天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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大マゼラン雲

大マゼラン銀河を参照。

紫外線のうちで波長が短い(10-100 nm)ものの名称。真空紫外線の一部である。電磁波も参照。

結合器のこと。

ベガ等級は基準となる明るさが波長により変化するのに対し、すべての波長において
$3630\,{\rm Jy}$($ 1\,{\rm Jy} =10^{-23}\,{\rm erg}\,{\rm s}^{-1}{\rm cm}^{-2}\,{\rm Hz}^{-1}$)を0等とした等級。ただし、$ {\rm Jy}$放射流束の単位 で ジャンスキーを参照。AB等級は次の式で定義される。

$$m_{\rm AB} = -2.5\log f_\nu - 48.60$$

ここで$f_\nu\,\,\,{\rm [erg\,s^{-1}\,cm^{-2}\,Hz^{-1}]}$ は天体の放射流束である。ベガ等級とは波長が548.0 nm で一致する。

活動銀河核を参照。

太陽系の惑星衛星、及び惑星間空間の探査を目的として打ち上げられる探査機。宇宙探査機とも言う。

降着円盤の現象論において、角運動量輸送率をガス圧に比例すると仮定した理論モデルのこと。星の周りに存在する回転ガス円盤中のガスは角運動量を失うことにより少しずつ中心星に落下し、それに伴って失った重力エネルギーは降着円盤や中心星を輝かせると考えられる。実際には、落下するガスが失う角運動量は何らかの角運動量輸送メカニズムによりガス円盤の外側に運ばれると考えられ、その輸送率をモデル化するために考えられたのが、𝛂粘性モデルである。実際の具体的な角運動量輸送メカニズムは磁気流体力学的乱流であると考えられている。その磁気乱流を駆動しているのは、磁力線に貫かれた差動回転するガス円盤に内在する磁気回転不安定性であると考えられる。乱流粘性も参照。

ベータ安定線を参照。

ベータ崩壊を参照。

銀河座標系で定義される銀河面のこと。銀河面を参照。

炭素原子が3階電離したイオン(C)の紫外領域のスペクトル線。その波長は154.82 nm、155.08 nmであり、105 K 程度以上の高温ガスによって生じる。われわれの天の川銀河銀河系)内の大質量星を背景光としてこの吸収線を観測することでその天体までの高温ガスの柱密度を求めることができる。また大小マゼラン銀河の大質量星や活動銀河核を背景光として用いれば、天の川銀河の銀河円盤内の高温ガスの全柱密度のさまざまな方向に沿う値を求めることができる。多くのクェーサー輝線として観測される。

複数の銀河団の間を結ぶ細長い帯状領域に分布する銀河分布のパターン。単にフィラメントとも言う。標準宇宙論モデルによる暗黒物質分布の大規模数値シミュレーションでは、銀河分布の2次元的壁(ウォール)構造に対し、フィラメント構造は二つの壁構造が交わる1次元的分布構造となって生じる様子がうかがわれる。個々の銀河の形状軸の分布とフィラメント構造とが関係しているという近年の研究もある。観測的にはハワイ大学のタリー(R.B.Tully)などが近傍宇宙での超銀河団の連鎖によるフィラメント構造をいくつか同定している。宇宙の大規模構造を参照。

電荷結合素子と呼ばれる半導体画像センサー。入射光子による内部光電効果で生じた電子と正孔対のうち、電子を各画素内の電荷ポテンシャルに蓄積することで光量に比例した電子画像を取得することができる。読み出し時に、電荷ポテンシャルを逐次移動させて、蓄積された電荷を転送し、最終的な読み出しゲートでデジタル化された時系列信号とすることにより、電子画像をコンピュータに取り込むことができる。電荷転送の方式には、インターライン型とフレームトランスファー型がある。天文学ではインターライン型でなく、フレームトランスファー型が用いられる。
量子効率が1%程度であった写真乾板に比べて、数十倍高い量子効率があり、入出力線形性の良さ、感度ムラが少ないなどの利点から、微弱光の天文学観測の画像センサーとして1980年代から普及した。天体観測では長時間露光できるように冷却して暗電流を抑えて使う。写真乾板に比べて撮像面積が小さい難点があったが、800万画素の大型素子が開発され、それらを多数敷き詰めたカメラが実用化されて、可視域の画像センサーの主流となった。X線の観測でも用いられている。
1969年ボイル(W. Boyle)とスミス(G. Smith)によって、CCDの基本技術が発明された。二人は2009年にノーベル物理学賞を受賞した。

ビッグバン宇宙論に基づいて宇宙の進化を記述する宇宙モデルの中で、冷たいダークマター(Cold Dark Matter: CDM)の密度ゆらぎがもとになって現在の銀河銀河団などの構造が形成されたとするモデル。

ダークマターとは電磁波を放出も吸収もせず、また陽子や中性子からなる通常の物質(バリオン物質と呼ぶ)とは一切相互作用しない物質であるが、冷たいダークマターと熱いダークマター(Hot Dark Matter: HDM)、そして温かいダークマター(Warm Dark Matter: WDM)に三分される。これらの区別は宇宙初期(正確には放射優勢期から物質優勢期に転じる際)に、その速度分散によって区別される。熱いダークマターは、速度分散が光速度と同じ程度、冷たいダークマターは光速度に比べて非常に小さい物質、温かいダークマターはその中間の物質である。

宇宙のごく初期に生成された物質密度揺らぎは空間スケールが小さいほど大きな揺らぎをもっていると考えられているが、その揺らぎの性質はダークマターの種類によって大きく変化する。熱いダークマターはその大きな速度分散によって小さな空間スケールのゆらぎを消してしまう。一方、冷たいダークマターでは小さなスケールのゆらぎが消えずに残る。したがって熱いダークマターによる構造形成ではまず最初に超銀河団スケールの構造ができ、それが分裂して銀河団、銀河と小さい構造が作られる。このような構造形成のシナリオをトップ・ダウンという。質量をもつニュートリノが熱いダークマターの候補であるが、エネルギー密度としてはダークマター全体の10%程度以下である。一方、冷たいダークマターの場合は、最初に小さなスケールの構造ができて、それらが集合、合体して銀河、銀河団、そして超銀河団へと大きなスケールの構造をつくっていく。このような構造形成のシナリオをボトム・アップという。冷たいダークマターは未発見であるが、その候補として素粒子の超対称性理論に現れるニュートラリーノと呼ばれる既知の中性のボソンの超対称性パートナーが想定されている。

銀河の空間分布の観測から冷たいダークマターモデルが支持されているが、Mpcスケール以下の構造の観測から冷たいダークマターシナリオでは説明できないこともあり温かいダークマターシナリオも検討されている。

クーラン条件を参照。

宇宙マイクロ波背景放射を参照。

恒星の中心部でおきる核融合反応の一つ。炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)を触媒として4つの陽子(水素, p)をアルファ粒子(ヘリウム, He)に変換する一連の水素燃焼反応。

右図に示すように(p, γ)反応や逆ベータ崩壊(核分裂を参照)が連鎖したのち、(p, $\alpha$)反応によりヘリウムが生成される。温度によりCNOサイクルは変化し、温度が高いほど、図では下にまとめた分岐反応が起きる。最も上段の循環はCNサイクルと呼ばれる。CNサイクルでは14N (p, γ)がサイクル全体の反応率を決める律速過程になりやすい。このためCNOサイクルにより水素を完全に燃焼させた領域にはヘリウムのほかに14Nが残る。大中質量の主系列星ではCNOサイクルが主要なエネルギー源である(CNOを含まない初代星は除く)。温度が1.5×107 K 以下ではppチェインの方が効率よく水素を燃焼する。太陽ではCNOサイクルは起きておらず、ppチェインによりエネルギーが発生している。

Cは荷電変換のことであり、電荷の符号を反転する変換である。Pはパリティ変換であり、空間座標の符号を反転する変換である。両者を同時に行うのが、CP変換で、これによって粒子は反粒子に変換される。CP対称性とは、CP変換に対して不変性を持っているということである。

クェーサー吸収線系であるライマンα吸収線の中で、中性水素柱密度が1020-1022 cm-2 と非常に高い場合、吸収線に減衰ウィングと呼ばれる線輪郭を示すものがあり、これを減衰ライマンα吸収線系(Damped Lyman-Alpha system: DLA)と呼ぶ。DLAは、クェーサーの視線方向にある大質量の原始銀河銀河円盤が引き起こしていると考えられている。

標本化定理のこと。