金属量を参照。
薄明を参照。
星団のように多数の恒星が同時に生まれた集団で、誕生後のある特定の時刻に、さまざまな質量の恒星がHR図上に存在する位置をつないだ線。質量の異なる星の進化の違いを反映する。等時曲線ともいう。誕生当初は零歳主系列に並んでいた星も、やがて質量の大きな星から次第に赤色巨星に進化し、HR図上で右側に移動する(主系列を離れる点を転向点と呼ぶ)。時間がたつとともに質量が小さな星が主系列から離れるので、転向点は主系列の暗い方に移動して行く。このことを利用して、転向点の星の質量から星々の誕生時期(星団の年齢)を推定できる。等時線は星の金属量にも依存する。
電磁波の波面の乱れのため、結像にぼけが生じること。単色の光の波面収差分布はゼルニケ多項式展開で表すことができるが、3次までの項は5つのザイデル収差で記述できる。この他に媒質の色分散に起因する色収差がある。光学系の設計で用いる光線追跡の手法では像面での縦収差や横収差で表すこともある。
光電離のこと。電離を参照。
主にザイデル収差の5つの係数を指す。
電離平衡を仮定した場合に、ある電離段階にある粒子の割合を表す式。電離段階$\alpha$にある粒子の密度を$N^\alpha$、分配関数を$U^\alpha$、イオン化エネルギーを$I^\alpha$とすると、以下の関係になる。
$$\frac{N^{\alpha + 1}}{N^\alpha}\cdot N_{\rm e} = \frac{U^{\alpha + 1}}{U^\alpha} C^{-1} T^{3/2} \times \exp \left(-\frac{I^\alpha}{k_{\rm B}T}\right) $$
ここでTは温度、Ne は電子密度、kB はボルツマン定数、C は定数(サハ-ボルツマンの式を参照)である。
ガス星雲を参照。
電離を参照。「ひかりでんり」と発音することもある。
運動星団と呼ばれる生まれたばかりの散開星団の距離を固有運動と接線速度から求める方法。運動星団は空間内をひとかたまりで運動している。この星団の星々の固有運動の軌跡は天球上で1点に収束するように見える。この点を収束点という。収束点の位置がわかると、個々の星のスペクトルから求められる視線速度 vr から、視線に垂直な方向の接線速度 vt が vt = vr tanθ として求まる。ここで θ は収束点とその星のなす角度である(図参照)。接線速度と固有運動を組み合わせればその星までの距離が求まり、多数の星について平均すれば、星団までの距離が精度良く求まる。
重力収縮により密度が上昇したとき、収縮を妨げる圧力などの力も上昇するが、自己重力がそれを上回って増大するため収縮が加速する状況。この逃走的収縮は、分子雲コアで中心密度が105 cm-3 を超すころにはじまり、密度が1011 cm-3 近くに達するまで継続すると考えられている。この収縮により形成されるガスの塊を第一のコアと呼ぶ。この収縮は自由落下時間程度で起こり、収縮速度は音速近くに達する。成長した第一のコアの中心部で水素分子ガスが解離および電離することにより起こる第二収縮や、進化した大質量星の中心にできる鉄コアが、重力崩壊型超新星爆発を起こす直前に起こす爆縮も、流体力学的には極めて類似した逃走的収縮現象である。
分子やイオン状態ではなく、原子単体で気相中に存在しているガスのこと。HⅠガス、中性水素ガス雲も参照。
概ね太陽質量の1万倍程度以上の質量を持つ分子雲のことを指す。英語名の頭文字を使ってGMCと表記することがある。
分子雲中の一酸化炭素(CO)が出す電波輝線、CO(J=1-0)輝線、で観測されることが多い。多くの巨大分子雲では大質量星を伴う星団が形成されている。最も近傍の巨大分子雲はオリオンA分子雲である。
アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星着陸探査機。火星表面の地質を観察して岩石を分析した2機のマーズローバの1つ。2003年6月10日に打ち上げられ、2004年1月3日に、火星赤道域のグセフクレーターに着陸した。着陸船そのものが高さ1.5m、幅2mのローバ(移動探査車)である。太陽電池パネルの下には6個の車輪があり独立に動く。太陽電池で駆動するが、電気回路部は放射性熱源で保温されているため長寿命である。パネルの上部に直立するマストの先端にはステレオカメラと、熱赤外分光計が搭載されている。ローバ前面の下部には、折りたたみ式のアームがあり、先端には顕微鏡カメラ、アルファX線分光計、メスバウアー分光計、岩石研磨装置が搭載されている。グセフクレーターは、約40億年前に活動していたと考えられるマアディム谷が流れ込んでいる、100kmサイズの湖の跡であると考えられている。当初は湖沼堆積物を発見することはできなかったが、その後にコロンビアヒルと命名された丘陵地域を探索して、堆積物や火山活動の証拠を発見している。2009年5月に車輪が砂地にはまり動くことができなくなった。その後静止状態で観測を続けていたが、2011年5月に運用が終了した。
地平座標系を参照。
太陽系を取り巻いて存在している半径100パーセク(100 pc=326光年)程度の大きさの高温低密度領域のこと。単に局所バブル(Local Bubble: LB)とも呼ばれる。軟X線の背景放射の観測からこの高温ガスの存在がわかった。その後、星間物質のあるところに普遍的に存在する中性ナトリウム原子の吸収線強度から、低温高密度の星間ガスの探査も行われ、局所高温バブルの周辺構造も詳しく調べられた。局所高温バブルの外側には高密度の中性水素原子ガスが壁状に分布しており、その壁が所々高温ガスで壊されトンネルとなって隣の高温バブルにつながっている。高温ガスの分布は、銀河面方向の最も狭いところでも半径50-100 pc程度はあり、広いところは半径200 pcにも及ぶ。銀河面に垂直な方向には煙突状に広がっている。この局所高温バブルは複数の超新星爆発により形成されたと考えられるため、スーパーバブルの一つの例だと思われている。
われわれの天の川銀河(銀河系)の中で、太陽系の現在の位置にある大きさ約6パーセク(6 pc=20光年)の星間雲。太陽系はこの星間雲の中を通過中であると考えられている。星間雲に対する太陽系の相対運動の向きはほぼ銀河中心を向いている。
原子核に束縛されていない、すなわち原子内部のエネルギー準位に拘束されていない、空間を自由に運動している電子。金属内で金属結合を担い、電気伝導の役割を果たす伝導電子も自由電子と呼ばれる。
オットー・ウイルへルム・シュトルーベ(Otto Wilhelm Struve;1819-1905)は、ドイツ系ロシア人の天文学者。しばしばストルーベまたはシュトルーフェとも記される。フリードリッヒ・フォン・シュトルーベの三男で、1834年ドルパト大学(現エストニア、タルトゥ大学)に入学、ドルパト天文台で天文学者だった父の仕事を手伝い、卒業後プルコボ天文台の研究者として就任し、父の二重星の観測や測地学的測量などに参画し、シュトルーベ測地弧として知られる子午線弧長の三角測量のための三角点群(2005年に世界遺産登録)を整備した。太陽系天体の観測や恒星視差の測定、歳差定数の改訂などの観測的研究も行っており、1862年から父の後任として同天文台の台長も努めた。
天文学における国際協力に意を用い、1872年のパリのメートル法制定会議や1887年の国際写真掃天会議の議長を歴任した。1850年にはロンドン王立天文学会のゴールドメダルを受賞している。
強い磁場を持ち回転する中性子星。回転軸に対して磁軸が傾いているため、中性子星の自転に同期して周期的な電磁放射が観測される(灯台モデル, 模式図を参照)。放射は電波からガンマ線に至る幅広い波長帯域で観測されている。
単独の中性子星はいわば強力な発電機であり、その強磁場(典型値は約108テスラ(=1012 ガウス))と高速回転 (周期の典型値 0.1-10 秒程度)により、非常に大きな起電力が誘起される (単極誘導)。この強い起電力によりパルサーの周囲のプラズマが加速され、電磁カスケードを起こすことにより磁気圏を形成する。磁気圏のプラズマの一部は、光速に近い速度のパルサー風として放出される。粒子加速や電磁カスケードの過程は電磁波の放射を伴い、自転と同期したパルスとして観測される。このような放射を示す中性子星はエネルギー源が自転にあるため、回転駆動型パルサーと呼ばれる。特に電波でよく見つかることから、電波パルサーとも呼ばれる。回転周期が0.1秒程度の短い天体は、X線やガンマ線などの高エネルギー帯域のパルス放射も観測されることがある。電波パルサーにはミリ秒パルサーも含まれる。
一方で連星系をなして伴星から質量降着がある中性子星は、降着する物質の重力エネルギーをエネルギー源として輝く(パルサー連星)。特に磁場が強い場合には磁極へ質量降着することでパルス放射が観測され、降着駆動型パルサーと呼ばれる。X線パルサーの一部がこれに対応する。また、磁場が強く、その磁場をエネルギー源とするパルサーは、磁気駆動型パルサーもしくはマグネターと呼ばれる。パルサー星雲も参照。
