天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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中心力

古典力学における概念で、質点(質量のみを持ち大きさが無視できる仮想の物体)の受ける力が、常に一つの点(原点)を通る向きで、大きさが原点と質点の距離のみによって決まるような力をいう。中心力による運動では、力学的エネルギーと角運動量は一定に保たれる(保存される)。万有引力や電荷の間に働くクーロン力は中心力である。

一様等方な膨張宇宙のモデルの1つ。空間の曲率はゼロで、ユークリッド幾何学が成り立つ。宇宙のエネルギー密度は、非相対論的物質で占められており、その大きさは宇宙膨張が将来収縮に転じるか否かの臨界点である臨界密度 $\rho_{cr}=3H^2/8\pi G$ に等しい。ここで $G$ は万有引力定数である。ただし $H$ハッブルパラメータである。この宇宙モデルでは、宇宙の大きさに比例するスケール因子 $a(t)$ は時刻 $t$ の関数として $a(t)\propto t^{2/3}$ のように膨張し、宇宙年齢はハッブルパラメータの逆数の 2/3 倍に等しい。 なお、アインシュタイン宇宙、ド・ジッター宇宙はいずれもアインシュタイン-ド・ジッター宇宙とは異なる宇宙モデルなので、混同しないように注意が必要である。

重力レンズ現象の強さを表す用語。遠方にある光源天体からの光の軌跡が、その視線上で手前にある別の天体(レンズ天体)の重力によって曲げられるときの、曲率半径をいう。対応する角度をアインシュタイン角度という。光源が点状ではなく広がっているときは、重力レンズによって円環状の像になる場合があり、光源と重力レンズ天体が正確に視線上にある場合は、重力レンズによる像は円環となる。これはアインシュタインリングと呼ばれる。アインシュタイン半径はこのリングの半径に対応する。一般に、重力レンズを起こす手前の天体の質量が大きいほど、アインシュタイン半径は大きくなり、光の曲がりが大きくなる。

国際天文学連合を参照。

International Celestial Reference Frame の略称。国際天文準拠系(ICRS)を参照。

VLBI Space Observatory Programme (VLBI宇宙天文台計画)の略で、宇宙科学研究所が1997年に打ち上げたスペースVLBIのための人工衛星「はるか」が構成するVLBIおよびその観測計画のこと。「ぶいそっぷ」と発音されることもある。
はるか衛星も参照。

星団星雲銀河など、見かけの様子が単独の恒星とは異なる天体を集め、その天球上での位置を示したカタログ。NGCカタログを補足するものとしてドライヤー(John Dreyer; ドレイヤーとも表記)が発表したインデックスカタログ(Index Catalogue)の略称。略称の方が広く一般的に使われている。厳密には1895年発表のカタログと1908年発表のカタログの2つがあるが、通常は両者をまとめて1つのICカタログと呼ぶ。全部で5386個の天体が掲載されており、1860年分点での赤経順に番号が付されている。これに掲載された天体は、ICに掲載番号を付し、IC 10などの名称で呼ばれる。

IC天体に関する現在の参照情報については「NGCカタログ」の項に記述した。2009年に沼澤茂美、脇屋奈々代によりNGC/IC天体の写真集「NGC・IC天体写真総カタログ」が出版されている。

極運動の代表的な成分。地球のような回転楕円体の理論的な自由回転運動は約300日周期のオイラー運動であるが、地球は完全な剛体でないため、実際に観測されるのは430日程度の周期(チャンドラー周期)のチャンドラー揺動となる。1891年にこの現象を発見したチャンドラー(S.C. Chandler)の名前に由来している。
なお、周期運動といっても不規則であり、精密に予測することは困難である。また、チャンドラー揺動ではエネルギーが散逸するにもかかわらず、長期間揺動が持続する理由は長い間謎であった。最近では、地球全体として角運動量保存則が成立することを利用して大気や海洋とマントルの間の角運動量の交換量を見積もった結果、これらが影響を与えていることが明らかになりつつある。

まったく電離していない電気的に中性の鉄原子1個には26個の電子があるが、そのうち、最も原子核に近く最もエネルギー準位が低い電子軌道をK殻、次に近い2番目にエネルギー準位が低い電子軌道をL殻と呼ぶ。K殻には電子が2個まで、L殻には8個まで存在できる。K殻に空席ができ、L殻にある電子がK殻に遷移すると輝線が生じる。これを鉄のKα(アルファ)線と呼ぶ。L殻より高エネルギーの準位のほとんどが実際に電子で占められているときと、そこにほとんど電子がない場合とでは鉄のKα線のエネルギーが若干変わる。

前者を中性鉄Kα線と呼び、その波長は0.194 nm、光子のエネルギーでは6.4 keV である。これに対して、後者を高階電離鉄Kα線と呼び、たとえば24階電離(残った電子が2個しかないので、ヘリウム状鉄ともいう)のKα線のエネルギーは6.7 keVと、中性の場合より高めになる。このようにX線での輝線のエネルギーによって区別するため、中性とはいうものの実際には24階までは電離が進んでいないという意味である。K殻電離も参照。

波長12, 25, 60, 100 μm の4つの赤外線バンドで全天を高感度で探査(サーベイ)することを主な目的とした赤外線衛星。アメリカ、オランダ、イギリスの共同で開発され、1983年1月25日に高度約900 kmの太陽同期軌道に打ち上げられた。口径60cmの望遠鏡全体が液体ヘリウム冷却の容器に収められていたが、1983年11月25日に液体ヘリウムが枯渇して約10か月間の観測を終了した。全天の約96%を探査して宇宙の赤外線地図を作成し、検出された約25万の点源状の赤外線源がIRAS点源カタログ(Point Source Catalog)として公開された。
微光天体カタログ(Faint Source Catalog)や小構造天体カタログ(Small-Scale Structure Catalog)もある。サーベイ検出器に加えて低分散分光器(LRS; Low Resolution Spectrometer)を持ち、波長8-22 μm のスペクトルカタログ(LRS Catalog: 約5400天体)も公開した。以降の赤外線天文学に大きな影響を与えた。
ホームページ:http://lambda.gsfc.nasa.gov/product/iras/

初めての天文台型赤外線衛星。波長2.5-240μm の近赤外線から遠赤外線波長で個別の天体の撮像観測分光観測を行う。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が中心となって開発し、1995年11月17日に高度1000-70500 kmの長楕円軌道に打ち上げられた。軌道周期は約24時間と長く、連続的な観測が可能である。主鏡口径は60 cm。撮像カメラ(ISOCAM: 観測波長2.5-17 μm)、測光装置(ISOPHOT: 2.5-240 μm)、短波長分光器(SWS: 2.4-45μm)、長波長分光器(LWS: 45-196.8 μm)の4台の観測装置 を搭載していた。これら4台の観測装置を用いて、提案された個別 の天文観測を実行する天文衛星である。この点が、同じ望遠鏡口径の前世代機であるIRAS衛星サーベイ観測により宇宙地図 と天体カタログを作成したのとは大きく異なる。1998年5月に冷媒である液体ヘリウムが枯渇し運用を終了した。
ホームページ:https://www.cosmos.esa.int/web/iso/home

国際紫外線天文衛星(IUE)を参照。

グリニッジ王立天文台を参照。

エジンバラ王立天文台を参照。

ロバートソン-ウォーカー計量を参照。

開口合成電波干渉計で観測する際に、画像の空間フーリエ成分をどこまで測定するかを示すための仮想的な面のこと。干渉計を構成するアンテナのうち、ビジビリティを測定する組に対応する基線をベクトルとして、対象天体からの視線と垂直な面に投影したもの。赤経方向と平行な東西成分を u 成分、赤緯方向と平行な南北成分を v 成分として扱うので、(u,v) 面または (u,v) 平面と呼ぶ。長さの単位には観測波長を用いる。ビジビリティは基線に1つにつき1つずつ得られるので、(u,v) 面上の1点ごとにビジビリティの測定値が得られることになる。複素ビジビリティの位相は、理想的には2つの受信信号の幾何学的遅延で生じるので、(u,v) 面上での測定点の分布は、取得する空間周波数成分の分布を表すことになる。

木村栄によって極運動を説明する式に加えられた項の名前。極運動により自転軸が地球の形状に対して運動すると、観測地点の緯度が変化する。この緯度変動量 $\Delta\varphi$ は経度 $\lambda$ と極運動の大きさ $(x, y)$ から、

$$\Delta\varphi=x\cos\lambda+y\sin\lambda$$

で表せるはずであり、逆に緯度変化から極運動の大きさを決めることができる。
水沢緯度観測所(現在の国立天文台水沢VLBI観測所)はこの緯度変化を観測する国際緯度観測事業のため1899年(明治32年)設立された。当初は他に比べて日本の観測結果が悪いと批判されたが、初代所長であった木村栄は観測結果を吟味、観測には問題はなく、むしろ

$$\Delta\varphi=x\cos\lambda+y\sin\lambda+z$$

のような、経度によらない、1年周期で変化する未知の項($z$ 項)が必要であるとの結論に達した。$z$ 項を導入して再度解析した結果、むしろ日本の観測のほうがよいことが判明、世界的にも高い評価を受けた。

$z$ 項の正体はしばらくの間謎であったが、おなじく水沢緯度観測所の若生康二郎により、当時の章動理論の不備、つまり地球が剛体ではなく流体核を持つことによる誤差であることが明らかになっている。

ハーバード分類で化学組成の違いに対応する系列の低温度星。N型と共にC型(炭素型)と呼ばれる。CとOの原子数の比C/Oは太陽では∼0.5であるが、C型はC/O>1であるような低温の星である。漸近巨星分枝進化でヘリウム殻フラッシュを繰り返し、その都度、表面対流層が内部に侵入して炭素を表面まで運び上げたと考えられる。C2、CN、CH分子による吸収が強く、特にこれらの炭素化合物は短波長側で光を良く吸収するために、C型星は非常に赤くなる。R型星は表面温度がN型星よりも高い。1868年にセッキ(A. Secchi)により発見された。

スペクトル型(星の)を参照。

原子から構成される通常の恒星と異なり、中性子を主成分とする天体。

中性子星は、約 8$M_{\odot}$ 以上($M_{\odot}$太陽質量)の重い恒星が進化の最終段階で起こす超新星爆発の残骸として中心にできる高密度星縮退星と考えられている。収縮しようとする自己重力に抗して、恒星が中心部の核融合反応から生じる圧力で支えられているのに対し、中性子星は核力で支えられており、3×1017 kg m-3 程度の、原子核と同程度の密度を持ち、1.4 $M_{\odot}$ 程度の質量で12 km程度の半径をもつ。中性子星は内部のコアの周りをクラストと呼ばれる領域で覆われた構造をしている (中性子星の断面模式図を参照)。コア最深部の組成はまだよくわかっていない。

中性子星は、電波パルサー(パルサーを参照)、マグネターX線パルサーなどとして観測されている。中性子星連星二重中性子星連星X線新星X線バーストX線連星系ガンマ線バーストキロノバも参照。

点像分布関数を参照。