天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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H2ガス

水素分子からなるガスのこと。星間分子ガスは水素分子が主成分となっているため、星間分子ガスの代名詞として、この言葉を用いることもある。

天文学では元素記号Xの中性ガスには添え字Ⅰを付けてXⅠと記し、1階電離、2階電離したガスに対してはそれぞれ、XⅡ、XⅢというようにして表す慣用がある。従って、水素ガスが電離している領域のことをHⅡ領域と呼ぶ。 電離水素領域の別名である。

宇宙ひもを参照。

ハービッグ-ハロー天体を参照。

ニュートリノを参照。

1階電離したカルシウムイオン起源のスペクトル線で、太陽の分光スペクトルで観測されるフラウンホーファー線の中で最も強く幅の広い共鳴2重線。静止波長はH線が396.8 nm、K線が393.4 nmである。H線やK線の名前はフラウンホーファー(J. von Fraunhofer)が命名したもの。H線やK線の太陽全体からの放射量は、太陽磁気活動周期と相関が強く、この関係は他の星の磁気活動周期を調べる際に使われている。

国際宇宙ステーションに設置された日本の実験棟。計画時にはJEM(Japanese Experiment Module)と呼ばれていた。打ち上げにはスペースシャトルが用いられ、2008年に船内保管室がエンデバー号で、同年船内実験室とロボットアームがディスカバリー号で、2009年に船外実験プラットフォームと船外パレットがエンデバー号でそれぞれ打ち上げられて完成した。
ホームページ:http://www.jaxa.jp/projects/iss_human/kibo/index_j.html

ニュートリノを参照。

アメリカ国立光学天文台が開発した、天文データ解析用ソフトウェアのこと。
光赤外天文データ解析のために広く用いられている。CLと呼ばれる独自のシェルの上で走るさまざまなコマンド群(IRAF内ではタスクと呼ぶ)からなり、基本的な画像処理タスク(画像表示、画像の演算、統計量の算出、画像合成など)に加えて、分光データ処理や特定観測装置(主にアメリカ国立光学天文台の所有する観測装置)のデータ処理タスクが集約されている。一般的な光赤外天体画像データの整約と解析はほとんどIRAFで行うことができる。IRAF本体はSPPと呼ばれるプログラミング言語で記述されている。CLはスクリプト言語でもあり、既存のIRAFタスクや外部プログラムなどを組み合わせたスクリプト(CLスクリプト)を作成して、IRAF内にタスクとして登録することができる。
IRAF関連ホームページ:https://noirlab.edu/science/data-services/software
https://iraf.net/
PyRAFホームページ:https://iraf-community.github.io/

大型望遠鏡の光軸ずれを補償するトラス構造。1948年に完成したパロマー天文台の口径5 mのヘール望遠鏡の設計に当たって、セルリエにより考案されたのでこの名前がある。鏡筒の中央枠体(センターセクション)に対して副鏡を支えるトップリングと主鏡を支える主鏡セルをそれぞれ4組の三角トラスで接合し、梁の剛性を調節して望遠鏡が傾いても両者のたわみ量を同じにして光軸ずれが起きないように工夫されている。

すばる望遠鏡の近赤外線撮像分光装置。観測波長は 0.9-5.6 μm で撮像、グリズム分光、およびエシェル分光(最高の波長分解能 =20000)の3つの観測モード持つ。1024x1024画素のインジウムアンチモン赤外検出器(ALADDIN-III)を撮像、グリズム分光とエシェル分光のそれぞれに使用している。すばる望遠鏡の補償光学(AO)を利用することが可能で、大気ゆらぎの影響を除いた撮像および分光観測ができる。当初は、カセグレン焦点に設置されていたが、36素子AOが188素子AOに更新されるのに伴いナスミス焦点に移設された。シリコンのイマージョングレーティング(高屈折率の媒質中で干渉させることにより同じサイズでも高い波長分解能を実現できる回折格子)を用いて最高波長分解能が7万のエシェル分光を実現する計画が進行中である。

ホームページ:http://subarutelescope.org/Observing/Instruments/IRCS/index.html

アンテナの性能を示す量の1つで、最高感度方向の感度を1として規格化したビームパターンを主ビームの範囲内だけ積分した値。仮に主ビームしかないアンテナを作ることができたならば、その主ビーム立体角は全ビーム立体角と等しくなる。全ビーム立体角も参照。

積分ザックス-ボルフェ効果の略号。ザックス-ボルフェ効果を参照。

アンテナの性能を示す量の1つで、最高感度方向の感度を1として規格化したビームパターンを全方位について積分した値。全方向について一様な感度を持つアンテナだと定義により全ビーム立体角は $4π$ になる。主ビーム立体角も参照。

原子核の放射性崩壊の一種で、原子のK電子殻(最も内側の軌道)にある電子が原子核に取り込まれ、原子核内の陽子と反応して中性子となり、同時に電子ニュートリノが放出される。この過程では、質量数は変化せず原子番号が一つ減少する。この放射性崩壊を起こす56Ni は7.6万年、56Kr は23万年の長い半減期を持ち、年代測定に用いられている。核宇宙年代学も参照。

分散量度のこと。この語「ディスパージョンメジャー」も広く用いられている。

統計誤差と同じ。

電波望遠鏡の主鏡面に対する感度分布。主として給電系の設計で調整する。一般に、光学系は電磁波の進行方向を逆向きにすれば受信と送信とが対称になる(光学の相反定理)ので、電波望遠鏡では送信用の用語を受信用に転用することが多く、この言葉も、送信時にアンテナに給電系から放射する電波強度分布という意味から転用されたもの。照射パターンによってビームパターン、特にサイドローブの生じ方が大きく影響される。

原子のエネルギー準位の近似的な計算方法。また、この近似法に従って分類されたエネルギー準位間の遷移の選択則のことを指す場合もある。ラッセル-ソーンダース結合ともいう。

電子の軌道角運動量とスピンの相互作用を含む相対論的な効果により、原子の軌道角運動量 L とスピン S は別々には保存されず、全角運動量 J = L+S が保存される。そのため、原子のエネルギー準位は全角運動量 J の値で指定しなければならない。しかし、原子番号が小さい原子の場合、電子の軌道角運動量とスピンの相互作用が、静電的な相互作用エネルギーに比べて極めて小さいため、すべての電子の角運動量 L とすべての電子のスピン S の値でエネルギー準位を近似的に分類することが可能となる。その結果、「許容線である電気双極子遷移において、S は変化せず、L が 0 または ±1 だけ変化する遷移が可能となる」という選択則が成り立つ。この選択則に従わない遷移は禁制線であるが、密度の低い電離水素領域などでは重要となる。

自然界に存在する四つの力のうち、重力を伝達する素粒子。グラビトンともいう。2025年時点では未発見である。