ファラデー回転を参照。
空間曲率が至るところゼロで、ユークリッド幾何学が成り立つような宇宙のこと。
ロバートソン-ウォーカー計量において K=0 とした場合に相当する。
真の明るさがわかっているか、何らかの方法で精度良く推定できる天体のこと。標準光源の見かけの明るさを観測して求め、これと真の明るさを比較し、天体から来る光の強度は距離の2乗に反比例して弱くなるという逆2乗則を利用して距離を決めることができる(標準光源法)。重要な標準光源にはセファイド、こと座RR型変光星、Ⅰa型超新星などがある。近年遠方銀河中のⅠa型超新星の観測データが蓄積され、近傍銀河に出現したⅠa型超新星の距離がハッブル宇宙望遠鏡によるセファイドの観測などから精密に決められ、Ⅰa型超新星の標準光源としての重要性が急速に高まっている。
真の大きさが既知あるいは推定可能な天体は標準尺と呼ばれる。標準光源と標準尺は宇宙膨張の歴史を知る上で必須のものである。宇宙の距離はしごも参照。
恒星大気のスペクトル中の吸収線の形成についての近似法。この近似では、源泉関数が連続吸収の光学的深さの1次関数で記述され、スペクトル線吸収と連続吸収の比が大気の深さによらず一定である、と仮定する。これによって計算されるスペクトル線強度(成長曲線)は、観測結果をよく再現する。恒星大気モデルも参照。
標準光源の見かけの明るさを測定して距離を知る方法。見かけの明るさは、真の明るさに対して距離の2乗に逆比例して暗くなることを利用する。年周視差や収束点法では測れない遠方の天体までの距離を測る天文学の伝統的な距離決定法である。さまざまな標準光源があるが、遠方の天体の距離を測るには明るい標準光源が必要である。宇宙の距離はしごは、近傍から遠方に、さまざまな標準光源を確立する体系ともいえる。最も信頼度の高い標準光源は1次距離指標と呼ばれ、種族Ⅰの星ではセファイドが、種族Ⅱの星ではこと座RR型変光星(RRライリ)が用いられた。 遠方銀河で発生するⅠa型超新星を用いた標準光源法で、現在宇宙が加速膨張していることが発見された。
近年は、スニヤエフ-ゼルドビッチ効果や重力レンズを利用するなど、標準光源を用いない距離決定法も開拓されている。距離指標も参照。
軌道要素を参照。
小惑星帯を参照。
磁場を持つ惑星や衛星の周辺で、太陽風(プラズマ)が磁場にとらえられている領域。地球の磁気圏は太陽側では地球半径の10倍程度だが、反太陽側には大きく引き延ばされた「吹き流し」状の形をしている。地球以外にも、水星、木星、土星、天王星、海王星には磁気圏がある。しかし、磁場のない金星や火星には磁気圏がない。磁気圏という言葉は、惑星だけでなく、パルサー磁気圏などのように、強い磁場を持つ天体の周囲で磁場が支配的である領域についても用いられる。
カリフォルニア工科大学、カリフォルニア大学、カナダ天文学大学連合、日本の国立天文台、中国国家天文台、インドが、ハワイ島マウナケア山頂域に建設を構想している口径30 mの次世代超大型光赤外線望遠鏡。直径1.44mの六角形セグメント鏡を492枚敷き詰めて、有効口径30 mを実現する。ベレー帽のような開口部とシャッターがドーム上の斜めのレールに沿って回転して望遠鏡の指向する方角を開閉する。補償光学系を高度化して回折限界での撮像と分光を実現することにより、およそ32等星まで観測することができると見積もられている。宇宙の銀河形成史の解明、太陽系外惑星の観測、ダークエネルギーの解明などを目指す。
ホームページ https://tmt.nao.ac.jp/office/index.html
超大型望遠鏡TMT完成予想動画
提供:NAOJ https://youtu.be/ez558EWTZvc
天体観測において、天体の明るさ、スペクトル、天体から放射される光の偏光度、偏光角などを校正するために使用する恒星のこと。測光標準星、分光標準星、分光測光標準星、偏光標準星などがあり、それぞれ、明るさやスペクトル、偏光の特徴が詳しく調べられており、かつそれらの性質が長期にわたって安定であることが知られている恒星が選ばれており、カタログとなっている。
太陽の光球で異なる極性の磁極を結ぶ半環状の磁気構造のこと。上方に凸になるΩ形状のループが通常観測される。この磁気形状の磁場に沿ってコロナ温度のプラズマが満たされるとそれはコロナループとして観測され、フレア後期に観測されるように彩層温度のプラズマで満たされるとループプロミネンスとなる。2つの接近したΩループが一つの磁力線でつながっているとすると、その間にはU型の形状が現れるが、これが一体となって光球上を移動していると解釈できる現象が黒点の外周部に観測されており、それはUループと呼ばれる磁気ループである。
ガリレオ国立望遠鏡を参照。
無数に存在する地球の重力ポテンシャルが等しい面のうち、平均海面に最も一致する面をジオイドという。等ポテンシャル面であるため、この面上で水の流れは生じず、この面は常に重力加速度の方向と直交する。1828年にガウス(C. F. Gauss)は地球形状の数学的表現としてこの面について言及しているが、1872年にこれを最初にジオイドと呼んだのはリスティング(J. B. Listing)である。
ジオイドは、地球を単純な回転楕円体で近似した地球準拠楕円体とは一致せず、地球内部の不均質な質量分布を反映した起伏を持つ。この地球準拠楕円体対する起伏(ジオイド高)の大きさはおよそ-100 mから80 mである。ジオイドは標高の基準を与えるという意味で標高体系の構築に欠かせない。幾何学的に決めた地球準拠楕円体には地球の重力の影響が考慮されていないため、これを標高の基準として用いると水が標高の低いところから高いところに流れるという直感と反する事態が起こりうる。標高体系の定義は各国で異なっており、日本の場合、全球平均海面ではなく東京湾の平均海面を地域的なジオイドと定め、標高0 mの基準としている。
地球上の重力の分布が分かれば、それを全球積分することにより、ジオイド高を計算することができる。近年、GRACEやGOCEという重力観測に特化した人工衛星が取得した全球的なデータを利用して、約100 kmの空間分解能と数cmの精度を持つジオイドモデルが開発されている。日本では、既存の衛星重力データ、地上・海上重力データに加え、新たに航空機による重力観測データを取り入れ、日本周辺で空間分解能と精度を向上させたジオイドモデルの開発が国土地理院によって進められている。
静電場における静電ポテンシャルやニュートン力学におけるニュートンの重力ポテンシャルを、それぞれの源(電荷密度、質量密度)から決める2階の楕円型偏微分方程式。平坦な空間でのデカルト座標系では、ポテンシャル Φ は次の形の方程式から決まる。
$$\left( \frac{\partial^2}{\partial x^2}+ \frac{\partial^2}{\partial y^2}
+ \frac{\partial^2}{\partial z^2} \right) \phi
=f(x,y,z)$$
ここで $f(x, y, z)$ は源の分布を表す関数。ここに現れる微分演算子(左辺の括弧の中身)を Δ と書き、ラプラシアンという。無限遠で場がゼロになる境界条件のもとでポアソン方程式は以下のように積分形となる。
$$\phi(x,y,z)=\!-\frac{1}{4\pi}\!\! \int\!\! \frac{f(x',y',z')dx'dy'dz'}{\sqrt{(x-x')^2+(y-y')^2+(z-z')^2}}$$
広がった天体の単位表面積(立体角)あたりの明るさのこと。単に面輝度という場合もある。1平方秒角あたりの等級($\text{mag}\,\text{arcsec}^{-2}$)という単位がよく使われる。表面輝度の高い(明るい)天体(惑星や惑星状星雲など)は見やすいが、表面輝度の低い(暗い)天体(銀河や淡いガス星雲など)は、夜空の明るさが増すと急速に見えにくくなる。
天体の表面輝度は星間吸収の効果を無視すれば、距離によらず一定である。ただし、銀河の表面輝度は、比較的近傍の宇宙では距離によらないが、遠方宇宙では宇宙膨張の効果により、赤方偏移 z が大きくなるにつれ、(1+z)-4 に比例して、急速に暗くなる。
夜空の表面輝度を表すときには、1平方度当たり10等星何個分に相当するかという単位($S_{10}$)が用いられることもある。両者の間には
$$\text{mag}\,\text{arcsec}^{-2} = 27.782 - 2.5 \log S_{10}$$
の関係がある。
コロナ質量放出などによって太陽からやって来たプラズマが地球磁気圏に達して引き起こす擾乱現象のこと。地磁気嵐ともいう。磁気嵐が発生すると地球磁気圏のイオンや電子の分布が変動する。オーロラが頻繁に発生したり、無線通信に障害が起ったりする。また、人工衛星搭載の精密機器を壊したり、たまに誘導電流のために送電線などに障害を生ずることもある。
流星のなかで、流星群に属さないランダムな成分を指す。放射点はなくさまざまな方向で観測される。季節変化があり、北半球では夏から秋にかけて多く、冬から春の期間は少ない。彗星から放出されてから時間がたってダストトレイルから拡散してしまった粒子、小惑星起源の粒子、公転周期の長い長周期彗星起源の粒子などが源であると考えられる。流星も参照。
天体の表面輝度分布を中心からの距離(半径)の関数として描いたもの。
銀河の場合、楕円銀河や円盤銀河のバルジ部と、円盤銀河の銀河円盤部とでプロファイルが系統的に異なっており、銀河形態の客観的な分類にも使われる。
広がった天体の明るさおよびその2次元分布を計測すること。広がった天体は一般に視線方向にも奥行きを持っているが、われわれが観測できるのは天球上に投影した天体の光のみであり、その表面的な輝度分布のみを測ることができる。天体が光学的に薄い場合、すなわち、天体のあらゆる場所から放射される光がほとんど遮られることなく観測できる場合は、表面測光によって天体からの全放射を計測することができる。密度の薄い散光星雲などがこれにあたる。球状星団の中心部や楕円銀河などは個々の恒星に分解して観測することができないが、恒星間の距離は恒星の大きさに比べて桁違いに大きいため、恒星と恒星が視線方向に並ぶ確率は極めて低い。言い換えると恒星の放射に対して光学的に極めて薄い。このため、これらの天体の表面測光は、天体の奥まで完全に見通すことになる。一方、光学的に厚い場合は、表面測光で測れるのは天体の表層からの放射のみである。このような場合、測光値は天体の全放射を示していないので、測光値から物理量を算出する際には注意が必要となる。光学的厚さも参照。
太陽の場合、皆既日食開始直後とその終了時直前に十数秒間現れる薄紅色に輝く層のこと。外層大気が一様な層状をしていると考えたとき、光球から温度最低層と呼ばれる約500 km上空までは温度が下降し約4200度まで低下するが、その上空では加熱が起こり大気温度は上昇に転じ数千度から1万度となる。この温度最低層から上空約1500 kmまでが一般に彩層と呼ばれ、その上空にあるコロナと光球に挟まれた境界層である。解像度の高い水素のH𝛂線やCa H線による観測から、彩層の中部から上部は一様な層状の構造ではなく、スピキュールと呼ばれる上昇速度80-100 km s-1の速度をもつ針状ジェット構造の集合体であることがわかってきた。
穏やかな光球と活発な彩層 / The Quiet Photosphere and Active Chromosphere
https://youtu.be/Z2jeTV6LpG0
