天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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クラスⅢ天体

クラスⅠ天体クラス0天体を参照

散乱を受けた光のこと。

扱う信号のさまざまな属性に対し、その最小値と最大値の比率のことを、ダイナミックレンジと呼ぶ。信号振幅に対するダイナミックレンジの例としては、ある検出器の出力特性が線形に保たれる入力値の最小値と最大値の比率や、天体画像上の有効な信号値の最小値と最大値の比率などがある。これらの単位としては、デシベル(dB)がよく用いられる。一方、空間的ダイナミックレンジの例としては、観測や数値計算における最小空間単位と全領域の長さとの比などがある。信号対雑音比も参照。

点光源である恒星を地上から観測するとき、地球大気中の温度ゆらぎのため、屈折率分布にわずかな乱れが生じ、星像が揺れたり、ぼけたりして、完全な光学系で得られるはずの回折限界より、拡がった像となってしまう。この大気ゆらぎによる星像のぼけ具合の大きさをシーイングと呼び、星像直径を角度秒単位で測る。日本国内の天文台では可視光で観測する場合、2秒角程度になることが多いが、海抜4200 mのハワイ島マウナケア山頂のすばる望遠鏡ではシーイングが良く、平均で0.6秒角程度となる。シーイングを克服して回折限界に迫る結像性能を観測時にリアルタイムで実現する先端技術を補償光学と呼ぶ。

ドイツのショット社が開発したゼロ膨張ガラスセラミック複合素材の光学材料の名称。常温での熱膨張率は、ガラス成分とセラミック結晶成分の比率を制御することにより ±20 ppb K-1(温度が1度変化しても1億分の2)以下にすることが可能で、一様で安定な素材として、天体望遠鏡の鏡材や測長スケール材として用いられる。比重は2.53、ヨーロッパ南天天文台のVLTの主鏡鏡材などに採用された。

シュミット(Bernhard Voldemar Schmidt;1879-1935)はドイツの天文光学技術者。エストニア系のドイツ人で、15歳の少年時代に事故で右腕を失った。スウェーデンのイェーテボリ、ドイツのミッテワイダ工業学校で機械工学を学んだ。設立したミッテワイダの小工場で作った反射望遠鏡が高性能だったために評判を得て、1905年にはポツダム天文台の口径40cm反射望遠鏡の製作をまかされた。この望遠鏡は、第二鏡が非球面になっていて球面収差をなくしたものであった。1926年からはハンブルグのベルゲドルフ天文台に入台、台長ショル(R. Shorr)から信頼されて種々の光学実験、開発に専心した。その結果、1931年に非球面の補正板を用いた、広視野にわたって歪みがなく明るい光学系のシュミットカメラ(シュミット望遠鏡)を完成させた。

熱力学では、系を巨視的に特徴づける量(温度、圧力などの示強変数や体積、物質量などの示量変数に大別される)の振る舞いが扱われる。熱力学的平衡とは、これら熱力学で扱われる量すべてが時間変化せず平衡状態にあることである。熱平衡も同じ意味で用いられる。局所熱力学平衡も参照。

スターバースト銀河を参照。

ハッブル系列で右側にある渦巻銀河不規則銀河の総称。ハッブル系列上で、右に行くほど晩期、左に行くほど早期という言い方をするので、晩期型渦巻銀河といえば一般にSc型渦巻銀河とそれより晩期型の渦巻銀河を指す。ただし、「晩期型」という定義が決まっているわけではないので、使う人や文脈によって指すものが異なる場合がある。ハッブル分類音叉図(ハッブルの)を参照。

宇宙速度を参照。

活動銀河核の中心にあるブラックホールを取り巻くように存在するガスやダストでできたドーナツ状の領域のこと。周りから降着してきたガスは大きな角運動量を持つため、円盤状に分布するが、中心核からの強いジェットの影響で中抜けの構造になり、このような形態をしていると考えられる。多様な活動銀河核を、それを見る視線方向の違いで、ブラックホールとトーラスの相対位置関係が変わることによって説明しようとする活動銀河核統一モデルにおいて中心的な役割を果たす。

活動銀河核の一種。クェーサーのような恒星状の天体。可視光では強い連続光を持ち、輝線は目立たない。一日以下の短い時間スケールで大きな変光が見られる。また、強い直線偏光も見られる。これらの特徴により、当初は変光星であると考えられ、星座の中の星を分類する記号を用いて、最初に発見された天体はとかげ座BLと命名された。BL Lac型天体ともいう。

通常の銀河よりも強い電波を出している銀河。天の川銀河が出す電波強度がおよそ1037 erg s-1程度であるのに対して、電波銀河は1041~1046 erg s-1程度の電波を放射している。電波の放射源は活動銀河核(AGN)またはそこから噴出しているジェットが出すシンクロトロン放射である。母銀河の多くは楕円銀河である。第2次世界大戦後に強い電波源として電波で最初に発見され、のちに光学的同定によって銀河であることがわかったので電波銀河と呼ばれるようになった。クェーサーも参照のこと。

検出器の感度を表す指標の1つ。等価雑音パワー、あるいは英語でのnoise equivalent powerを略したNEPと表記されることも多い。具体的には、帯域1Hzで信号対雑音比が1となる入射電力のことであり、よく使われる単位はW Hz-1/2。主として遠赤外線検出器の性能を表す場合に用いられる。
電波天文学でよく使われる感度の指標である受信機雑音温度 TRXとは

$$T_{\mathrm{RX}} =\frac{\mathrm{NEP}}{\sqrt{2}k_{\rm B}\sqrt{B}} ~\mathrm{[K]}$$

で換算可能である。ここで、B は観測する周波数帯域幅、kB はボルツマン定数である。

活動銀河核を持つ銀河の一種で、1943年にセイファート(C. Seyfert)によって発見された。明るい核と、通常の銀河とは明らかに異なるスペクトルを持つ。セイファート銀河のスペクトルは、可視光から紫外線にわたる青い連続光成分と、電離ガスのさまざまな原子やイオンからの輝線が特徴である。セイファート銀河は、許容線の線幅の広い(数千から1万 km s-1)1 型と、狭い(数百 km s-1)2 型に分類できる。形態の観点からは、セイファート銀河は渦巻銀河であることが多いが、レンズ状銀河楕円銀河に分類されるものもある。

大量の大質量星が短期間に生成される現象。大質量星に焦点を当てた概念だが、通常の星生成と同様に小質量星も生まれる。典型的なスターバーストの星生成率は10-100 ${\rm M}_{\odot}{\rm y}^{-1}$、継続時間は 107-108(年)である。近傍の宇宙では数%の銀河がスターバーストを起こしており、それらはスターバースト銀河と呼ばれる。スターバーストが起きてしばらくすると大量の超新星が爆発し、強力な銀河風(スーパーウィンド)が発生する。多くの場合スターバーストは突然終了する。スターバーストを終えた銀河はポストスターバースト銀河と呼ばれ、A型星の卓越する特徴的なスペクトルを示す。

スターバーストが起きている銀河。2種類に大別される。中心部でスターバーストが起きている円盤銀河や合体銀河と、全域あるいは一部の領域でスターバーストが起きている青色コンパクト矮小銀河がある。後者は形態の観点から矮小銀河に分類される。銀河風を伴っているスターバースト銀河も多い。近傍ではM82が有名である。スターバースト銀河では、星から出た光の大部分がダストに吸収され、赤外線として再放射されている。そのため、スターバースト銀河の明るさの指標として赤外線光度が用いられることが多い。典型的なスターバースト銀河は1011 太陽光度以下だが、極めて明るいものも少数ながら存在する。1012 太陽光度以上のものは超高光度赤外線銀河(ULIRG)と呼ばれる。スターバーストを終えて間もない銀河は特徴的なスペクトルを示し、ポストスターバースト銀河と呼ばれている。

連続体が示す回転運動のうち、各部の角速度が同一なものを剛体回転と呼び、それ以外のものを差動回転という。差動回転する物体は剛体ではありえず、内部の各点間の相対位置は変わることになる。差動回転が観測されている天体には、太陽渦巻銀河などがある。かつては、英語のdifferential rotationを直訳(誤訳)した、微分回転という語が使われたこともあった。

原子核の中の陽子中性子を合わせた数のこと。元素の種類は陽子の数(原子番号)で区別されるが、同じ元素でも中性子の数が異なるものが存在する。これを同位体と呼ぶ。この同位体はその元素の質量数によって区別できる。たとえば原子番号6の炭素には、12C、13C、14Cなどの同位体がある。元素記号の左肩に書かれている数字が質量数を表す。核種も参照。

大質量星の超新星爆発が頻繁に起こり、スーパーウィンド(強力な銀河風)が吹いている銀河。スーパーウィンド銀河のガスは、大質量星からの紫外線による電離に加え、銀河風の衝撃波加熱によっても電離されるため、通常の銀河の電離ガスとは異なる性質を示す。一般に銀河風とは、銀河内にあったガスが超新星爆発や活動銀河核から運動エネルギーを得て銀河の重力を振り切って外部に流れ出す現象のことである。近傍のスターバースト銀河のかなりのものに銀河風の兆候が見られるほか、遠方の銀河にも銀河風を示唆するものがある。銀河風によって重元素を含む大量のガスが銀河間空間に流れ出すため、銀河だけでなく銀河間空間の進化にも大きな影響を与える。