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ppチェイン

高

よみ方

ぴーぴーちぇいん

英 語

pp chain

説 明

恒星の中心部でおきる核融合反応の一つ。陽子-陽子連鎖反応とも呼ぶ。4つの陽子(水素の原子核, p)から α(アルファ)粒子(ヘリウムの原子核)を合成する一連の水素燃焼反応。陽子-陽子連鎖反応とも呼ぶ。

小質量の主系列星の主要なエネルギー源であり、太陽のエネルギーもppチェインによるものである。一番上の図に示すようにppⅠ, ppⅡ, ppⅢの3つの分岐がある。温度が低い場合は ppⅠだけが働くが、温度が高くなるにつれ ppⅡやppⅢが重要になる。温度が1.5×107 K を超すと、CNOサイクルのほうが主な水素燃焼反応となる。太陽の質量がもう少しだけ大きく、中心温度がもう少し高かったら、ppチェインに代わってCNOサイクルが支配的になり、より効率よくエネルギーを放出して進化が速まり、現在まで存続していなかっただろう。

2024年06月30日更新

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    ppチェイン
    *ppチェインの反応
    岡村・家・犬塚・小山・千葉・富阪編『天文学辞典』、シリーズ現代の天文学別巻(日本評論社)p. 478
    ppⅠチェインの概念図。6つの水素原子核(陽子:1H)から、重水素(2H)とヘリウム3(3He)を経て、ヘリウム4の原子核(4He)と陽子2個ができるので、正味としては水素原子核4個がヘリウム4の原子核1個に融合されたことになる。元素記号の左肩の数字は質量数(=陽子の数と中性子の和)を表す。(電子は反応に関わらないので図には描かれていない)
    出典 Wikipedia
    https://ja.wikipedia.org/wiki/陽子-陽子連鎖反応
    恒星の内部で起きる主な核融合反応のエネルギー放出率と温度の関係。ppチェインとCNOサイクルは水素からヘリウムを合成する反応で、三重α反応はヘリウムから炭素を合成する反応である。
    出典:縣秀彦著、岡村定矩監修『ビジュアル天文学史』(緑書房)
    原図は https://en.wikipedia.org/wiki/Triple-alpha_process