WISE衛星のこと。
アメリカ航空宇宙局(NASA)が開発した赤外線天文衛星で2009年12月14日に打ち上げられた。広視野赤外線探査衛星ともいう。口径40 cmの赤外線望遠鏡を備え、4つのバンド(中心波長 3.4, 4.6, 12, 22 μm)で10ヶ月間全天を撮像した。IRAS衛星、COBE衛星、あかり衛星など以前の同様の赤外線サーベイ観測を行った衛星より1000倍以上高い感度を有していた。
2011年2月17日に運用は終了し、全天の画像と検出天体のカタログは2012年に公開された。カタログには小惑星などの太陽系天体、褐色矮星など銀河系内の低温度天体、遠方宇宙の超高光度赤外線銀河など多数が含まれている。
NASAは地球接近天体を観測するために2013年10月に衛星の運用を再開し、さらに2021年6月、NEOWISE (Near-Earth Object Wide-field Infrared Survey Explorer)として、2023年6月まで運用すると発表した。
NASAのホームページ
https://www.nasa.gov/mission_pages/neowise/main/index.html
https://solarsystem.nasa.gov/missions/wise-neowise/in-depth/
ngVLAのこと。
合計263台のパラボラアンテナを北米全域に分散させて設置し、最大で約9000キロメートルの口径の電波望遠鏡とおなじ分解能を実現しようという次世代の大型電波干渉計計画。
観測周波数帯域は、1平方キロメートル電波干渉計(SKA)とアルマ望遠鏡の観測帯域の間を埋める1.2-116 GHz(波長21 cm-2.6 mm)である。ジャンスキーVLA(VLAを参照)とアルマ望遠鏡より10倍感度が高い。2024年頃に建設開始で、2030年代中盤には本格運用を予定している。
ホームページ https://ngvla.nrao.edu/
国立天文台のngVLAのホームページ https://ngvla.nao.ac.jp/about/
ngVLAの紹介動画
国際天文学連合(IAU)の(太陽系の)「惑星」であるための3つの条件(惑星の項にある1, 2, 3を参照)のうち、質量に関する条件(2)のみを満たす天体。すなわち、十分大きな質量を持つために自己重力が固体に働く種々の力よりも勝る結果、重力平衡形状(ほぼ球状)を有するが、中心部で水素や重水素、リチウムなどの熱核融合反応が起きるほどの質量を持たない天体。
惑星はもちろんこれに該当するが、この用語は、惑星と同程度の質量を持ちながら、恒星の周りをまわる通常の惑星と異なり、孤立して存在する天体(浮遊惑星とも呼ばれる)が様々な探査観測から発見されてきたために、それらを主に表すようになっている。太陽系外惑星候補のうち、惑星と褐色矮星の区別が難しい天体の呼称としても用いられる。
また、太陽系内の天体においては、惑星、冥王星型天体、準惑星のケレス、巨大な衛星などが惑星質量天体に該当する。
分割鏡(7枚の8.4 m鏡)を持つ超大口径の分割鏡望遠鏡。Giant Magellan Telescopeの頭文字をとってGMTと略称される。中心の8.4 m鏡と6枚の軸外し8.4 m鏡を花弁のように配置して共通の架台に載せビーム結合する方式。有効口径は25.4 mになる。補償光学は副鏡で行う。
ハーバード大学、カーネギー研究所などアメリカの8研究機関とオーストラリア、韓国、イスラエル、ブラジルの研究機関、及びホスト国チリの国際共同プロジェクト。国際非営利法人であるGMT天文台が建設と運用に当たっている。チリのアタカマ砂漠のラスカンパナス天文台に建設中で2029年の試験観測を目指している。
ホームページ https://giantmagellan.org/
ドイツのマックス・プランク地球外物理学研究所 (MPE) が開発したX線宇宙望遠鏡。2019年にロシアのバイコヌール基地から打ち上げられたロシアとドイツの共同ミッション「Spectrum-Roentgen-Gamma (SRG) 宇宙天文台」の主力観測装置。ラグランジュ点L2において7年間にわたり、中間エネルギー帯域(2-10keV)ではじめてとなるX線全天サーベイ観測を行う。また0.3-2 keVの帯域では、1990年代に実施されたROSAT衛星による全天サーベイ(0.3-2 keV)より25倍の感度向上が期待されている。2020年6月に最初の全天サーベイ観測を完了しデータを公開した。
ホームページ https://www.mpe.mpg.de/eROSITA
楕円銀河の中の星の運動の速度分散 σ と一定の面輝度 n (mag/arcsec2) における銀河の直径 Dn との間の相関関係。1987年に、「七人の侍(Seven Samurai)」と称されたドレスラー(Alan Dressler)ら7人の研究グループによって提案されたフェイバーージャクソン関係(1976年)の改訂版である。楕円銀河に対する距離指標関係式として、宇宙の大規模構造、銀河の特異速度場、ハッブル定数の決定など幅広い分野の研究に用いられている。宇宙の距離はしごも参照。
太陽系外惑星のトランジット(トランジット法参照)中に、中心の恒星のスペクトル線の波長が時間と共に偏移する効果。ロシター効果と呼ばれることもある。
自転している恒星を見ると、恒星面の半分は近づき、半分は遠ざかるので、ドップラー効果により近づく側から出た光は青方偏移、遠ざかる側から出た光は赤方偏移して観測される。一般に恒星表面を分割して観測することはできないので、この効果により恒星のスペクトル中の輝線や吸収線に幅がつく。
太陽系外惑星のドップラー法の観測において、トランジット時(トランジット法を参照)には惑星が恒星の一部を掩蔽するため、その部分の恒星の自転の効果がスペクトル線のドップラー偏移に現れる。すなわち青方偏移した側が隠されていると全体の平均としては偏移が赤い方にずれ、赤方偏移した側が隠されると平均の偏移は青い方にずれる。
中心星が太陽型星の場合の偏移のずれは、木星型惑星のサイズでは20 m/s程度、地球型惑星のサイズでは0.2 m/s程度となる。従って、巨大惑星のロシター-マクローリン効果を検出することは比較的容易である。太陽系外惑星で最初にこの効果が検出されたのは、ケロー(Didier Queloz)らによる2000年のHD209458bの観測である。この効果を用いて、逆行惑星や軌道面が傾いた太陽系外惑星が発見された。100個を超える太陽系外惑星のスピン(自転)-軌道間角度が報告されている。
褐色矮星の検出確認に使用された手法。0.06太陽質量以上の天体においては、リチウムは1億年以下で壊されて検出できなくなる。従って、リチウムが検出される超低質量星は0.08太陽質量より十分に軽く、水素の熱核融合反応を起こしていないとみなせるため、褐色矮星と確定することができる。これをリチウムテストと呼ぶ。最近はあまり使われていない。
太陽系外惑星の中で、スーパーアースより大きく、海王星型惑星より小さい惑星。質量はおよそ地球の10-30 倍、半径は地球の2-4 倍である。
太陽系外惑星の中で、質量は地球のおよそ10-30 倍、半径は地球の2-4 倍で、かつ公転周期が100 日以内の中心星に近い灼熱の海王星型惑星。存在頻度はきわめて低い。
エキセントリックプラネットのこと。
通常の太陽系外惑星とは異なり、恒星のまわりを周回しておらず孤立して存在する、質量が約13木星質量以下の(重水素の核融合が起きない)天体。自由浮遊惑星あるいは、質量に基づく定義から惑星質量天体と呼ばれることもある。英語ではfree-floating planet のほかに、planetary-mass object、rogue planet、interstellar planet などさまざまな呼び方がある。
浮遊惑星(惑星質量天体)の検出では、近くに明るい恒星がないため、高コントラスト観測よりも高感度観測が重要になる。また、低温度天体のため赤外線における探査が有効である。
最初の浮遊惑星は大朝たち(1999)によって、カメレオン座にある星形成領域の探査観測から発見された。撮像観測によって木星質量の数倍から13倍の天体が複数見つかり、その後、オリオン座、ペルセウス座、S106など様々な星形成領域で続々と報告された。これらは生まれたばかりの天体であるが、WISE衛星などの大規模近赤外探査観測から、太陽近傍において、太陽程度の年齢の天体も多数見つかってきており、太陽から近い星のリストは年々更新されている。現在では候補天体を含むと1000以上にのぼる。さらに、撮像観測だけでは天体の色を考慮しても背景銀河などの混入が避けられないことも指摘されており、候補天体の分光観測や固有運動の測定なども重要である。すばる望遠鏡などを用いた分光観測では約6木星質量の浮遊惑星も確認されている。
一方、撮像観測とは独立に、重力マイクロレンズ法によっても浮遊天体の存在が示唆されている。重力マイクロレンズ現象とは、ある星(ソース星)の前を別の星(レンズ星)が横切ると、レンズ星の重力によってソース星からの光は曲げられてレンズの様に集光され、ピーク状の増光現象が観測されることである。増光期間はレンズ天体の質量の平方根に比例し、普通の星で約20日、木星質量では約1日になる。住たち(2011)は銀河中心方向の観測から、増光期間が2日以下の増光現象を10例検出し、それらが木星質量程度の浮遊惑星であることを示唆した。統計的には、銀河系(天の川銀河)全体では少なくとも恒星の数と同程度数の浮遊惑星が存在する可能性も示している。
浮遊惑星の成因としては、通常の恒星や褐色矮星のように自己重力で収縮して形成される説と、恒星のまわりで惑星として形成され、それらが惑星系から飛び出したとする放出説に大別される。浮遊惑星として最初に発見された天体であるカメレオン座のOTS44は、アルマ望遠鏡やハーシェル宇宙天文台により原始惑星系円盤が付随している証拠も得られている。つまり、前者の、恒星のミニチュア版として誕生する説を支持するものである。最近、フランス・日本などのチームにより、大規模な撮像観測と固有運動を組み合わせて、さそり座の星形成領域で約100個の浮遊惑星が直接撮像により発見され、後者の放出説の可能性も提唱されている。
太陽系外惑星の間接検出方法の一つ。惑星が中心の恒星からの光を反射して見える場合、その惑星からの光は偏光している。一方、恒星からの光は無偏光なので、恒星と惑星を空間的に分解できない場合、両者からの光は混合されて、極めて小さな(10-6 程度以下)偏光を持ち、その大きさは惑星の公転の位相と共に変化する。この微小偏光とその周期的変化を検出するのが偏光法である。通常の偏光器では測定不可能な微小偏光のため、大気の揺らぎに伴う偽偏光や検出器の感度ムラによる限界を除く特別な偏光器が開発されている(英国ハートフォードシャー大学のPlanetPolなど)。この検出法に関しては、HD189733で初検出の報告があるが、別の望遠鏡・装置による観測では否定されている。
惑星の反射光を利用して惑星大気の性質を調べる手法。恒星からの光を惑星が反射している場合、惑星の公転運動と共に惑星反射光のスペクトルがドップラー効果で時間的に変化する。惑星大気中の特定の原子・分子に着目した場合、観測したスペクトルと公転運動から期待されるスペクトルとの相互相関(クロス・コリレーション)を取ることにより、その原子・分子の存在を確認することが可能になる。近年、原子・分子の精密なライブラリが揃い、大型望遠鏡において高分散分光観測が行われるようになり、惑星大気の検出に成功する例が増えてきている。
ハビタブルゾーンに位置する惑星をハビタブル惑星と呼ぶことがある。文字通りの意味では生命存在可能な惑星となるので、必ずしもハビタブルゾーンの位置とは関係がなくなく注意が必要であるが、慣用的に広く使用されている。
透過スペクトルによって太陽系外惑星の大気の性質を調べる手法。天文観測以外の通常の一般的な分光でも、測定する資料を透過した光を分光することを透過光分光、資料表面で反射した光を分光することを反射光分光という。
恒星の前面を惑星が横切り、トランジットを起こしている最中の恒星のスペクトルのこと(トランジット法を参照)。透過光スペクトルとも呼ぶ。透過スペクトルには惑星大気の上層を透過した光が含まれているため、トランジット以外の場合のスペクトルと精密に比較することにより、惑星大気の情報を引き出すことができる。これまで、巨大ガス惑星から地球型惑星(TRAPPIST-1など)までの透過スペクトルが観測されている。最初の例は、ハッブル宇宙望遠鏡のSTIS 分光器によるHD209458bからのナトリウムのD線(Na D線)の検出である。これは、ホットジュピターの大気にアルカリ金属が含まれる最初の証拠となった。この手法により、太陽系外惑星の大気中のさまざまな原子、分子、ダストの検出が報告されている。透過スペクトルを利用するこのような手法は透過光分光と呼ばれる。
太陽系外惑星の探査においては「第二の地球」の発見が重要なマイルストーンとされる。第二の地球という言葉にはいくつかの意味があることに注意が必要である。(1) 地球のような小さなサイズ(1.25地球半径以下)の惑星。これはケプラー衛星などで既に480個程度発見されている(ケプラー惑星)。(2) 地球質量程度の軽い惑星。惑星質量を決定するためにはドップラー法やトランジット時間変動(TTV)が必要であるため、ほぼ地球質量程度の惑星はまだ20個程度しか発見されていない。(3) ハビタブルゾーンに位置する地球サイズの惑星。これは20個程度報告されている。このうち、地球に近いものが生命の兆候を探査する上で最も重要であり、現在の地球型惑星探査の中心課題となっている。(4) 狭義の第二の地球として、生命の兆候が発見された太陽系外惑星。このような天体はまだ発見されておらず、次世代望遠鏡の最大の課題の一つである。もちろん、これ以外のさらに別の定義も可能である(知的生命の兆候が存在する惑星など)。
