天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

New

「QRコード付き名刺型カード」ダウンロード(PDF)

有効半径(銀河の)

銀河の全光度の半分を含む半径のこと。半光度半径とも呼ばれる。銀河の典型的な大きさを表す指標として用いられる。銀河の表面輝度プロファイルドゥ・ボークルール則指数法則で近似して求めることが多い。ペトロシアン半径やクロン半径も参照。

電波望遠鏡や電波アンテナを保護するために設けられたドーム。英語の発音通りのレイドーム、あるいはレードームと書かれることもある。電波を透過する材質で作られるので、光学望遠鏡のドームのような開口部はなく、望遠鏡を完全に覆って保護する。

ガスを構成する原子や分子が外部から入射した光子を吸収し、そのエネルギー分だけ高いエネルギーの量子状態に遷移する現象。単に「吸収」と呼ばれることもある。

恒星スペクトルの波長430 nm 付近に現れるCH分子の吸収帯のこと。G型星のスペクトルで最も強く現れる。F型星やK型星のスペクトルにも見られるが、G型星に比べれば吸収は弱い。F型星より高温の恒星や、逆にK型星より低温の恒星のスペクトルには現れない。スペクトル型(星の)も参照。

物質と電磁波の放射吸収をエネルギー準位間での遷移に基づいて考えると、電磁波の入射とは無関係に、高エネルギー準位から低エネルギー準位へ確率的に遷移する自発放射と、入射した電磁波強度に比例して低エネルギー準位から高エネルギー準位へ遷移する吸収のほかに、入射した電磁波強度に比例して高エネルギー準位から低エネルギー準位に遷移する放射も必要であることが、アインシュタインの指摘によって明らかとなった。この放射を誘導放射という。誘導放射によって生じる電磁波は、その原因となった入射電磁波と周波数も偏波も一致していることが分かっている。熱平衡に近い物質中では、低エネルギー準位にある粒子(電子や原子や分子)の方が高エネルギー準位にある粒子よりも多数であるため、誘導放射は吸収が目減りする効果しかもたらさず、その存在には気づきにくい。しかし、なんらかの方法で高エネルギー準位の方がずっと多い状況(反転分布)を定常的に作り出すことができれば、そこに電磁波を入射することで誘導放射を誘発させ、より強力な電磁放射を発生させることができる。これがメーザーやレーザーである。誘導放射で放出される光子は周波数、偏波などの量子状態が入射光光子と同一である。誘導吸収メーザーも参照。

エシェル回折格子と垂直分散素子(クロスディスパーザ)を用いた高分散分光器のこと。エシェル回折格子とは、高次の回折光を利用するために粗く溝が刻まれた回折格子のことをいう。エシェル回折格子で分散された光は、高次回折光のためにいくつもの次数の回折光がほぼ同じ方向に重なってしまう。これを分けるため、エシェル回折格子の分散方向とは垂直方向に光を分散するクロスディスパーザを、エシェル回折格子の後に配置する。この後に結像光学系(カメラ)を置けば、少しずつ波長の異なるいくつもの帯状のスペクトル(エシェルスペクトル)を撮影することができる。これがエシェル分光器の原理である。エシェル分光器は、波長分散の大きな高次回折光を用いるので波長分解能が高く、垂直分散素子で重なった次数を分けるために、一度に広い波長域のスペクトルを得ることができる。
可視光域におけるエシェル分光器として、すばる望遠鏡に搭載された高分散分光器(HDS)や岡山天体物理観測所の高分散エシェル分光器(HIDES)などがある。

X線望遠鏡に用いる薄い反射鏡基板の製造法の一つ。磨き上げた円柱状のマンドレル(反射鏡の母型)に金の薄膜をコートし、その上にアルミ板を接着するか、ニッケル層をメッキ法で生成する。金属板をマンドレルからはぎ取ると、金の薄膜が板上に写し取られ(レプリカされ)て、滑らかで薄い反射鏡が作成される。

水素原子のライマン系列の吸収が束縛-束縛遷移による離散的な吸収から束縛-自由遷移による連続吸収へと変化する波長(91.2nm)。ライマンブレイクということもある。水素の電離エネルギーである13.6 eVに相当し、この波長よりも短い波長では星間空間にある水素原子によって天体のスペクトルは大きく吸収される。バルマー不連続も参照。

二体問題を参照。

エジンバラの中心部にあったカールトン・ヒルにエジンバラ大学が持っていた天文台が、1822年にイギリス国王ジョージ4世が訪れたのを機に王立天文台となりROE(Royal Observatory, Edinburgh)の名称となった。1834年にはスコットランドの王室付天文学者(Royal Astronomer for Scotland)としてトーマス・ヘンダーソン(T.J. Henderson)が初代台長に任命された。約50年後には一時、閉鎖の危機に陥るが、クロフォード伯爵がアバディーンに所有する天文台の装置と多数の蔵書を寄贈することにより、国の支援が継続され、1896年に新たな天文台が現在のブラックフォードヒルに建設された。1973-88年の間、オーストラリアのサイディングスプリング天文台UKシュミット望遠鏡(UKST)を運用し、撮影された南天のサーベイ写真乾板を、高速測定器COSMOSでデジタル化して研究成果を挙げた。UKシュミットの写真乾板はすべてROEで保管されている。
現在ブラックフォードヒルには、英国先端技術センター(UK Advanced Technology Center)、ROEビジターセンター、およびエジンバラ大学天文研究所がある。
ホームページ:http://www.roe.ac.uk/

干渉計として動作する、一定距離だけ離れた半透明な平面境界面に挟まれた層。その層の境界にある反射面での多重反射干渉によって、高分散(高分解能)のスペクトルを得ることができる。もともとは石英の薄板などが層材料として使われてきたが、平行に設置したガラス板で挟んだ空気層をエタロンとし(ファブリー-ペローエタロン)、そのガラス板の間隔を変えて透過する波長を制御できるようにしたものや、電圧の印加により屈折率が変わるニオブ酸リチウムのような材料でエタロンを構成して透過波長を制御するものなどが天体観測に使用されている。

水素原子の自由-束縛放射で、基底準位に束縛されるときに放射される連続光。O型星B型星光球表面やその周囲の電離水素領域などから放射される、ライマン端よりも短い波長の光で、星間空間にある中性水素原子の電離エネルギー源となっている。

ラッセル(Henry Norris Russell;1877-1957)はアメリカの天文学者。恒星の分類と進化に非常に重要な役割をするHR図を作った。
ニューヨーク州のオイスターベイに生まれ、プリンストン大学で天文学を学び、1899年に連星軌道の測定方法を考案し、学位を取得した。イギリスのケンブリッジ天文台に勤務したのち、プリンストン大学に戻り、1912年から1947年に引退するまでプリンストン大学天文台の所長を務めた。恒星の光度とスペクトル型を2次元に表現した図は、ヘルツシュプルングと独立に作ったが、後にヘルツシュプルング-ラッセル図、略してHR図と呼ばれるようになった。このHR図上で、恒星は主に巨星矮星に分けられることや、星の性質(半径、表面温度、光度など)は星の質量と化学組成によってほぼ決定されることを示した。また、今では否定されているが、HR図上で、星の進化は赤い低温の巨星から始まり、収縮しつつ主系列上を低温から高温に移るという、重力エネルギーによる説明を行った。太陽の構成元素に関しては、ペイン-ガポシュキンが地球の組成と異なることを発見した際に、その発表を抑えたりしたが、のちには水素とヘリウムであることを自ら導き出し、ペインの功績を認めている。量子力学にも研究分野を広げ、L-S結合(Lは電子の全軌道角運動量、Sは全スピン角運動量)は、ラッセル-サンダース結合として名を残している。ラッセルの共著『 Astronomy: A Revision of Young’s Manual of Astronomy』は天文学の教科書として広く読まれた。1921年に王立天文学会ゴールドメダル、1922年にヘンリー・ドレーパー・メダル、1925年にはブルース・メダルを受賞している。

 

参考:https://phys-astro.sonoma.edu/node/1461

コンプトンガンマ線衛星に搭載されたガンマ線バースト検出器。8台のNaI(Tl)シンチレーション検出器によりほぼ全天をカバーする視野を持ち、20-600 keVのエネルギー領域で2704個のガンマ線バーストを検出した。そしてその方向を数度の角分解能で決定することにより、発生場所が全天でほぼ一様であることを示した。太陽フレアの観測も行った。

ホームページ:https://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/cgro/batse/BATSE-desc.html
https://gammaray.msfc.nasa.gov/batse/

銀河団のカタログの一つ。エイベルカタログに南天の1364個を追加し、南北天で合計4076個の銀河団を収録したもので、1989年に出版された。カタログを編成したエイベル(G.O. Abell)、コーウィン(H.G. Corwin)、オロウィン(R.P. Olowin)らの頭文字をとって名づけられた。写真乾板に基づく眼視検査によって選択されたため、明るい銀河団に限られ、その大半は近傍(約800 メガパーセク(800 Mpc=26億光年)以内または赤方偏移0.2以下)の銀河団である。

漸近巨星分枝を参照。

強い相互作用と電弱相互作用を統一する試みである大統一理論では、バリオン数を持ったクォークとレプトンが同じ多重項に配置されるため、バリオン数やレプトン数を保存しない反応が、大統一理論特有のゲージ粒子ヒッグス粒子によって起こり得る。その結果、陽子も安定ではなく、有限の寿命で崩壊してしまうことになる。
現在の実験的制限は寿命の下限として 1034 年ということである。通常の崩壊先は陽電子と中性のパイ(π) 中間子だが、超対称性の入った理論ではK中間子とニュートリノに崩壊するモードがより重要である。


陽子崩壊とは

https://youtu.be/5dk4bkYb9rI

ラプラス(Pierre-Simon Laplace;1749-1827)はフランスの天文学者、数学者。天体力学を体系化し、太陽系起源の星雲仮説、確率論をつくった。フランス、ノルマンディーの農民の子として生まれた。18歳の時にパリに出て、ダランベールに認められて陸軍学校の数学教官となり、その後フランス科学アカデミー会員となる。世渡りもうまく、フランス大革命、ナポレオン帝政、王制復古の動乱期を通じて高い地位を維持した。
天体力学を数理的に体系化して、惑星の摂動理論を発展させ、また太陽系が数学的に安定であることを証明した。月軌道の永年加速、土星の環、地球自転軸の傾きの変動も導いて、それらを全5巻の『天体力学』(Traité de mécanique céleste:1799-1825)にまとめた。また、『宇宙体系解説』(Exposition du système du monde:1796)では、太陽系は太陽のまわりを回る原始星雲から作られ、連続した層へと凝縮し、これらの層から惑星が形成されたという星雲仮説を提唱した。万物は、初期条件が与えられれば微分方程式にしたがって自動的に進行するという決定論(「ラプラスの魔」)も唱えている。一方、物体数が多いときの確率論もつくり、古典的確率論も完成した。エコールポリテクニクでの教え子たちは、以後彼の考えを発展させた。

銀河を見かけの形によって分類する形態分類の一つ。渦巻銀河と不規則銀河の分類法であり、光度階級分類とも呼ばれる。 カナダのデイビッドダンラップ天文台(DDO) のヴァンデンバーグ(S. van den Bergh)によって提唱されたことからこの名がある。渦巻腕の発達の度合いと銀河の絶対光度の間に相関があることを利用した、渦巻腕の見え方に基づく分類である。銀河の形態(Sb, Sc, Irr)と光度階級を組み合わせてタイプを表す。光度階級はローマ数字のI-V(Iが明るい)で表されScI, SbII-III, IrrIVなどのように表記される。銀河の見かけの形から絶対等級を推定できるこの分類(とくにScI型)は、銀河の距離決定にも利用された。ハッブル分類ヤーキス分類も参照。

電子の反粒子のこと。電子と同じ質量を持ち、同じ量で逆符号の電荷、つまり陽子と同じ電荷を持つ。e+ と表される。電子と衝突すると2個の光子対消滅する。反物質も参照。