天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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ペイルブルードット

1990年2月14日に約60億キロメートルのかなたからボイジャー探査機(ボイジャー1号)によって撮影された地球の写真。当初計画にはなかったが、カール・セーガン(Carl Sagan)の強い希望でこの撮影が実現した。青、緑、紫のフィルターによる3枚の画像(露光時間はそれぞれ、0.72、 0.48、0.72 秒)から図に示す写真が合成された。この画像では地球のサイズは1画素にも満たない。地球が「淡く青い点(a pale blue dot)」であったのでこの写真がペイルブルードットと呼ばれるようになった。
セーガンは1994年の著書「Pale Blue Dot」の中で次のように述べている。
『天文学を学ぶことで謙虚で高い人間性が育つと言われている。我々の小さな世界を遠くから見たこの画像以上に、人間のうぬぼれた自尊心の愚かさを示すものはおそらくないであろう。この画像は、他者をより親切に扱い、我々が知る唯一の故郷である淡く青い点を保護し慈しむ責任が我々にあることを強く訴えているように私には思われる。』
最初の画像が撮影されて30周年記念となる2020年に、アメリカ航空宇宙局(NASA)は最新の画像処理技術を使って、もとの画像からより高品質の「ペイルブルードット」を作成し公開した。
ブルーマーブルも参照。
 

JAXAの月探査機「かぐや」HDTVによる満地球の出(2008年9月30日)

https://www.youtube.com/embed/kcpjWCIQHEE

天体から来る光の偏光(電波では偏波という)を検出する観測。偏光・偏波からそこで起きている物理現象を調べることができる。天体で偏光を引き起こす大きな原因の一つは磁場である。偏光観測から分子雲中の星間磁場の向きを推定することは広く行われている。ストークスパラメータの4つの成分を全て観測すれば、そこから偏光・偏波に影響する物理現象を詳しく推定することができる。

コンピュータによる数値シミュレーションによって天文学のさまざまな問題を扱う分野。宇宙で起きる天体現象のほとんどは実験によって直接実験室で確かめることができない。そこで、コンピュータの中に天体や宇宙を記述するモデルを作り、そのモデルの振る舞いを観測データと比較することが現象の理解にとって極めて重要である。
近年スーパーコンピュータが飛躍的に進歩したので、従来のコンピュータでは難しかった複雑な現象の数値シミュレーションも実行できるようになった。このため、シミュレーション天文学は観測天文学、理論天文学と並ぶ第三の天文学と位置付けられ、スーパーコンピュータは時に「理論の望遠鏡」と呼ばれることがある。
数値シミュレーションの対象としては、例えば宇宙の大規模構造の形成や銀河の衝突といった多体の力学問題、物質の運動と電磁波の放射が複雑に絡み合う天体物理学の問題、あるいはビッグバンや宇宙の進化などの宇宙論的問題、ブラックホール重力波の発生など一般相対性理論の問題などがある。

装置や機器がどれくらい短い時間間隔で信号を測定できるかを示す能力。たとえば、1秒間に100回あるいは1万回測定できる場合の時間分解能はそれぞれ、0.01秒(10ミリ秒)あるいは0.0001秒(0.1ミリ秒、100マイクロ秒)となる。分解能も参照。

中心天体への降着に伴う流れのこと。

欧州原子核研究機構のこと。

中心にある重い天体(原始星恒星白色矮星中性子星ブラックホールなど)の重力に引き寄せられて周囲から物質(主にガスやダスト)が落下してくること。質量降着(mass accretion)という場合もある。
落下する物質は中心天体の周囲を公転しながら円盤状の構造(降着円盤)を作る。恒星の周りの降着円盤は一般に星周円盤と呼ばれるが、星形成に伴ってできる星周円盤は原始惑星系円盤とも呼ばれる。円盤内ではガスの粘性により角運動量が内部から外部に輸送され、次第に中心部からガスが中心天体に落ち込む。降着する物質の重力エネルギーの解放や粘性摩擦などにより伴い円盤は高温になって電磁波を放射する。原始惑星系円盤や若い星の回りの星周円盤からは主に赤外線が、中性子星やブラックホールの周りの降着円盤からは主にX線が放射される。

1954年にヨーロッパの11ヵ国により、「Science for Peace(平和のための科学)」を掲げ設立された素粒子・原子核分野の世界最大規模の国際研究所。ヨーロッパ合同原子核研究機構などとも呼ばれるが、一般には、機構の開設を準備した組織のフランス語名称 Conseil Européen pour la Recherche Nucléaireの頭文字 をとったCERN(セルン)として広く知られている。
2021年現在では23ヵ国が加盟している。日本はオブザーバー国の一つである。スイスのジュネーブ郊外でフランスとの国境地帯にまたがって位置する。地下には全周 27 km の円形加速器である大型ハドロン衝突型加速器(LHC)が、スイス-フランス国境を横断して設置されている。LHCで2012年にヒッグス粒子が発見された。

レンズ状銀河のこと。S0は「エスゼロ」と発音する。銀河も参照。

既知の物理法則を破るような風変わりな性質を持つ仮説上の粒子や、既知の物理法則の範囲内にあるが例えば3つのクォークとその他の基本粒子からなる仮想上の複合粒子などを指す。クォークグルーオンプラズマのような、存在を確認されていない物質の状態を指すこともある。

ビッグバン宇宙論に基づいて宇宙の進化を記述する宇宙モデルのうち、 ダークエネルギーと冷たいダークマターを含む加速膨張する宇宙モデル。ダークエネルギーは宇宙項フリードマン方程式でΛで表される)に対応し、冷たいダークマターは英語でCold Dark MatterでCDMと略記されることから、ΛCDMあるいはΛ-CDMと表記される。CDMモデルに宇宙項を加えたモデルとも言える。

空間的には平坦で(曲率=0、密度は臨界密度に等しい)、現在は加速膨張している。現在のさまざまな観測事実ともっとも整合性がよく、現時点での標準宇宙モデルである。プランク衛星による宇宙マイクロ波背景放射(温度2.725 K)の観測、Ia型超新星セファイドなどを用いた宇宙の距離はしごによるハッブル定数の決定、銀河団超銀河団ボイドなどが織りなす宇宙の大規模構造などの観測から決められたΛCDMモデルのパラメータは以下のようになっている。
・宇宙の構成要素
$\hspace{0.5cm}$- ダークエネルギー:69%
$\hspace{0.5cm}$- ダークマター:26%
$\hspace{0.5cm}$- バリオン(普通の物質):5%
宇宙年齢 138億年
・ハッブル定数 約70 km/s/Mpc
宇宙の晴れ上がり ビッグバンから約38万年後
・加速膨張への転換期 今から約60億年前

XRISM衛星のこと。

2016年に姿勢制御系の不具合のため短期間で運用終了したX線天文衛星「ひとみ衛星(Astro-H)」の後継機。宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙科学研究所 (ISAS) がアメリカ航空宇宙局 (NASA)、ヨーロッパ宇宙機関 (ESA) との国際協力で開発した。2023年9月7日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット47号機により打ち上げられ予定の軌道(高度約550 kmの地球周回低軌道)に投入された(同機には日本初の月面着陸を目指す小型実証機「SLIM」も搭載されていた)。

XRISMは2台の軟X線反射鏡を有し、それぞれに、高いエネルギー分解能を持つX線マイクロカロリメータ分光撮像器(Resolve; エネルギー範囲 0.3-12 keV、視野2.9分角)と広い波長域で広視野画像を撮るX線CCDカメラ(Xtend; 0.4-12 keV、30分角)が取り付けられている。宇宙の高温ガスであるプラズマを観測して、それらが作る宇宙の大規模構造の成り立ちや、天体間を行き交う元素とエネルギーの流れを明らかにすることを目標としている。

2024年1月にファーストライトの結果を公表した。冷却剤の液体ヘリウムが蒸発する3年間が設計寿命だが、その後も機械式冷凍機により観測を継続する予定である。
ホームページ https://xrism.isas.jaxa.jp/

WISE衛星のこと。

アメリカ航空宇宙局(NASA)が開発した赤外線天文衛星で2009年12月14日に打ち上げられた。広視野赤外線探査衛星ともいう。口径40 cmの赤外線望遠鏡を備え、4つのバンド(中心波長 3.4, 4.6, 12, 22 μm)で10ヶ月間全天を撮像した。IRAS衛星COBE衛星あかり衛星など以前の同様の赤外線サーベイ観測を行った衛星より1000倍以上高い感度を有していた。
2011年2月17日に運用は終了し、全天の画像と検出天体のカタログは2012年に公開された。カタログには小惑星などの太陽系天体、褐色矮星など銀河系内の低温度天体、遠方宇宙の超高光度赤外線銀河など多数が含まれている。
NASAは地球接近天体を観測するために2013年10月に衛星の運用を再開し、さらに2021年6月、NEOWISE (Near-Earth Object Wide-field Infrared Survey Explorer)として、2023年6月まで運用すると発表した。
NASAのホームページ
https://www.nasa.gov/mission_pages/neowise/main/index.html
https://solarsystem.nasa.gov/missions/wise-neowise/in-depth/

ngVLAのこと。

 

合計263台のパラボラアンテナを北米全域に分散させて設置し、最大で約9000キロメートルの口径の電波望遠鏡とおなじ分解能を実現しようという次世代の大型電波干渉計計画。
観測周波数帯域は、1平方キロメートル電波干渉計(SKA)とアルマ望遠鏡の観測帯域の間を埋める1.2-116 GHz(波長21 cm-2.6 mm)である。ジャンスキーVLA(VLAを参照)とアルマ望遠鏡より10倍感度が高い。2024年頃に建設開始で、2030年代中盤には本格運用を予定している。
ホームページ https://ngvla.nrao.edu/
国立天文台のngVLAのホームページ https://ngvla.nao.ac.jp/about/


ngVLAの紹介動画

国際天文学連合(IAU)の(太陽系の)「惑星」であるための3つの条件(惑星の項にある1, 2, 3を参照)のうち、質量に関する条件(2)のみを満たす天体。すなわち、十分大きな質量を持つために自己重力が固体に働く種々の力よりも勝る結果、重力平衡形状(ほぼ球状)を有するが、中心部で水素や重水素、リチウムなどの熱核融合反応が起きるほどの質量を持たない天体。
惑星はもちろんこれに該当するが、この用語は、惑星と同程度の質量を持ちながら、恒星の周りをまわる通常の惑星と異なり、孤立して存在する天体(浮遊惑星とも呼ばれる)が様々な探査観測から発見されてきたために、それらを主に表すようになっている。太陽系外惑星候補のうち、惑星と褐色矮星の区別が難しい天体の呼称としても用いられる。
また、太陽系内の天体においては、惑星、冥王星型天体準惑星ケレス、巨大な衛星などが惑星質量天体に該当する。

分割鏡(7枚の8.4 m鏡)を持つ超大口径の分割鏡望遠鏡。Giant Magellan Telescopeの頭文字をとってGMTと略称される。中心の8.4 m鏡と6枚の軸外し8.4 m鏡を花弁のように配置して共通の架台に載せビーム結合する方式。有効口径は25.4 mになる。補償光学は副鏡で行う。
ハーバード大学、カーネギー研究所などアメリカの8研究機関とオーストラリア、韓国、イスラエル、ブラジルの研究機関、及びホスト国チリの国際共同プロジェクト。国際非営利法人であるGMT天文台が建設と運用に当たっている。チリのアタカマ砂漠のラスカンパナス天文台に建設中で2029年の試験観測を目指している。
ホームページ https://giantmagellan.org/

ドイツのマックス・プランク地球外物理学研究所 (MPE) が開発したX線宇宙望遠鏡。2019年にロシアのバイコヌール基地から打ち上げられたロシアとドイツの共同ミッション「Spectrum-Roentgen-Gamma (SRG) 宇宙天文台」の主力観測装置。ラグランジュ点L2において7年間にわたり、中間エネルギー帯域(2-10keV)ではじめてとなるX線全天サーベイ観測を行う。また0.3-2 keVの帯域では、1990年代に実施されたROSAT衛星による全天サーベイ(0.3-2 keV)より25倍の感度向上が期待されている。2020年6月に最初の全天サーベイ観測を完了しデータを公開した。
ホームページ https://www.mpe.mpg.de/eROSITA