天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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接線速度

天体の空間運動速度の視線に垂直な方向の成分(視線速度も参照)。天体の距離が知られていれば、固有運動から測定できる。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州パークスにある電波天文台。オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の天文宇宙科学部門が運営しているオーストラリア電波望遠鏡国立施設(ATNF)の一つである。1961年に完成した64m電波望遠鏡を用いて電波天文学を推進しており、パルサーの観測や中性水素原子(HⅠ)の観測などで成果をあげている。またオーストラリア国内の他のアンテナと結んで長基線アレイ(LBA)も構成している。オーストラリア平方キロメートルアレイパスファインダー(ASKAP)の12mアンテナの一つも設置されている。64m電波望遠鏡はアメリカ航空宇宙局との協力で衛星との通信にも使用されている。オーストラリア電波望遠鏡国立施設も参照。
ホームページ:https://www.parkes.atnf.csiro.au/

太陽の重力を受けて太陽の周りを公転する粒子は、重力のほかに、太陽からの放射を吸収または散乱して運動量を受け取る。これを放射圧または光圧と呼ぶ。重力は粒子の質量に比例するのに対して放射圧は表面積に比例するので、小さな粒子では放射圧が重力より重要になる。ミクロンサイズ以下の粒子では、放射圧が重力を上回り、太陽系にとどまることができなくなる。
太陽の周りを公転し続ける粒子に対して放射圧は抵抗として働く。これは光速が有限であるため、公転する粒子から見ると太陽からの放射を完全に動径方向ではなく、やや前方から受けるためである。この効果のことを、この効果に気づいて定式化を行った二人の研究者にちなんで、ポインティング-ロバートソン効果と呼ぶ。この効果により粒子は角運動量を失って軌道半径が徐々に減少し、やがて太陽に落ち込む。たとえば地球軌道にある10-100 μm サイズのダストは数千年から数十万年で太陽に落ち込む。
太陽からは放射に加えて太陽風も噴き出しているので、太陽風によるポインティング-ロバートソン効果も働く。半径0.1 μm以下の粒子では太陽風によるポインティング-ロバートソン効果も無視できないと考えられている。

複数の検出器を荷電粒子が通過したことを、それぞれの検出器の信号のタイミングが一致することから判定する方法。また、空気シャワー事象を記録する方法の一つで、短い時間内に、あらかじめ設定しておいた粒子数以上の粒子が近接する数台の検出器に入射したときにのみトリガー信号を発生させ、検出器の出力データを収集して記録する方法。反同時計数法も参照。

天体を10 パーセク(10 pc=32.6光年)の距離から見た場合の見かけの等級。天体の真の明るさを表し、100倍明るくなる毎に等級は5等ずつ減っていく(1等の違いは約2.5倍の比に相当)。たとえば、Vバンド(0.55 μm)での太陽の絶対等級は+4.82等、デネブの絶対等級は-7.2等であるため、デネブのVバンドでの明るさは太陽の6万倍程度であることがわかる。

見かけの等級を m、絶対等級を M、天体までの距離を r [pc]とすると、星間吸収を無視すれば、

mM=5logr5

という関係がある。mM距離指数と呼ぶ。M が既知である天体(標準光源)に対して、m を観測から求めればその天体までの距離 r が分かる。

星団のHR図の縦軸を見かけの等級から絶対等級に変換するには距離指数(と星間吸収)を決定する必要がある。

仮想天文台を参照。

フェルミ粒子のこと。

星間分子雲中で密度が高い領域を指す言葉。主要な成分である水素が主に水素分子状態(H2ガス)で存在している星間分子雲の温度は絶対温度 10 K 程度であるため、水素分子成分を輝線で観測することは困難である。そのため、比較的多数存在している一酸化炭素(CO)分子の電波領域の回転遷移輝線などで主に観測される。分子雲コアはその電波輝線強度の高い領域に対応している。十分に密度が高い領域では、ガス中に存在している星間ダストが熱的に放射する連続波電波も観測される。分子雲コアの中心では星が生成されると考えられている。第一のコアも参照。

恒星大気モデル計算で用いられる仮定の一つで、恒星大気をほぼ平面とみなすもの。太陽のような星では大気の厚みは恒星半径に対して小さく、平面とみなすことが可能である。これにより放射輸送の方程式が著しく簡素化される。この仮定は、超巨星のように大気の厚みが大きい場合には成り立たず、より正確に扱うには球対称の恒星大気モデルが必要となる。

星の大気が光を吸収する度合いを表す量。吸収係数ロスランド平均不透明度クラマースの不透明度電子散乱不透明度を参照。

反射望遠鏡の筒先で副鏡または主焦点ユニットを支持するために設けられた環状の構造物のこと。望遠鏡の形状によっては必ずしも円環ではなく、多角形をしていることもある。たとえばケック望遠鏡においては六角形である。主焦点も参照。

天球上におけるの見かけの通り道のこと。黄道に対して約5.1°傾いている。

収縮しようとする力である自己重力を、ガスの圧力(勾配)で支えるために必要な天体内部のガスの温度のこと。恒星系の場合は、無秩序運動の速度分散が圧力に相当する。準平衡状態にある天体の力のつり合いの式から天体内部のさまざまなエネルギー形態の間に成り立つ関係式として(スカラー)ビリアル定理が導かれる。
このビリアル定理により、天体の回転運動などの巨視的な運動のエネルギーや電磁場のエネルギーなどが卓越していない場合は、重力エネルギーは天体内部の熱エネルギーの1/2程度の大きさになることがわかる。そのため、ビリアル温度とは重力エネルギーと同じ程度の大きさの熱エネルギーを与える温度として定義される。

ガウス関数とローレンツ関数(それぞれの中心は一致)をたたみ込んだ分布関数の輪郭のことで、スペクトル線の線輪郭をよく近似する(図(a)参照)。線幅拡大も参照。

ミクロ乱流を参照。

ビリアル定理を基にして、天体の運動エネルギーから求められる質量のこと。ビリアル定理によれば有限の空間内を運動する多粒子系が(熱)力学平衡状態にあるとき、そのポテンシャルエネルギーは運動エネルギーの2倍となる。運動エネルギーはたとえば球状星団楕円銀河では速度分散から、渦巻銀河では円盤の回転速度から求められる。それらの天体の大きさ(半径)がわかれば、ビリアル定理の式を天体の質量について解くことができる。こうして求まる質量がビリアル質量である。恒星系の場合には、力学質量あるいは重力質量とも呼ばれる。ビリアル平衡も参照。

分子雲の場合には、分子輝線のドップラー速度幅か分子輝線のドップラー幅Δv と、発光体(分子雲)の半径R から見積もられる質量。具体的には

MV=αΔv2R/G

と表記される。ここでα は形状を考慮した1程度の無次元数(現代の天文学第6巻8章では 0.9)。ビリアル定理によると、力学的平衡にある発光体では、発光体の内部運動のエネルギーや磁気エネルギーの和は、重力エネルギーの半分と等しい。従ってビリアル質量は、発光体を重力的に束縛するために必要な質量を表す。これに対して分子輝線の光度から見積もられる質量を、光学質量(luminous mass) と呼ぶ。

2006年1月19日にアメリカ航空宇宙局(NASA)が打ち上げた冥王星探査機。打ち上げから1年余りで木星に到達して、2007年2月28日に木星のスイングバイで加速した。2015年7月14日に冥王星に到達して、冥王星と衛星カロンを観測した。カメラ、紫外分光、荷電粒子検出器、中性粒子検出器、ダスト検出器が搭載されている。1000kmにわたって広がるハート形をした窒素氷の平原や暗色地位など、冥王星の地質は複雑で現在もおそらく活動的であることを明らかにした。
ニューホライズンズは2019年1月1日午後2時33分(日本時間)頃、エッジワース-カイパーベルト天体 (486958) 2014 MU69の近くを通過し、撮影した最初の画像を地球に送信してきた。これは探査機が近距離から観測した最遠の天体である。この天体は「雪だるま」のように二つの球がつながった形で、長さは約31 km である。研究チームは大きい方(約19 km)をウルティマ(Ultima)、小さい方(約14 km)をトゥーレ(Thule)と名付け、この天体はUltima Thule(ウルティマ・トゥーレ)と呼ばれることになった。Ultima Thuleは既知の世界の外にある「最果ての地」を意味する。その後、この名前は異なる意味でも用いられることがわかり、命名権を持つニューホライズンズチームは、ネイティブアメリカンのポウハタン族が使うアルゴンキン語で「空」を意味する「Arrokoth(アロコス;アロコットとも表記)に変更することを提案し、2019年11月にこの名前が国際天文学連合(IAU)によって承認された。
ホームページ:https://www.nasa.gov/mission_pages/newhorizons/main/index.html
IAUの報告ページ:https://www.iau.org/news/announcements/detail/ann19067/

生まれた直後の星団の星々が作るHR図上の仮想的な主系列のこと。英語のZero-Age Main Sequenceの頭文字を取ってZAMS(ザムス)と略称されることも多い。Tタウリ型星前主系列収縮を経て主系列星になった直後の状態のことをゼロ(零)歳主系列星と言い、様々な質量のゼロ歳主系列星がHR図上で分布する位置がゼロ歳主系列である。どんなに若い星団でも誕生後いくらか時間が経っているので厳密な意味で零歳主系列を観測することはできないが、若い散開星団の主系列から推定する。これを一種の標準光源として、星団の距離を求める方法を主系列フィット法(あるいはZAMSフィッティング)という。

有限の範囲を運動する多粒子系においてポテンシャルエネルギーが座標の同次関数であるとき、定常状態において成り立つ運動エネルギー K とポテンシャルエネルギー W の関係。ポテンシャルがすべての粒子の位置座標 (x1,x2,) について k次の同次関数である、すなわち
W(λx1i,λx2i,)=λkW(x1i,x2i,) のとき 2K=kWとなる。
特にニュートン重力の場合、k=1であるから、2K+W=0 となる。ビリアル平衡も参照。

双極分子流原始星光学ジェットを参照。