フレアを参照。
太陽系外惑星のうち、質量は木星と同程度あり木星型惑星(巨大ガス惑星)と考えられるが、軌道長半径が約0.1 au以下(公転周期が約10日以下)という中心星に非常に近い軌道を持つもの。中心星からの加熱によって高温の表面を持つためホットジュピター、または灼熱巨大惑星と呼ばれる。最初に発見されたぺガスス座51番星もホットジュピターである。
ホットジュピターは原始惑星系円盤の中の、約1 auよりも遠方の軌道で形成された後、中心星の近くまで移動したとする考えが有力である。大質量の惑星がガス円盤中で形成されると近傍のガスを跳ね飛ばして円盤中に溝を作る。ガス円盤自身は徐々に中心星に降着していく性質があるので惑星もそれに引きずられて中心星に近づいていくが、中心星のごく近傍では熱電離によりガス円盤に内縁があるなどの理由で落ち込みが止まる。そのようにして現在の軌道にまで運ばれたのがホットジュピターであると考えられている。ホットジュピターでは、熱せられた惑星からの大規模な大気散逸も観測されている。
ホットジュピターのうち、特に周期が一日未満のものを超短周期惑星とも呼ぶ。これらは主星と潮汐ロックの状態にあると考えられている。
天体のもつ磁場のうち、回転軸などの対称軸を含む面内の磁場成分。極座標 (r, θ, Φ) で記述する場合には磁場の (r, θ) 成分のことである。残る磁場成分をトロイダル磁場という。
太陽や恒星の内部で、エネルギー輸送が放射によって行われている層のこと。対流不安定は起こっていない。太陽では、中心から太陽半径の約7割の場所を境に、そこから内側が放射層、外側が(表面)対流層になっている。対流層、表面対流層も参照。
彗星を参照。
ガス分子の励起に関連して、衝突と電磁波の放射とのどちらが優勢になるかの境に当たる密度のこと。電波領域での熱的輝線の場合、宇宙空間では衝突による励起と電磁波の自発放射を伴う遷移との競争過程になっていると考えられる。このため、衝突励起の頻度が十分に高くないと励起が不十分で、輝線は事実上、観測されない。 そこで、自発放射の頻度を表すアインシュタイン係数のA係数と等しい衝突係数を与える密度を、この場合の臨界密度と呼ぶ。衝突係数は衝突する分子の熱運動に対応する温度の関数でもあるため、臨界密度もまた、温度の関数となる。
一方、可視光領域などで見られる禁制線では、遷移確率が低いため、ガス密度が高いと衝突脱励起が卓越し、輝線が事実上、観測されない。この境に当たる密度も臨界密度と呼ばれることがある。
天体表面に衝突して貫入する小型探査機のこと。鑓(やり)状の形態をしていて、観測機器や通信機器が搭載されている。軟着陸のための制御を行わないため、全体は軽量であり、1回の探査でも複数のペネトレーターを放出することで多点の探査を行うことが可能である。表面に衝突後地下に潜るため、月面などでは温度が比較的安定しているレゴリス内部に機器を設置することが可能である。一方で、高速衝突に耐える観測機器の開発は困難で、日本のルナーA計画は、月面の複数点に地震計と熱流量計を搭載したペネトレーターを打ち込む計画であったが、ペネトレーターの開発が遅れたために中止された。1998年に打ち上げられたマーズポーラーランダーには2機のペネトレーターが搭載されていたが、信号は得られず失敗した。
旧ソ連の金星探査計画。1961年のベネラ1号から、1983年のベネラ16号までを指す。3号から6号までは金星大気に突入したが、初めて金星表面への軟着陸に成功してデータを送ってきたのは、1970年のベネラ7号である。ベネラ8号は、ガンマ線の分光測定から、表面の岩石組成が地球の花崗岩の組成に近いという結果を得ている。ベネラ9号から12号の4機も着陸に成功したが、カメラのレンズキャップが外れないというトラブルがあった。ベネラ13号、14号は表面のデータを取得している。ベネラ15号, 16号は周回機で、開口合成レーダーにより地形データを取得している。打ち上げに成功して地球軌道を離脱したものには名称がつけられているが、実際には失敗した探査機が多い。1962-64年の間には(ゾンド計画の探査機を含めて)7機続けて失敗をしている。
日食の際、太陽の縁と月の縁とがほぼ重なって見えるときに、月面の地形の凹凸のために、洩れて来る太陽からの光が数珠(ビーズ)状に見られる現象。
フラムスティード(John Flamsteed;1646-1719)はイギリスの天文学者で、グリニッジ王立天文台初代台長。しばしばフラムスチードとも記される。ケンブリッジ大学で学び、天文台設立を進言して実現し、自ら初代台長として星の精密位置を測定した。海上での経度決定のため、月の位置と恒星の位置を比較する方法に必要な星表が急務であったからである。その結果は、彼の生前には完成せず、星表『大英恒星目録』(Historia Coelestis Britannica)(1725年)および星図『天球図譜』(Atlas Coelestis)(1729年)として、没後に夫人たちによって出版された。フラムスティードは天王星を観測しているが、恒星と誤認し「おうし座34番星」として記載している。
『天球図譜』の出版には、ニュートン(I. Newton)とハレー(E. Halley)が干渉していざこざが起こり、フラムスティードは二人の強引な出版計画に抵抗した。月の観測をふくむ彼の資料は、大航海時代にあった当時、航海天文学を重視した英国国家としても重要な意味があった。また、古代ギリシャのヒッパルコス星表との比較は、固有運動の発見につながった。英国王立協会会員。
太陽黒点は東西に対して少し傾いた状態だが、ほぼ赤道に沿った方向にN極とS極の対になって発生する。一般に黒点は西側に現れる先行黒点が東側の後行黒点よりも大きく長寿命である。(1)一つの太陽周期中には、ある半球(北半球または南半球)内で先行黒点の磁極は同じであり、(2)北半球と南半球の先行黒点の磁極は異なること、そして(3)次の周期には、前の周期とは磁場の極性が逆転することが知られている。この黒点の磁極性の法則(1)〜(3)をヘール(G.E. Hale)-ニコルソン(S.B. Nicholson)の法則という。したがって、黒点の増減の周期は約11年であるが、太陽活動の磁気周期は約22年である。太陽周期活動、ダイナモ機構も参照。
コンドライト隕石の微細粒子からなるマトリクスのなかに発見された、太陽系の同位体組成とはまったく異なる同位体組成をもつ太陽系外起源の粒子。ナノメートルからミクロンサイズの微粒子で、ケイ酸塩、酸化物、窒化物、グラファイト、ダイヤモンドなどの結晶である。コンドライト中の存在度は低く、最も多いナノメートルサイズの(気相中で生成された)ダイヤモンド粒子でも0.1%である。同位体組成の多様性から、太陽系形成以前に、赤色巨星、超新星、新星など複数の恒星あるいは星周環境で生成されたものが混合していると考えられる。
太陽から相対論的エネルギーに加速された陽子を発生させる現象をいう。太陽フレアの際に太陽近傍で加速されるか、コロナ質量放出に伴う衝撃波によって加速されると考えられている。大規模なプロトン現象は、陽子がもつエネルギーの大きさから地球磁場に守られた内部磁気圏まで到達して、人工衛星などの宇宙機の誤動作や故障を引き起こすことがあり、また地球の極域に侵入することにより電波の伝播異常を引き起こす。宇宙天気も参照。
太陽コロナ中に存在する5000-10000 Kのプラズマ。皆既日食時には、水素のHα線を強く放射して赤く見えるため紅炎とも呼ばれる。太陽面上で観測されると、暗い筋状の構造として見えるためダークフィラメントと呼ばれる。プロミネンスの密度は1011 (粒子 cm-3 )程度で、コロナの密度109 (粒子 cm-3 )の100倍くらい高密度である。
プロミネンスには大きく分けて、全体的には数週間同じ形を保つ静穏型プロミネンス、数分から数時間で形を変えるか消滅する活動型プロミネンスの2つがある。静穏型プロミネンス中でも物質は静止しているわけではなく、高解像度観測を実施すれば、プロミネンス中に数km/s から数10 km/s の速度で動く微細な流れを見ることができる。一方、活動型プロミネンスは運動状態にあり、その運動速度は数km/s から2000 km/s と幅がある。
プロミネンスはコロナ中に浮かんだプラズマであるから、そのでき方は2通りしかない。一つはコロナ物質が冷却して凝縮する場合、もう一つは彩層の物質がコロナに持ち上げられる場合である。静穏型プロミネンスは前者、活動型プロミネンスは後者に対応すると考えられている。まれに彩層から噴出した低温プラズマがコロナに長期間滞在して静穏型プロミネンスが形成されることがある。ループプロミネンスも参照。
Prominence / プロミネンス
https://youtu.be/hSnERbkd-7E
地球以外の固体惑星や衛星の熱進化では、マントル深部からわきあがってくるプリュームがマントル対流の熱輸送を支配している。天体表面では、点状に分布する火山(ホットスポット)として現れ、惑星表面の地質活動を特徴づけている。これをプリュームテクトニクスと呼び、対流上昇域に伴う火山が線状に分布するプレートテクトニクスと区別する。とくに金星や火星では、プリュームテクトニクスが支配的であると考えられる。プレートテクトニクスでは安定した連続的な熱輸送が行われる一方、プリュームテクトニクスでは熱輸送効率が悪いためマントルの温度が上がり、間欠的に対流活動やそれに伴う火山活動が活発化することが予想される。これは金星で全球的な火山活動による表面更新があったことを説明できる。火星のような小さい天体では、過去に熱輸送が活発な時期にプレートテクトニクスが存在して、内部が冷えた現在ではプリュームテクトニクスに移行した可能性がある。地球でも、地震波による内部構造の観測から、下部マントルを含むマントル全域ではプリュームによる熱輸送が起きていると考えられている。
アインシュタイン(A. Einstein)の特殊相対性理論によれば、ニュートン力学のような絶対的な時間は存在せず、時間と空間を一緒にして4次元の時空として考えなければならない。3次元空間における距離の拡張として、4次元時空上の点 $P(ct_1,x_1,y_1,z_1), Q(ct_2,x_2,y_2,z_2)$ に対して、
$$s_{12}^2=-c^2(t_2-t_1)^2+(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2+(z_2-z_1)^2$$
により、$s_{12}$ という量を定義する。ここで $c$ は光速度を表す。この $s_{12}$ という量は世界距離(あるいは世界間隔)と呼ばれる。距離をこのように定義した空間をミンコフスキー時空と呼ぶ。実際、$t_1=t_2$ の場合、$s_{12}$ は3次元空間における2点間の距離となることから、自然な拡張といえよう。なお、世界距離の2乗はローレンツ変換に対して不変である。計量も参照。
同種粒子の交換に対して波動関数が反対称(符号が反対)になる粒子。フェルミ統計に従う。フェルミオンとも言う。名前はイタリアに生まれた物理学者エンリコ・フェルミ (Enrico Fermi) に由来する。
スピン量子数が半整数(±1/2, ±3/2, …)の粒子はフェルミ粒子である。電子、陽子、中性子、ミューオン、奇数の質量数を持つ原子核などが含まれる(図参照)。パウリの排他原理を満たし、同じ量子状態を占める粒子の数は0または1に限られる。また、フェルミ粒子の生成-消滅演算子は反交換関係を満たす。ボース粒子、素粒子も参照。
太陽外層大気において発生する現象で、数分から数時間という時間に1029 ergから1032 ergもの巨大な磁気エネルギーが熱エネルギー、運動エネルギー、粒子加速エネルギーなどに変換される。これと同じ現象で、より解放エネルギーの小さい1026 erg 程度までのものをマイクロフレアと呼ぶ。通常フレアは活動領域内で発生し、それに伴ってさまざまな波長で増光現象が観測される。太陽フレアは1859年に英国のキャリントン(R. C. Carrington)により白色光の増光として初めて観測された。 フレアはコロナ中に蓄積された磁場のエネルギーが磁気リコネクションにより解放される現象である。コロナではプラズマが107度に加熱されて軟X線波長(2-100Å)で顕著な増光が観測され、また彩層ではコロナ中で発生したフレアのエネルギーが熱伝導もしくは加速粒子という形で磁力線に沿って流れ込み、水素のH𝛂線で明るく輝く。フレアの初期には、電子が10 keVから1 MeV程度まで加速され、硬X線、マイクロ波、ガンマ線がさまざまな過程により放射される。また、高エネルギー電子がコロナ中を移動することでメートル波帯で電波バーストが観測される。フレアで解放されるエネルギーの大半はフレアループ上空に放出されるプラズマ雲(プラズモイド)の運動エネルギーに転換され、他の形態のエネルギーは10%程度である。 フレアの規模は、H𝛂線で明るくなったフレア領域の面積と明るさで分類されるほか、米国GOES衛星により観測される軟X線の放射エネルギー流束(フラックス)の最大値が使われている(GOES X線クラス)。大型のフレアは、地球近傍の宇宙環境(宇宙天気)に大きな環境変動を引き起こし、その結果として人間の社会基盤に悪影響をおよぼすことがある。
太陽と同様に活発な磁気活動を示す恒星には、その表面でフレア活動(恒星フレア)を示すものがあり、フレア星と呼ばれる。
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https://youtu.be/L4C2bP826cs
1. プレートテクトニクスを参照。
2. 写真乾板(写真乳剤を参照)のこと。
地球の表層部がいくつかの硬い岩板(プレート)に分かれており、それらがほとんど変形することなしにマントルの対流運動によって相互に水平運動(球面上では回転運動)していると考えるモデルのこと。1968年にフランスのルピション(X. Le Pichon)らによって提唱され、それまで観測されてきた地学現象が統一的に理解されるようになった。初めてプレートテクトニクスという言葉を用いたのはイギリスのバイン(F.J. Vine)ほか(1968)である。プレートとして運動するのは地殻とマントル上部からなる地表から約100 km の部分である。1912年にウェーゲナー(A. Wegener)が提唱した大陸移動説はプレートテクトニクスの先駆と考えられることも多い。しかし、ウェーゲナーの大陸移動説では大陸は海洋地殻に相対的に運動するのに対し、プレートテクトニクスでは海洋地殻も大陸もともにプレートを構成し一緒に移動をする点で、両者は基本的に異なっている。
