ヘテロダイン受信機の参照信号として、単一の周波数の電波を発生する信号源のこと。英語での頭文字をとってLOと略されることも多い。電波通信からの発想で、単一周波数の電波を無変調連続波(continuous wave)と呼び、その英語の頭文字からCWという(搬送波carrier waveの略だとする説もある)。
受信周波数と局部発振器の周波数の差が中間周波数信号の周波数となる。中間周波数信号の強度には局部発振器からの信号の振幅も影響するため、その変動を低く抑える必要がある。電波干渉計では、干渉のための基準信号にもなるため、全ての素子アンテナに配信される局部発振器信号は位相も一致している必要がある。
地球の周りを回っている人工衛星の軌道のうち、軌道傾斜角がほぼ90°となっているもの。極軌道にある人工衛星は、その公転周期が地球の自転周期と特別な関係にない限り、時間が経つと地球の全表面の上空を飛行することになる。したがって、地球表面のすべてを観測するためには都合のよい軌道である。
赤道儀式望遠鏡において、地球の自転軸と平行に設けられた回転軸のこと。軸の方向が天の北極と天の南極を指すことから、こう呼ばれている。望遠鏡を極軸周りに地球の自転と反対方向(東から西)に回転させることによって、地球の自転によって生じる天体の日周運動を追尾することができる。天体追尾機構は、極軸周りの定速回転機構のみで実現でき、簡便なものとなる。ただし、赤道上や極地域を除いて、極軸は地表に対して斜めに設置されるために、一般に機械構造的には不安定なものとなり、その支持機構や軸受けには相当の強度が要求される。
鏡を作る材料物質のこと。よく用いられる鏡材はガラスを基本としている。望遠鏡に用いる鏡材は、数十年に渡って安定であり、運搬や設置時に破損しない強度が必要である。また、加工や運用時の変形を小さく抑えるため、内部応力および熱膨張係数が十分小さくなければならない。望遠鏡はさまざまに変化する温度環境下で使用されるため、特に熱膨張係数が重要である。大型望遠鏡の主鏡素材として用いられているULE(超低膨張チタニウムケイ酸ガラス)、ゼロデュワ、クリアセラムZなどのガラス材は、常温でアルミニウムより三桁小さい熱膨張係数(温度変化1℃当たり膨張する割合が1億分の1程度)を持つ。すばる望遠鏡の主鏡はULEである。パロマー山の5mヘール望遠鏡の主鏡は、パイレックスという低膨張ガラスを使用しているが、これはボロシリケートと呼ばれるガラス材の一種である。ボロシリケートは安価かつ化学的に極めて安定で取り扱いやすいが、熱膨張係数はULEなどより二桁程度大きい。このため、大型望遠鏡では精密な温度管理が必要となる。
ガラス材以外にも、SiC(シリコンカーバイド)やベリリウムなどが、その高い剛性を生かして超軽量鏡を製作するのに使われている。両方の素材とも、熱膨張係数は大きく、また加工も難しいため地上望遠鏡で用いられることはほとんどないが、高い剛性と優れた熱伝導率は宇宙での使用に適しており、スペース望遠鏡用の鏡材として用いられている。反射望遠鏡、ゼロデュワも参照。
重力波検出器の一種。円柱型の弾性体を用い、重力波の通過によって励起される弾性体の共鳴振動を、ピエゾ素子を用いて電気信号として記録する。観測できる重力波の振動数は共鳴振動数付近に限られる。1969年ウェーバー(J. Weber)は約1000 km離れた2台の共振型検出器で同時事象が偶然によるものより多いと報告したが、各地の追試実験では重力波によるとみられる事象は確認されなかった。圧電効果も参照。
干渉フィルターの中でも、特に透過帯域幅の狭いフィルターを指す。透過帯域幅の広い広帯域フィルターはバンドパスフィルターとも呼ばれ、色ガラスフィルターや干渉フィルターで製作される。狭帯域測光を参照。
赤外線や紫外線観測など地球大気の影響で不可能な観測を行うために打ち上げるロケット。人工衛星のように地球周回軌道に乗るのではなく、弾道飛行を行うロケット自身に観測装置が搭載され、落下までの間に観測を行う。多くの予算と開発期間を必要とするスペース望遠鏡に比べて容易に大気の影響がまったくない高度100km以上にも到達できるが、弾道飛行のため観測時間は10分程度と短い。
ホームページ:http://www.jaxa.jp/projects/rockets/s_rockets/index_j.html
地球大気の吸収により地上の望遠鏡や施設では不可能または困難な赤外線や紫外線、X線、宇宙線などを気球に搭載した望遠鏡などで観測する手法。ヘリウムガスを用いる大型の気球で30km以上の高度に到達でき、高度10km程度の飛行機搭載望遠鏡では行えない観測も可能となる。観測ロケットや天文衛星(スペース望遠鏡)に比べるとわずかに大気の影響は残るが、大型(重量1トン程度)の望遠鏡や観測装置をスペース望遠鏡に比べると低額の予算で短期間に開発し、打ち上げできるのが大きな利点である。カイパー飛行機搭載天文台、成層圏赤外線天文台も参照。
屈折望遠鏡の一種で、対物レンズとして凸レンズを用い、接眼レンズに凹レンズを用いたものを指す。世界で初めての屈折望遠鏡は、この形式を用いて1608年にオランダで製作された。ガリレオ(Galileo Galilei、1564-1642)が製作し天体観測に使用したのが、この形式の望遠鏡であり、そこから一般にこの形式の望遠鏡をガリレオ式と呼んでいる。物体が正立像(上下左右が逆転しない像)として見えるが、視野が望遠鏡の倍率の2乗に反比例して狭くなり、視野周辺で大きな収差がある。したがって、あまり倍率の大きな望遠鏡は実用にならない。そのため、現在では天体望遠鏡としてこの形式が用いられることはない。ただし、光学系全体の長さを短くできる利点があり、オペラグラスなどでは採用されている。天体観測用屈折望遠鏡として実用になっているのは、接眼レンズにも凸レンズを用いたケプラー式望遠鏡である。ガリレオは、1609年に自ら製作したガリレオ式望遠鏡を月に向けて月面の観測を行った。これが記録に残る人類最初の望遠鏡による天体観測であった。
入射する粒子が持っている全エネルギーを測定するタイプの検出器の総称。物質中で電離や励起を起こさせ、検出器内ですべてのエネルギーを吸収させて測定する。高エネルギー粒子は電磁シャワーやハドロンシャワーなどのカスケードとして発達する粒子のシャワーを起こさせて、そのシャワーを完全に減衰させる必要があるため、金属板と粒子検出器をサンドイッチ状に重ねて用い、大きな物質量を得る方法も用いられる。
電磁波の干渉を用いて位相差を測定し、波長より短い光路差や波長自体を高精度で測定する装置。天文学では、光路差の測定から電磁波の到来方向を精密測定する装置として用いられることが多い。電波干渉計、マイケルソン干渉計、スペックル干渉計、ナル干渉計を参照。
イメージスライサーを参照。
望遠鏡を載せる台。形式により、赤道儀と経緯台に大別される。赤道儀には、イギリス式架台、ドイツ式架台、ヨーク式架台、フォーク式架台、ホースシュー式架台など多様なものがある。
補償光学系の構成要素で波面センサーからの光波面誤差の信号を得て、光波面の補正を行うため、表面形状を高速に可変駆動できる鏡。可変形状鏡とも言う。
連続薄膜鏡面の裏面に多数のバイモルフ型ピエゾ素子を配置した鏡や、多数の積層型ピエゾ素子で独立した部分鏡を駆動する方式、またMEMS素子を用いた小型で安価な方式などがある。可変形鏡とは方式が異なるが液晶による位相変調を利用した補正鏡もある。すばる望遠鏡では188素子のバイモルフピエゾ電極駆動の可変形鏡を開発し、実用化した。圧電効果も参照。
太陽系外惑星の重要な検出方法であるドップラー法では、観測される輝線や吸収線の波長が実験室での波長とどれだけずれているかを精確に測定する必要がある。この際、観測機器などに起因する系統誤差を小さくする代表的方法の一つとして、ガス吸収フィルターを用いる方法がある。これは、恒星の光を特定のガスを封入した容器(ガス吸収セル)に通して分光し、波長が安定したガスによる吸収線を恒星のスペクトルに重ね合わせ波長の基準とするものである。この基準に対する恒星の吸収線の波長変化を測定することにより、検出器の温度変化などによる見かけのスペクトルのずれを取り除くことができる。ガス吸収セルとしては用いられるガスによって、フッ化水素セル、ヨウ素を封入したヨードセルなどがある。
反射望遠鏡において、凹面の主鏡および凸面の副鏡を用いて主鏡の後ろ側(裏側)に結ばれる焦点のこと。カセグレン焦点の合成焦点距離は、一般に、主鏡の焦点距離の数倍から10倍程度となっている。主鏡、副鏡の二枚鏡で収差補正がなされるため、収差補正光学系を挿入しなくても比較的広い視野がとれる。放物面主鏡と双曲面副鏡を組み合わせたものを古典的カセグレン焦点(クラシカルカセグレ焦点ともいう)。古典的カセグレン焦点では球面収差はなく、視野を制限する最も大きな収差はコマ収差である。これに対して、球面収差とコマ収差の両方を打ち消すように、主鏡、副鏡ともに双曲面に近いが僅かに非球面項を入れた光学系による焦点をリッチー-クレチアン焦点(リッチー-クレチアン望遠鏡を参照)という。
カセグレン焦点(およびリッチー-クレチアン焦点)は、焦点に人が接近しやすく、望遠鏡重心に近く安定しており、多様な観測装置を装着することができる。このため、最もよく使用される焦点となっている。たとえば、すばる望遠鏡では、ロボット台車 CIAXを用いて、目的に応じて装置交換を行っている。カセグレン焦点の合成口径比(F比)は通常F/8-F/15であり、低分散分光や比較的高空間分解能の撮像観測に適している。また、斜め反射を用いないので、偏光観測にも適している。焦点(望遠鏡の)も参照。
縁の下の力持ち、観測装置交換用のロボット台車 CIAX
https://youtu.be/4q1HTegHoCQ
天体を観測するときに望遠鏡の追尾誤差を改善する手法。望遠鏡は駆動系などの不完全さから天体を完全にとらえ続けることができない場合が多い。その際に、目的の天体、もしくはその近くにある天体(ガイド星)からの光を利用して望遠鏡の追尾誤差を補正する。望遠鏡の指向方向が目的天体からずれると、ガイドカメラに写るガイド星の像もずれる。この像の移動から追尾のずれを計算して望遠鏡の駆動を補正する。この補正は“秒”程度の時間スケールで行う。これに対して、大気のゆらぎによっても天体像の揺れ(シーイングの一成分)が起こり、その時間は1/10秒程度と非常に速い。この揺れを減少させる方法をティップ-ティルト補正と呼び、望遠鏡全体の向きの修正ではなく、主に、光路上にある小さいミラー(ティップ-ティルト鏡)の向きを高速に駆動することによって行う。ガイド望遠鏡も参照。
観測に用いる望遠鏡に同架してガイドのために用いる口径の小さい望遠鏡。一般に口径が小さい望遠鏡は写野が広いため、ガイド星(案内星)を探しやすいというメリットがある。しかし、大型望遠鏡ではほとんどガイド望遠鏡を用いない。望遠鏡の焦点部で得られる写野のうち観測に用いない周辺部分の星像を利用してガイドを行う方法が主流である。口径の小さいガイド望遠鏡では、暗いガイド星は見えないからである。
空間的に離れた位置にある複数の望遠鏡(=開口)もしくは1つの望遠鏡主鏡の複数の部分(=開口)からの光を干渉させて得られる干渉縞から天体像についての情報を引き出すこと。少数の開口の組み合わせからでは、天体像の形状(強度分布)についての十分な情報が得られないが、その場合にはモデルの助けを借りて情報を推定する。「連星や円盤などの仮定をおいた複数のモデルについて、どれがもっともらしいか?」や、その連星間距離や円盤のサイズなどのパラメータを推定することができる。現在活躍している電波干渉計のほとんどは開口合成望遠鏡である。光干渉計、開口合成望遠鏡も参照。
現在の電波干渉計の主流となる、開口合成技術を利用した望遠鏡。相関型干渉計ともいう。開口合成望遠鏡を構成する各素子アンテナで受信した電波波形に対して、2個のアンテナを1組とした相互相関をとると、対応するアンテナ間での幾何学的遅延差に応じた位相差を反映しているため、位相差0となる方向からのずれが十分に小さい場合には、これが天球面上での輝度分布のフーリエ成分となる。これを1組のアンテナが作る基線に対するビジビリティと呼ぶ。多数の基線についてビジビリティを測定し、これを逆フーリエ変換することで、天体画像を得ることができる。ただし、実際には離散的な基線長しか実現できないため、何らかの方法で測定していないビジビリティを推定する処理が伴う場合がほとんどである。(u,v)面、超合成電波干渉計も参照。
