天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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温室効果ガス

温室効果を引き起こすガスのこと。地球大気中で温室効果を引き起こすガスは多数あるが、効果の小さいものや、水蒸気のように効果は大きくても人間の活動では大気中の含有量がほとんど変化しないものは地球温暖化に大きな影響はない。人間活動によってその量が変化する二酸化炭素、メタン、オゾンなどの増加が地球温暖化の主要因である。温室効果は温室効果ガスだけでなく雲などによっても引き起こされる。

ラスタースキャン観測を参照。

宇宙線伝播のモデルの一つで、宇宙線のほとんどは物質量の多い銀河円盤内に銀河磁場により閉じ込められていて、そこから少しずつ漏れ出していくと考える。単純ではあるが、宇宙線寿命のエネルギー依存性を説明できるなどの利点を持ち、最も一般的に論じられている。

ポジションスイッチ観測のこと。

ハワイ島マウナケアの山頂地域(海抜約4200 m)に設置された天文台群。ハワイ州の所有する土地だが、山頂地域はハワイ大学が科学保護地域としてその管理を委託されており、ここに8.2 mすばる望遠鏡、2基の10 mケック望遠鏡、8.0 mジェミニ望遠鏡、3.6 mカナダ-フランス-ハワイ望遠鏡、ハワイ大学2.2 m望遠鏡、3.0 m NASA赤外線望遠鏡、3.8 m UK赤外線望遠鏡(UKIRT)、15 mジェイムズクラークマクスウェル望遠鏡、10.4 mカリフォルニアサブミリ波望遠鏡などが軒を並べて、北天の観測を行っている。30 m望遠鏡TMTの建設地にも決定した。
各観測所本部は麓のヒロ市とワイメア市にある。山頂へ向かう海抜2800 mの地点に中間宿泊施設ハレポハクがあり、観測者は明け方ここまで下山して宿泊する。ハレポハクにはスペースシャトルチャレンジャーの事故で亡くなったハワイ出身の宇宙飛行士(エリソン・オニヅカ)を記念したオニズカ・ビジター・センターがある。

ホームページ:https://about.ifa.hawaii.edu/facility/mauna-kea-observatories/

一般的には、ある構造物に力が加わって変形したときにその構造物の形状があらかじめ指定した形状になるような変形をホモロガス変形と呼び、そのような構造をホモロガス構造という。放物面となっている電波望遠鏡の主鏡は大型になると構造強度に対して重くなるため仰角を変えると自重による変形が無視できなくなる。そこで、変形してもまた別の放物面になり、仰角によらず主鏡で反射した電波が焦点に集まって集光力を維持するような構造をホモロガス構造として検討され、実現可能なトラス構造が存在することがわかった。この場合、焦点の位置は移動するので仰角に応じて副鏡の位置を能動的に変える必要がある。ホモロガス構造はエッフェルスベルク100 m鏡や野辺山45 m電波望遠鏡で採用されている。これらの望遠鏡についてはエッフェルスベルク電波天文台および野辺山宇宙電波観測所を参照。

ヘベリウス( Johannes Hevelius;1611-1687)はポーランド、ドイツの天文学者。しばしばへヴェリウスとも記される。グダニスク(ドイツ名ダンツィヒ)で生まれ、事業家、市会議員として活動しながら、夫人のエリザベスとともに観測研究を行い、肉眼観測により星表をつくるなど、「最後の肉眼観測者」といわれる。
望遠鏡によっても月や太陽の観察も行い、月については1647年に『月面図』(Selenographia:セレノグラフィア)を出版した。また、1673年にはレンズの直径が15cmで、鏡筒に当たる部分の長さが45mにもなる、筒のないタイプの「空中望遠鏡」を制作、公開で天文観測を行った。生涯に4つの彗星を発見しており、そのうち1661年の彗星は、のちの153P/池谷-張彗星と考えられている。
へべリウスの死後1690年に出版された星座絵入りの星図では、「ソビエスキーのたて座」「ウラニアの六分儀座」などが記載されており、そのうち7個(こぎつね座、こじし座、たて座、とかげ座、やまねこ座、ろくぶんぎ座、りょうけん座)が現在の88星座として採用されている。

 

太陽系外惑星の検出方法の一つ。ドップラー法を参照。

太陽系外惑星の検出方法の一つ。惑星よりも数桁明るい恒星の光をマスクで覆い隠して恒星のすぐ近くにある暗い惑星を撮像観測または分光観測する。一般に、明るい天体のすぐ近くの暗い天体を観測可能にする技術を高コントラスト(あるいは高ダイナミック)技術と呼ぶ。この観測に用いられるステラーコロナグラフは、太陽コロナの観測で使用されるコロナグラフと原理は同じだが、点光源である恒星の光だけを隠して、そのすぐ近くにある極めて暗い惑星の撮像をするところにより多くの困難がある。リヨのコロナグラフは、焦点面に置かれた遮光マスクと瞳面に置かれたリヨストップから構成されるが、系外惑星探査の進展に伴って、多種多様なコロナグラフが提案されている(CIAOHiCIAOを参照)。できるだけシャープな星像を得るために補償光学を並用して観測することが多い。また、コロナグラフや補償光学のようなハードウエアだけでなく、画像解析などソフトウエアによる高コントラスト技術も活用されている。直接撮像では、1度の観測だけでは惑星か背景の星か区別がつかないために、時間をおいて再度観測し惑星の公転運動を確認する、あるいは、分光観測して惑星と恒星を区別する必要がある。
恒星から100au以上離れた、あるいは褐色矮星まわりの巨大惑星候補は2004年頃から発見されていたが、太陽系の惑星の軌道距離くらい(100au未満)の巨大惑星の直接観測は2008年に成功した(HR8799、A型星)。
すばる望遠鏡における戦略枠プロジェクトSEEDSでは太陽型恒星まわりの「第二の木星」とも呼べる惑星の直接撮像など4つの系外惑星を直接撮像により発見した。現在は、VLT、ジェミニ南、すばる、LBTなどの望遠鏡において超補償光学系を用いた直接観測が進みつつある。SCExAOを参照。


すばる望遠鏡 SEEDS プロジェクト、「第二の木星」の直接撮影に成功

https://youtu.be/HpubN1gV9To

月の位相を参照。

ブラッグ回折を参照。

セファイド不安定帯を参照。

ppチェインを参照。

入射電磁波のエネルギーを熱エネルギーに変換して検出する種類の検出器の総称。電磁波のエネルギーを熱化して検出するので原理的には全ての周波数で使用できるが、多数の光子が次々と検出される場合には検出器自体の波長分解能力はほとんど期待できない。他の原理による検出器を作るのが困難な場合に多用される。遠赤外線からサブミリ波の周波数帯で利用されるほか、X線検出器としても利用される。超伝導体が臨界温度付近で抵抗の温度特性が鋭く変化することを利用した超伝導ボロメータも開発されている。これは、超伝導状態と常伝導状態の境界(臨界温度超伝導転移端)を使うことから、「転移端センサー」を意味するTransition Edge Sensorを略してTESボロメータとも呼ばれる。

セシリア・ペイン-ガポシュキン(Cecilia Payne-Gaposchkin、1900- 1979)は、イギリス出身のアメリカの天文学者。
イギリス、バッキンガムシャー出身で、セントポールズ女子校からケンブリッジ大学へ進学したが、当時のイギリスでは女性が研究を続けるのは難しかったため、アメリカのシャプレーを頼ってハーバード大学天文台に移り、ハーバード大学の学位論文で、分光観測から恒星大気の主成分が水素とヘリウムであることを明らかにした。しかし、アメリカでもなかなか認められず、1956年にようやく女性で初めてハーバード大学天文学部の教授となり、数ヶ月後には学部長になった。1967年ハーバード大学名誉教授、1976年には女性で初めてアメリカ天文学会からヘンリー・ノリス・ラッセル講師職が与えられた。夫はドイツ滞在中に知り合ったロシア人天文学者セルゲイ・ガポシュキン(S. Gaposchkin)。

太陽系外惑星の検出方法の一つ。恒星に比べると惑星は非常に軽いが、恒星のまわりを惑星が公転すると、惑星の引力により恒星自体も微小にふらつく。この恒星の微小な運動が天球上の位置の周期的な変化として、固有運動に重なって検出される。この位置変化の測定(アストロメトリ)を利用して太陽系外惑星を検出する手法のこと。最も古くから太陽系外惑星探査に使われたが成功しなかった。2002年にようやくハッブル宇宙望遠鏡で既知の惑星の位置変化が検出された。間接法のひとつ。ドップラー法も参照。


アストロメトリ法の解説動画(Credit: ESA)
掲載元のサイト https://sci.esa.int/web/exoplanets/-/60655-detection-methods

https://youtu.be/4u_dVKKRoPw


太陽系外惑星と中心星が共通重心の回りを回転する様子(Credit: ESA)
掲載元のサイト https://sci.esa.int/web/exoplanets/-/60655-detection-methods

https://youtu.be/u8EW4oPst_I

太陽系外惑星の検出方法の一つ。単にマイクロレンズ法と言うことも多い。一般相対性理論では、天体の重力によりその周囲の時空が歪む。背景の天体からの光がその歪んだ時空を通過することにより、光の進む経路が変わる。これを観測者から見ると、いろいろな方向から光が視線に入り込んでくるため、あたかも天体がレンズのような役割を果たしているように観測される。これを重力レンズと呼ぶ。天体が恒星の場合は歪の程度が小さく(マイクロ秒角程度)、背景の天体からの光は空間的に分離できないが、時間変化に伴う光度変化が増光現象として観測される。これを重力マイクロレンズと呼ぶ。恒星が重力マイクロレンズ現象を起こすと、その増光の時間変化を示す光度曲線は時間に対して対称的な形となる。しかし、その恒星が惑星を伴っていると光度曲線が非対称になったり、短時間の小さなピークが現れたりする。これを利用して太陽系外惑星を検出するのが重力マイクロレンズ法である。2004年に最初の成功が報告された。間接法のひとつ。

重力マイクロレンズ現象のコンピュータ・シミュレーション(背景の恒星の光が手前の惑星を持つ恒星により増幅される)クレジット:NASA

https://www.youtube.com/embed/z75aHv9SpVg

テキサス州西部のロック山(2070m)およびフォールカー山頂(2030m)にある天文台。前者には口径2.7 mのハーラン ・J・ スミス望遠鏡(1968年完成当時、口径世界第3位)、口径2.1 mのオットーストルーベ望遠鏡(1939年完成当時、口径世界第2位)などの望遠鏡があり、後者には口径9.2 mのホビー-エバリー望遠鏡(1997年完成当時、口径世界第3位)がある。
ホームページ:http://www.as.utexas.edu/mcdonald/mcdonald.html

バイオシグネチャーを参照。

ドップラー法を参照。