重力多体系の中で、2体緩和時間が考える時間尺度と比較して十分長く、2体緩和の効果が無視できる系のことをいう。
無衝突系では粒子分布を連続体近似することができ、その進化は無衝突ボルツマン方程式によって記述される。たとえば、恒星数が 1011 の楕円銀河の2体緩和時間は、中心部分を除けば、宇宙年齢よりも何桁も長く、無衝突系と考えてよいことがわかる。N体問題, N体シミュレーションも参照。
地球磁気圏の尾部(太陽と反対側に伸びた部分)にある構造。磁場が弱くなっており、高温のプラズマで満たされている。
計算機の主要な機能(プログラムカウンタ、命令フェッチデコードユニット、実行ユニット、メモリインターフェースないしバスインターフェースなど)を単一の LSI チップに集積したもの。世界最初のマイクロプロセッサは 1971年に発表されたインテル社の 4 ビットプロセッサ 4004 である。80年代以降のマイクロプロセッサのほとんどは CMOS プロセスで製造されたため、集積度と動作速度が急速に向上し、1990年代初めにはクレイ社などのスパコンとほぼ同等のクロック周波数で動作するようになった。さらに、近年では複数の演算器を持つプロセッサコアを複数個、単一チップに集積したものが一般的になっている。
一定の磁場構造をともなったプラズマの塊のこと。太陽フレアの際にはプラズモイドができて上空へ噴出する現象がしばしば見られ、地球磁気圏でもプラズモイドが太陽と反対側にできて惑星間空間へ吹き出して行く現象が見られる。
20170906flare XRT thinBe w thickAl 2
https://youtu.be/LYh5dwcE3AY
XRT20170910 Al poly noaxis rev2
https://youtu.be/JM6ZqTU-Xio
皆既日食の際に皆既開始の直前と皆既終了の直後に短時間だけ光球より上空にある彩層が輝くが、このときに得られる分光スペクトルのこと。月により光球が隠されていくと、連続光成分と吸収線からなる光球起源のスペクトルが次第に弱まっていき、より上空にあって輝線放射をする彩層からの放射が皆既前後で顕著になるためにスペクトルは彩層起源の輝線スペクトルへと変化していく。さらに厚みの薄い彩層が月に隠されていくと、大多数の輝線は数秒で見えなくなるが、彩層の構造は3000 kmから10000 km程度まで延びているものがあるため、水素のH𝛂線(636.3 nm)やHβ線(486.1 nm)、またヘリウムのD3線(587.6 nm)などの強い輝線は数十秒間見えている。
子供宇宙を参照。
銀河中心核をもつ銀河の一種で、クェーサーほど中心核光度が高くなく、電離度の低い輝線は通常の星生成銀河に比べ強いが、セイファート銀河に比べると弱い。輝線の幅は 100 km/s 以上ある。ヘックマン(T.M. Heckman)によって名づけられ、英語の頭文字をとってライナー(LINER)と呼ばれる。
彩層にあって、黒点の周囲によく見られる、磁場の強い領域。H𝛂線などで明るく見える。古くは羊斑、羊毛斑などの訳語が使われた。
放射点を参照。
惑星を形成する材料となった、直径1-10 kmの天体のこと。太陽系形成論の標準シナリオでは、原始太陽系星雲中にただようダストが太陽重力の鉛直成分に引かれて太陽の周りを公転しながら徐々に星雲の赤道面に沈殿して薄いダスト層を形成し、ダスト層の密度が十分高くなると重力不安定を起こして分裂し、微惑星が形成される。微惑星が相互重力による衝突合体を繰り返して惑星が形成されたと考えられる。しかし、原始太陽系星雲中に何らかの原因で乱流があるなどしてダストの沈殿が妨げられると、重力不安定が起きるほど高密度のダスト層が形成されない。このため微惑星はダスト層の重力不安定を経ず、ダスト同士の直接衝突合体を繰り返して形成されたという考えもある。このように微惑星の形成過程は、まだわからないことが多い。
1枚の平面鏡で日周運動している天体からの光を地上にある特定の方向に反射する装置。主として太陽に対して使われる。太陽観測では1枚の反射鏡で反射した太陽光を観測装置のある特定の方向に導くときに使用されており、その最大のものはアメリカのキットピーク国立天文台にあるマクマス-ピアス太陽望遠鏡で口径203cmの平面鏡が使われている。また、多数の平面鏡で反射した太陽光を特定の位置に集めるようにしたものが太陽光発電施設で使用されている。
岐阜県飛騨市にある神岡鉱山の中に建設された日本の大型低温重力波 望遠鏡。KAGRAの愛称(KAは神岡のKA, GRAはGravity やGravitational wave といった重力をイメージする言葉の頭の文字をとったもの)がつく以前はLCGTと呼ばれていた。基線長 3 km をもつレーザー干渉計を用いて、直交する基線が重力波によって微小に伸び縮みする量を測定する重力波検出器である。
レーザーを基線中で何回も反射させて伸び縮みの量の測定精度を上げる。反射鏡を揺らす原因である地面振動を小さくするため、地下に設置された。地面振動に加えて鏡を揺らすもう1つの原因である熱雑音を抑えるため鏡をマイナス250度(20 K)まで冷却する。光学特性に優れていること、低温に冷却すると熱伝導や機械的損失が少なくなることなどからサファイアを反射鏡に用いる。2010年に建設を開始し、2020年4月から本格観測を開始した。性能向上作業は継続中である。
重力波検出器は1台では重力波の到来方向を正確に決められず、また感度の高い方向と低い方向があるので、複数台の装置が連携して観測することで性能が大きく向上する。2019年にKAGRAとアメリカのLIGO、ヨーロッパのVIRGO干渉計の三つの重力波望遠鏡の間で研究協力協定が締結された。LIGO-Virgo-KAGRAのコラボレーションは2024年春から本格的な共同観測を予定していたが、KAGRAは2024年1月の能登半島地震による被害の復旧のため予定通りの観測は難しくなっている。
マイケルソン干渉計も参照。
ホームページ:https://gwcenter.icrr.u-tokyo.ac.jp/
ある標準的な手続きに従って(あるいは仮定に基づいて)構築された、太陽の進化モデルのことである。太陽は球対称で、力学的にも熱的にもある特定の瞬間にはバランスしている(準定常状態)と考える。また、太陽の中心部で核融合反応が始まった約46億年前には、太陽内部の全域で対流が起こっており、化学組成は一様だったと考えられるのでこの時点を起点とし、核融合反応によって化学組成が変わるとともに構造が変化して行くのを46億年間にわたって追いかける(進化計算という)。この間、太陽の質量は不変であるとする(質量放出は考えない)。46億年後には太陽が現在の表面温度と明るさに達していることを条件として課す。最近では、元素の拡散過程も計算に入れるのが「標準」となりつつある。
原始太陽系星雲あるいは原始惑星系円盤において、水(H2O)が気相で存在する領域と固相で存在する領域との境界。雪線あるいは氷雪限界線とも呼ぶ。
スノーラインの内側では岩石や金属が固体惑星(地球型惑星)の材料物質となるのに対し、外側では氷が加わって材料物質量が増大するため、質量の大きな原始惑星の形成が可能となる。巨大な原始惑星は重力によって周囲の原始惑星系円盤ガスを取り込むため、スノーラインが固体惑星と巨大ガス惑星(木星型惑星)・巨大氷惑星(海王星型惑星)の境界となると考えられている。原始太陽系星雲においては中心星からおよそ2.7 天文単位(au)離れた場所にスノーラインが存在すると考えられている。太陽系形成論も参照。
恒星の対流層のうち、表面を含む恒星の外縁部にできる対流層のこと。光の吸収散乱断面積が大きくなって、放射によるエネルギー輸送の効率が低くなる場所では対流不安定が起こり、これによって表面対流層が形成される。太陽は表面対流層を持った星である。重い恒星では、中心核で起こる熱核反応によるエネルギー生成率の温度依存性が強くなるため、対流層は恒星の内側にできる。
族(小惑星の)を参照。
ランダムな偏光状態である自然光やある偏光状態の光から、特定の方向に直線偏光した成分を取り出す光学素子。高分子ポリマーのフィルムや基板に細い金属を蒸着したワイヤーグリッドなどの偏光子は、特定の方向の直線偏光を吸収もしくは反射することにより、透過光がそれと垂直方向の直線偏光を持つものとなる。また、複屈折を利用する波長板、ウォラストンプリズム、ロションプリズム、グラントムソンプリズムなどがある。
宇宙誕生時に形成されたと考えられている、恒星質量より軽いブラックホール。ブラックホールは質量の小さいものほど速く蒸発する。蒸発によって消滅するまでの寿命は質量の3乗に比例するので、ミニブラックホールは大質量ブラックホールに比べて寿命はとても短い。太陽質量(約2x1030 kg)のブラックホールの寿命は1067年にもなる一方で、寿命が宇宙年齢138億年とほぼ等しいブラックホールの質量は僅か1011 kgである。宇宙誕生時に生まれたミニブラックホールが現在残っているとすれば、量子重力理論で記述されるような極小型ブラックホールのみである。
陽子と陽子を高速で衝突させる(衝突エネルギー6 TeV)大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で「ブラックホール生成実験」が行われたが、その過程で極小型ブラックホールが生成される可能性があるとの報道が、2008年のLHC実験開始時にインターネットで話題となった。LHCは2015年に、より高いエネルギー(13 Tev)での実験を開始したが、2017年時点でミニブラックホールの生成は報告されていない。仮にミニブラックホールができたとしても地球には何ら影響はない。
宇宙空間にある小さな固体の天体が地球の大気に飛び込んできて光を放つ現象。一般には「流れ星」として親しまれている。
国際天文学連合(IAU)の定義と解説に基づくと、流星とは、「宇宙から来る固体の天体がガス状の大気に高速で突入するときに発生する光及びそれに伴う物理現象(熱、電離、衝撃)」のことである。流星は十分高い密度の大気を持つならどんな惑星や衛星でも起きる。惑星大気中における速度、質量、平均自由行程の組み合わせが適切な状態になれば、流星物質、小惑星、彗星などの固体からなる天体はどれでも流星となる。実際に流星現象は、地球のほか、火星や木星の大気中でも観測されている。その有名な例が1994年のシューメーカー-レビー第9彗星の木星衝突である。木星では最近は数年に一度程度、流星現象が地上観測から確認されている。月面でも微小天体の衝突に伴う発光現象が観測されているが、大気のない天体で起きる発光は流星ではなく、衝突閃光(impact flash)と呼ばれる。
以下では地球大気中で見られる流星に限って解説する。地球で夜空に見られる流星は、地球大気中の物理現象で、約30マイクロメートルから1メートル程度の大きさの惑星間物質が地球大気に高速(数10-70 km s-1で突入したときに、衝撃波加熱により塵物質が蒸発したプラズマの発光(と大気中の原子・分子の発光)によるものである。流星となる惑星間物質を、流星物質(流星体ともいう)と呼ぶ。一般には流星の発光する高度は約120 kmから80 kmである。大きな流星物質の突入時などでは通常の流星よりもはるかに明るいものが観測されることがあり、マイナス4等級程度より明るいものは火球と呼ばれる。火球に伴って地上に隕石が落下する事がある。流星が流れた後に残るものが流星痕である。流星痕は淡く発光していることもある。流星痕は数秒から10分以上続くことがあるが、やがて上層大気の運動によりかき乱されて消滅する。蒸発した塵物質中の金属原子は、温度が下がるにつれて集まって丸く再凝結しながら冷えて、主に直径0.1ミリメートル以下の固体の球粒となり、次第に大気中を降下し地上に達する。これを流星塵という。
流星のスペクトルは基本的にはさまざまな輝線の集合である。流星物質に含まれるカルシウムやマグネシウム、ナトリウム、鉄などの輝線と、主に大気中の窒素や酸素などの輝線が目立つ。肉眼で流星を見たときに感じる色はこれらの輝線の組み合わせによるものである。ただし、もともとの流星物質の個体差のみならず、対地速度・突入角度の違いや、発光高度の差等によっても輝線の種類や強度比は大きく異なるので流星の色はさまざまに違って見える(流星痕も参照)。
国際天文学連合による流星天文学の用語の定義と解説:
https://www.iau.org/public/themes/meteors_and_meteorites/
https://www.iau.org/static/science/scientific_bodies/commissions/f1/meteordefinitions_approved.pdf
しし座流星群を対象としたNASAによるLeonid MAC(Leonid Multi-Instrument Aircraft Campaign )のサイト
https://leonid.arc.nasa.gov/index.html
鉄隕石(隕鉄)の断面に見られる結晶構造。ニッケル含有量が10%前後の場合、冷却にともない、ニッケルに乏しいカマサイトとニッケルに富むテーナイトに分かれ、その帯状構造が作る模様が、ビドマンシュテッテン構造(ウィドマンシュテッテン構造)である。ニッケルの結晶が成長することによってできる。この帯状構造のスケールは鉄ニッケル混合物の冷却速度に依存する。このことから、鉄隕石の母天体の冷却時間は長く数百万年程度であると考えられている。
