天体Aが天体Bに対して運動する場合に、天体Bから天体Aに向かうベクトル $\boldsymbol{r}$ がある時間の間に描く細長い扇形の面の面積のこと。微小な単位時間の間に描く面積は天体Aの速度を $\boldsymbol{v}$ として、 $(1/2)\left|\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{v}\right|$ であり、角運動量保存則が成り立てば角運動量 $\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p}$ は一定だから、面積も一定になる。つまり、角運動量保存則が成り立つ場合にはケプラーの第2法則(面積速度一定)が成り立つことがわかる。ケプラーの法則も参照。
1939年に「恒星内部でのエネルギー生成」と題する論文を書き、水素原子が融合してヘリウムになる炭素-窒素サイクル(現在はCNOサイクルと呼ばれることが多い)が最も重要なエネルギー生成反応であること、小質量の星では陽子-陽子サイクル(ppチェイン)が主要な反応になることを示した。1年前のワイツゼッカーの論文とともに、この論文によって、太陽の熱源が原子核反応によることが示された。1948年にはビッグバンでの元素合成を扱った有名な論文に名を連ねた。しかしこれは、著者となるほどの寄与がなかったにもかかわらず、彼を著者に加えれば著者名がアルファー(R.Alpher)、ベーテ(H. Bethe)、ガモフ(G.Gamow)となってαβγをもじる形で語呂が良いという、ユーモアを愛したガモフのアイデアによるものである。実際にこの論文は研究者の間では「αβγ論文」と通称されている。
原子核物理学における数々の業績で、1967年ノーベル物理学賞を受賞した。ベーテは第2次世界大戦では原爆開発(マンハッタン計画)に参加し、戦後も水素爆弾開発計画にも参加した。しかし最終的にはさらなる核兵器開発に反対の立場を取り、政府機関などで重要な役割をはたした。
ハビタブルゾーンを参照。
ヘール(George Ellery Hale;1868-1938)はアメリカの天文学者。世界最大の望遠鏡を次々と三つ作りあげた。シカゴに生まれ、マサチューセッツ工科大学卒業。分光太陽写真儀を発明し、ゼーマン効果で黒点磁場を観測した。シカゴ大学助教授から教授のとき、富豪ヤーキスの出資で口径40インチ(102 cm)屈折望遠鏡を持つシカゴ大学付属ヤーキス天文台を作った。次いでカーネギー財団の出資でカリフォルニアのウィルソン山天文台を建設、60インチ(1.5 m)望遠鏡、100インチ(2.5 m)反射望遠鏡(フッカー望遠鏡)を完成させた。また太陽用のブルース望遠鏡を移設、塔望遠鏡も置いた。さらに、ロックフェラー財団から資金援助を受けてパロマー山に200インチ(5 m)反射望遠鏡を擁する天文台を建設した。完成は第2次世界大戦のため遅れ、死後であったがヘール望遠鏡と呼ばれている。天体物理学雑誌、アストロフィジカルジャーナル(The Astrophysical Journal)誌を創刊、国際天文学連合(IAU)の創設にも努めるなど、偉大な科学行政家でもあった。
惑星や衛星の中心部を占める領域。地球型惑星と月では、中心部は鉄とニッケルを主成分とする金属核である。酸素、硫黄、水素などの軽元素も含まれている。金属核は、惑星質量に対して地球、金星、火星では3分の1程度を占める。水星では70%、月では10%以下である。地球と水星では金属核の外側は溶融状態にあり、内部の対流運動によるダイナモ作用で、磁場が形成されている。微惑星の段階では、コンドライト隕石に見られるように岩石質粒子と金属質粒子は混合していたが、天体に集積したのちに溶融状態の中で重力的に沈降して中心核を形成したと考えられる。木星型惑星では、中心部に存在すると考えられる岩石および金属成分の領域を中心核と呼ぶ。溶融と分化を経験した氷天体では、氷のマントルの内側の岩石と金属成分の領域を中心核と呼ぶ。
スイッチング観測の1つで、電波観測でよく用いられる。アンテナの主鏡を動かして目的天体の観測点(ON点)とそこから少し離れて天体からの電波がアンテナのビームに入らない点(OFF点)を交互に観測する。ON-OFF観測ともいう。ON点では天体からの電波に加えて大気や望遠鏡からの電波も受信されるが、OFF点では大気や望遠鏡だけの電波が受信され、天体からの電波は含まれない。したがってON点を観測したときの受信電波からOFF点を観測したときの受信電波を差し引くと天体からの電波だけを取り出すことができる。一つのOFF点に対して一つまたは複数のON点が観測される。ON点とOFF点の間をアンテナが移動する時間が無駄になるが、主鏡から受信装置までの光学系がほとんど変化しないため、ON点とOFF点とのデータ差し引きを高い精度で行うことができる。主鏡を動かさずに、副鏡あるいはビーム伝送系中の反射鏡を動かして観測位置を変える方法も使われており、こちらはビームスイッチや副鏡チョッピングという。
連続光で観測される太陽コロナ。コロナ(太陽の)、Eコロナも参照。
オメガ効果を参照。
量子宇宙論において、ホイーラー-ドウィット方程式を解いて宇宙の波動汎関数を求める際、用いるべき境界条件として、ハートル(J. Hartle)とホーキング(S. Hawking)が提案した条件。波動汎関数を経路積分表示し、その積分域として波動汎関数の引数以外には境界を持たないすべてのコンパクトな多様体に関して経路積分せよ、という意味を持つ。
太陽の彩層に見られるネットワーク構造の内側にH𝛂線で観測される暗点。この暗点は、H𝛂線の中心波長から0.6Å程度だけ短波長側で観測されることから、音速が10 km s-1程度の彩層内を超音速で上昇する構造である。この暗点は、約3分の周期で強度が変化して現れたり消えたりする。この変化は、カルシウムのHK線で見える輝点の変動と同期している。光球下から発生した音波が彩層に伝播する際に衝撃波化し、この衝撃波によって彩層が加熱された結果としてHK線で輝点が観測されたと解釈されている。H𝛂グレインとカルシウム輝点の関係はまだよくわかっていない。
惑星間空間擾乱を参照。
太陽内部構造とそのダイナミックスを太陽の5分振動を使って日震学的手法により明らかにすることを目的として、世界6か所に設置された同じデザインの望遠鏡で構成される観測ネットワークの名称。口径2.8 cmの小型の望遠鏡とリオフィルターとマイケルソン干渉計の組み合わせからなる狭帯域フィルターで構成される観測装置により、676.8 nmにあるNiの吸収線で太陽光球の偏光観測を行い、強度、ドップラー速度、視線方向磁場を太陽全面に対して取得している。 日震学的手法で精度の高い測定を行うには、長期間の連続観測データが必要となる。望遠鏡は晴天率の高い、スペイン・カナリー諸島のテイデ天文台、西オーストラリアのリアマンス太陽天文台、米国カリフォルニアのビッグベア太陽天文台、米国ハワイのマウナロア太陽天文台、インドのウダイプール太陽天文台、チリのセロトロロ汎米天文台に設置されており、各地で晴天であればほぼ連続観測という観測環境が得られる(実際のデータ取得率はおよそ90%程度)。観測ネットワークは代表であるアメリカ国立太陽天文台により整備され、設置される観測装置のホストとなる天文台の協力で運用されている。1995年より観測が開始され、2001年に装置のアップグレードを経て現在(2017)に至っている。GONGネットワークで取得されたデータの分析から、精度の高い太陽対流層の角速度分布が得られた。
ホームページ:http://gong.nso.edu/
日震学、5分振動(太陽の)も参照。
大気のゆらぎによる光波面の乱れをリアルタイムで測定して、波面補正素子で矯正することにより、望遠鏡の回折限界の空間解像力を実現するシステム。1953年にバブコック(H.W. Babcock)がその概念を提案した。補償光学系は参照星からの光波面を測定する波面センサー、波面を補正する可変形鏡、それらをつなぐ高速実時間制御装置からなる。波面センサーには波面の1次微分の分布を測るシャックハルトマンセンサーと波面の2次微分(曲率)の分布を測る波面センサーがある。可変形鏡にも積層型ピエゾ駆動の微小鏡をモザイク配列した方式と、多数のバイモルフ型ピエゾ電極で1枚の薄シート鏡を駆動する方式などがある。
補償光学の解説動画(製作:Gemini Observatory)
https://youtu.be/3BpT_tXYy_I
静止衛星軌道で運用される米国の環境監視衛星GOES(Geostationary Operational Environmental Satellites)によって測定される太陽の軟X線の放射エネルギー流束(フラックス)のうち, 1-8Å帯で測定された値をクラス分けしたもの。太陽コロナの活動度レベルや太陽フレアの規模を表す尺度として用いられている。
10-5 erg cm-2 s-1(10-8 W m-2)レベルをAクラス, 以後一桁ずつレベルが上がるごとに, B, C, M, Xクラスとクラス分けされている。また, X線の放射エネルギー流束の値との対応をとるために、5.0×10-3 erg cm-2 s-1(5.0×10-6 W m-2)のときはC 5.0クラスと表記される。フレアの規模を表すときには, そのX線の放射エネルギー流束の最大値が用いられる。
冷たいダークマターに基づいた理論(CDMモデル)によると、天の川銀河(銀河系)のような典型的銀河の質量(1兆太陽質量)を持つダークマターハローには、一つが1000万太陽質量から1億太陽質量のダークマターの塊が数100から数1000個も存在すると予想される一方、実際の天の川銀河に付随する衛星銀河は20個余りしか検出されていないという銀河数の不一致の問題を指す。実際にダークマターの塊が多数存在するのか、あるいは衛星銀河の形成過程に何らかの抑制機構があったのか、未だ解明されていない問題である。
励起を参照。
輝線で観測される太陽コロナ。コロナ(太陽の)、Kコロナも参照。
コロナ質量放出を参照。
数値計算で発生する誤差の一つ。数学的な実数は無限の桁数をもつが、計算機での数値計算ではこれを有限桁数で表現するために発生する誤差のこと。現在の標準である IEEE-754 形式では、有効桁数は倍精度実数の場合 2 進数で 52 ビット、単精度実数では 23 ビットであり、10進数でそれぞれおよそ 16 桁、7桁に相当する。数値計算では、演算結果は常にこの桁数に丸められるため、演算ごとに誤差が発生する。これを丸め誤差という。
アルファ効果を参照。
