COBE衛星に取り付けられた装置の一つで、Differential Microwave Radiometerの頭文字から名付けられた。宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の強度分布を31.5GHz、53GHz、90GHzの3つの周波数帯で測定することによって、CMBとは異なる天の川銀河(銀河系)からの放射を分離してCMBのみを抽出可能にした。そして、角度にして60度離れた空の2点の電波強度分布の差、すなわち温度の差を測定することによって、電波強度の絶対値を求めるよりもはるかに高い10万分の1Kの精度で温度の相対的な分布を得た。その結果、全天に渡るCMBの温度分布のゆらぎの地図を描くことに初めて成功した。
連続的に変化する信号を離散的に標本抽出する(サンプリングする)場合、抽出頻度を νmax とした標本からは、元の信号のうち [0, νmax] の周波数範囲だけは完全に再現可能であるという定理。ナイキスト-シャノンの定理ともいう。
アメリカの宇宙望遠鏡研究所(STScI)の写真乾板測定機を用いて、いくつかの広天域サーベイの写真乾板をデジタル化した全天のデジタルデータベースの名称。1994年にPOSS-I(パロマー天文台スカイサーベイを参照)とESO/SERC南天サーベイの全乾板をデジタル化した最初の版が完成した。その後、POSS-IIおよび天の川帯のサーベイなどいくつかのサーベイのデータが加えられている。DSSから任意の天球座標(天体)の周辺の画像を切り出せるシステムは宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)で運用されている。国立天文台では独自の機能を加えたシステムを運用している。
国立天文台のシステム:https://dss.nao.ac.jp/
宇宙望遠鏡科学研究所のシステム:http://archive.stsci.edu/cgi-bin/dss_form
デジタル天体画像の主なものは
http://tdc-www.harvard.edu/astro.image.html
にまとめられている。
ヨーロッパ南天天文台を参照。
赤外線の中で、中間波長(3-40 μm)のものの名称。赤外線および電磁波を参照。
(u, v)面のこと。
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が1983年3月に打ち上げた長楕円軌道のX線天文衛星。角分解能5秒角のX線望遠鏡の焦点面にマイクロチャンネルアレイ、位置検出型比例計数管と透過型回折格子を配した撮像望遠鏡2台と、比例計数管、および蛍光比例計数管を搭載し、 全体として 0.05-50 keVの観測帯域をもっていた。
低質量X線連星系やX線パルサーからの準周期的振動の発見が特記される成果である。1986年4月に運用を停止した。
ホームページ:
https://www.cosmos.esa.int/web/exosat
https://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/exosat/exosat.html
高速フーリエ変換を参照。
天体データ形式の一種。天体画像データを主として、その他の多くの天文データ(分光データ、高エネルギーイベントデータ、カタログ表データなど)を格納するために現在最も一般的に用いられる形式。FITSはflexible image transport systemの頭文字からきた名称。
もともとは電波観測と光学観測のデータを交換するために考えられた形式である。最初のFITS形式が策定された当時、主なデータ格納運搬媒体は磁気テープであった。磁気テープやCDなどの記録媒体は、ある特定の大きさの物理ブロックごとにデータを読み書きする。当時はそうした媒体へのデータの入出力性能も低く、計算機ごとに異なったワード長(計算機が一度に扱えるデータの長さ)単位でしか読み書きができなかった。そこで、FITS形式の論理レコード長は、策定当時標準的であった磁気テープのブロックサイズより小さく、当時のすべての計算機のワード長で割り切れるように決められた。こうして、その当時の計算機のワード長の最小公倍数23040ビット=2880バイトがFITS形式の1論理レコード長となった。
現在では、磁気テープ以外のさまざまな媒体(ネットワークによる電子的転送も含む)が一般的となり、計算機の記憶容量や入出力性能が向上して、2880バイトの論理レコード長はもはや重要な意義を持たなくなっている。しかし、互換性維持のためにこの規則は維持されている。
FITS形式のデータは、ASCII形式で書かれたヘッダと、バイナリ形式もしくはASCII形式で格納されたデータ配列とからなる。ヘッダは一行80文字(80バイト)の行の集まりからなり、一行は固定形式で8文字(8バイト)のキーワードと、その値(11文字目から始める。自由長)を9文字目に置くイコール記号(=)でつないで書く。ヘッダにはデータ配列に格納されたデータを解読するために必要なさまざまな情報(データの並び方、物理量への変換係数、座標変換係数、データ取得時の情報、など)が書かれている。詳細は、日本FITS委員会ホームページ(http://hasc.hiroshima-u.ac.jp/fits_core/)を参照。画像表示ソフトやデータ解析ソフトは、ヘッダに書かれた情報を手掛かりにデータの処理をする。
FITS形式の規約の管理は、国際天文学連合(IAU)の第5委員会(天文データを扱う委員会)の下のFITSワーキンググループが行っている。
FITSサポートオフィス(NASA)ホームページ:http://fits.gsfc.nasa.gov/
すばる望遠鏡のカセグレン焦点に搭載された微光天体分光撮像装置。装置内の平行光束中に挿入する光学素子として、フィルター、グリズム、偏光子などを選ぶことにより、波長域370-1000 nmでの撮像、分光、偏光分光などさまざまな観測が可能。撮像観測では視野直径6分角を0.1秒角/画素で撮影、分光観測では50個あまりの天体のスペクトルを、それらの天体の位置に合わせてスリットを切ったマスクを事前に用意することで同時に観測できる。遠方銀河の観測などで活躍している。偏光分光観測モードは極超新星とガンマ線バーストの研究などでユニークな成果を挙げた。
ホームページ:
https://www.naoj.org/Introduction/instrument/j_FOCAS.html
相関器を参照。
ガイア衛星を参照。
2つの確率変数 $x, y$ のそれぞれの平均値を $x_0, y_0$ とすると、2変数の平均値からのずれの積の期待値を、それぞれの変数の分散で除したもの、すなわち、
$$r=\frac{E((x-x_0)(y-y_0))}{\sqrt{E((x-x_0)^2) E((y-y_0)^2)}}$$
のことを相関係数という。ここで、関数 $E(z)$ は変数 $z$ の期待値。2変数が完全に相関している場合、両者の増減が一致していれば相関係数は+1に、増減が逆向きならば-1になり、無相関の場合には0になる。ただし、特殊な分布をしている場合にはなんらかの相関がある場合でも相関係数が0となることがある。
二つの変数の間に相関があってもそれは因果関係があることを直接意味するものではないことに注意が必要である。
アメリカ航空宇宙局(NASA)が、カリフォルニア工科大学、カリフォルニア州立大学、ジョンズホプキンス大学、韓国の延世大学などと共同して、2003年4月28日に打ち上げた紫外線天文衛星。紫外線の2つの波長域(波長135-180 nmと180-280 nm)の検出器を搭載しており、2007年までの予定運用期間中に紫外線による全天観測を行い、銀河や天の川銀河(銀河系)内の星生成領域など貴重なデータを大量に取得した。
2008年から延長運用モードに入っていたが、2010年には極紫外線検出器が寿命を終えた。2013年に運用が終了した。GALEX衛星によるデータは一般に公開されている。
ホームページ:
https://science.nasa.gov/mission/galex/
http://www.galex.caltech.edu/
東京大学と国立天文台などで開発されてきた重力多体シミュレーション専用計算機。
基本的に、粒子間のニュートン重力相互作用の計算を専用ハードウェアで行うことで、汎用計算機に比べて安価で高性能を実現する。1989 年に完成した GRAPE-1 に始まり、2002 年に完成した GRAPE-6、さらに、プログラム可能なプロセッサに変更し、2008年に完成した GRAPE-DR と開発が続いている。
ツリー法などの計算量が少ない近似アルゴリズムと組み合わせることも可能である。名前はgravity pipeに由来する。
ゼーマン効果のスペクトル解析で利用される1程度の大きさの係数。ランデのg因子とも呼ばれる。
弱い磁場中におかれた原子のエネルギー準位は、磁場によりエネルギーの変化⊿E=g μB H Mを生じる。
ここでμBはボーア磁子、Hは与えた磁場強度、Mは全角運動量の磁場方向の成分であり、係数gがランデのg因子である。具体的な値は量子力学を用いて計算可能である。
銀河の質量という場合には、ダークマターハローを含めた全質量と、銀河に含まれる全ての星(と星間物質)のみの質量とを区別する必要がある。後者を星質量という。星質量は一般に観測される銀河のスペクトルを最も良く再現する銀河進化モデルから求められる。厳密に言えば銀河進化モデルは星間物質の質量を精密に反映していないが、それは星の質量に比べて無視できると仮定して星質量を求める。
黄道を含む星座のうち、へびつかい座を除く12の星座。プトレマイオス(Ptolemaeus)に由来する。おひつじ座、おうし座、ふたご座、かに座、しし座、おとめ座、てんびん座、さそり座、いて座、やぎ座、みずがめ座、うお座の12星座である。これらの星座はほぼ黄道十二宮に対応しているが、両者の境界は厳密には一致していない。
物質の流入や流出がない閉じた系の中で星間ガスから星形成が起こった場合を仮定し、金属量の分布を理論的に予想した結果に比べて、太陽近傍に代表される天の川銀河の円盤部では、金属量が少ない恒星が僅かしか観測されないという問題のこと。
恒星は内部の核反応の結果、誕生から時間が経つにつれ全体として金属量が増すが、主系列星の時代には中心核からの物質は表面までは運ばれないため、分光観測で得られる表面の金属量は、その星の誕生時の星間ガスの金属量だけを反映していると考えてよい。G型矮星(スペクトル型がG型の主系列星)は寿命が長いため、その金属量は過去の星間ガスの金属量を反映していると考えられる。したがって、金属量が少ないG型矮星が予想より少ないということは、天の川銀河の円盤部では過去に金属量が予想より多かったことになる。逆にいえば、近年になってから金属量が少ない星間ガスが増えていたと考えてもよく、他の証拠も加えて、現在では、G型矮星が生成された後にも金属量が少ないガスが銀河円盤部に継続的に供給されているためであると解釈されるようになった。銀河考古学も参照。
中性水素原子ガスのこと。天文学では元素記号Xの中性ガスには添え字Ⅰを付けてXⅠと記し、1階電離、2階電離したガスに対してはそれぞれ、XⅡ、XⅢというようにして表す慣用がある。したがって、 HⅠガスは中性水素原子のガスを指す。電離水素(HⅡ)ガス、電離水素領域も参照。
