズ)。露出時間内に検出器の1つの画素で検出された背景光の光子数の平方根に相当し、ショット雑音とも呼ばれる。背景が空の明るさの場合はスカイ雑音とも呼ばれる。これに対し、検出器の読み出し回路内部で発生するノイズは読み出し雑音と呼ばれる。
ダイナモ機構において、磁場のあるプラズマ(電磁流体)がねじれ運動することで、もとの磁場と平行な起電力が生じて、元の磁場に巻き付くような新たな磁場成分を生じる効果のこと。天体ダイナモにおいては、恒星の対流層、銀河内の星間物質、降着円盤などの乱流運動するガス中で発生していると考えられており、ポロイダル磁場の生成要因として重要であるとひろく考えられているが、トロイダル磁場生成の原因になることもある。
1969年2月8日にメキシコ北部に落下した隕石で炭素質コンドライトに分類される。現地の村の名前をとってアエンデ(Allende)隕石と呼ばれる。数千個以上の破片となって落下したが回収された総重量は3000 kg近くにおよび、太陽系初期進化の研究に大きな貢献をもたらした。通常のコンドライト隕石に含まれるコンドリュールと呼ばれる球粒の鉱物のほか、太陽系初期の高温凝縮物と考えられる、高アルミニウムカルシウム含有物(CAI; calcium-aluminium-rich inclusion)が多く含まれている。CAIの年代はコンドリュールよりも古く45.67億年まで遡る。また、アエンデ隕石には太陽系生成前の星間ダストも含まれていることが元素同位体分析から明らかになっている。
生命が地球外で発生して地球に到達したと考える説。ギリシア語で、パン=汎(すべて)+スペルム=種を意味する言葉が語源となっており、「汎種仮説」または「宇宙種広布説」とも呼ばれる。20世紀初頭にアレニウス(S. Arrhenius)は著書『宇宙の成立』のなかで、ケルビン(Lord Kelvin)やヘルムホルツ(H. Helmholtz)によって主張されていた生命地球外起源説を発展させた。1 μm より小さなバクテリアが、放射圧によって宇宙空間を移動することができると主張した。さらに、1960年代に、ホイル(F. Hoyle)と、ウィクラマシン(C. Wickramasinghe)は、宇宙ダストと乾燥したバクテリアの赤外線 スペクトルの類似から、伝染病の菌やウィルスが宇宙から飛来したという、病原パンスペルミア説を提唱した。一般には、パンスペルミア説は、彗星物質や火星 隕石などを含めて、広い意味での生命宇宙起源説を指している。地球起源説とくらべるとパンスペルミア説の有利な点として、有機物の光学異性が同じである(ホモキラリティ)ことを、観測されている円偏光 紫外線で説明しうることが挙げられる。
ある位置を中心にして、周期的な運動をすること。天体の動きとしては、月やラグランジュ点付近での運動で使われることが多い。
月はいつもほぼ同じ面を地球に向けているが、実際には上下左右に少しだけ振れて見える。これを月の秤動と呼び、光学秤動と物理秤動の2種類に分けることができる(ただし、物理秤動は光学秤動に比べるとはるかに小さい)。光学秤動とは、月の公転が楕円軌道であるため速度が一定でないことや月の赤道面が軌道に対して傾きを持つことなどにより数°向きが変わって見える現象である。物理秤動とは、月の自転軸に対する歳差と章動である。
ラグランジュ点での秤動とは、たとえば木星のトロヤ群小惑星のように、ラグランジュ点の周辺を振動するように動く現象を指す。さらに、太陽系天体の軌道要素がある値の周りに振動するようなときにも秤動と呼ばれることがある。
フリッツ・ツビッキー(Fritz Zwicky; 1898-1974)はスイス国籍の天文学者。ブルガリアで生まれ、スイス連邦工科大学で学位を得た後、1925年に米国に渡りカリフォルニア工科大学で教鞭を執った。1942年から天文学の教授。
超新星の観測と分類を精力的に行い、1934年にバーデ(W. Baade)とともに「超新星」という言葉を初めて使用、白色矮星や中性子星との関係を示唆した。ウィルソン山天文台やパロマー天文台の望遠鏡を使って銀河や銀河団の研究を行った。1937年には、かみのけ座銀河団のメンバー銀河の運動と明るさの観測から、はじめて、現在言うところのダークマターの存在を示唆した。1943-49年にはロケットの研究に携わり50もの特許を取得した。
1961年から68年にかけて、共同研究者とともに、パロマー天文台スカイサーベイの写真乾板の眼視検査から、約28,000銀河と9700銀河団を検出し、それらを記録した6巻のカタログ、「Catalogue of Galaxies and Clusters of Galaxies: CGCG)」を刊行した。CGCGと略称されるこのカタログには15.5等級より明るい銀河はほぼ全て含まれるという高い完全性を有していたため、21世紀になって新たな銀河サーベイが出現するまで30年近く観測的宇宙論研究の基礎データとなった。
参考:https://www.nature.com/articles/d41586-019-02603-7
夜明け前から薄明にかけて、東の空に明るく輝いて見える金星の俗称。
図の内惑星を金星とすると、西方最大離角近くの位置にあるときに明けの明星となる。宵の明星も参照。
地球接近小惑星のうち、軌道長半径が1.0 au(au は天文単位)以下で、遠日点距離が0.983 au(地球の近日点距離)以上の小惑星をアテングループと呼ぶ。アテン群、アテン型と呼ばれることもある。小惑星2062 Aten にちなんで名付けられた。アテングループは、太陽からの平均距離は地球-太陽間の平均距離より小さいが、地球軌道と交差して地球軌道の外側に来ることもある。ただし、軌道長半径が1.0 au 以下で遠日点距離が0.983 au より小さく地球軌道とは交差しない軌道をもつアティラグループも含めてアテングループと呼ぶ場合もある。アポログループ、アモールグループも参照。
太陽の光球下から浮上してきた磁気ループ構造が彩層に達し、H𝛂線で暗い筋状構造として観測されるもの。その両端はH𝛂線で明るい斑点として観測され、暗状構造の端点での磁場の極性は二つの端で異なっている。黒点がポアという小黒点として観測される1時間くらい前からアーチフィラメントは観測されるため、アーチ状の磁気構造が光球面を通過してその光球の断面部分が冷えて黒点として見えてくるまでに1時間程度の時間がかかると考えられている。
NASA赤外線望遠鏡施設を参照。
ホビー-エバリー望遠鏡を参照。