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Dn-σ 関係

楕円銀河の中の星の運動の速度分散 σ と一定の面輝度 n (mag/arcsec2) における銀河の直径 Dn との間の相関関係。1987年に、「七人の侍(Seven Samurai)」と称されたドレスラー(Alan Dressler)ら7人の研究グループによって提案されたフェイバーージャクソン関係(1976年)の改訂版である。楕円銀河に対する距離指標関係式として、宇宙の大規模構造、銀河の特異速度場、ハッブル定数の決定など幅広い分野の研究に用いられている。宇宙の距離はしごも参照。

太陽系外惑星のトランジット(トランジット法参照)中に、中心の恒星スペクトル線の波長が時間と共に偏移する効果。ロシター効果と呼ばれることもある。
自転している恒星を見ると、恒星面の半分は近づき、半分は遠ざかるので、ドップラー効果により近づく側から出た光は青方偏移、遠ざかる側から出た光は赤方偏移して観測される。一般に恒星表面を分割して観測することはできないので、この効果により恒星のスペクトル中の輝線や吸収線に幅がつく。
太陽系外惑星のドップラー法の観測において、トランジット時(トランジット法を参照)には惑星が恒星の一部を掩蔽するため、その部分の恒星の自転の効果がスペクトル線のドップラー偏移に現れる。すなわち青方偏移した側が隠されていると全体の平均としては偏移が赤い方にずれ、赤方偏移した側が隠されると平均の偏移は青い方にずれる。
中心星が太陽型星の場合の偏移のずれは、木星型惑星のサイズでは20 m/s程度、地球型惑星のサイズでは0.2 m/s程度となる。従って、巨大惑星のロシター-マクローリン効果を検出することは比較的容易である。太陽系外惑星で最初にこの効果が検出されたのは、ケロー(Didier Queloz)らによる2000年のHD209458bの観測である。この効果を用いて、逆行惑星や軌道面が傾いた太陽系外惑星が発見された。100個を超える太陽系外惑星のスピン(自転)-軌道間角度が報告されている。

 

褐色矮星の検出確認に使用された手法。0.06太陽質量以上の天体においては、リチウムは1億年以下で壊されて検出できなくなる。従って、リチウムが検出される超低質量星は0.08太陽質量より十分に軽く、水素の熱核融合反応を起こしていないとみなせるため、褐色矮星と確定することができる。これをリチウムテストと呼ぶ。最近はあまり使われていない。

太陽系外惑星の中で、スーパーアースより大きく、海王星型惑星より小さい惑星。質量はおよそ地球の10-30 倍、半径は地球の2-4 倍である。

太陽系外惑星の中で、質量は地球のおよそ10-30 倍、半径は地球の2-4 倍で、かつ公転周期が100 日以内の中心星に近い灼熱の海王星型惑星。存在頻度はきわめて低い。

エキセントリックプラネットのこと。

通常の太陽系外惑星とは異なり、恒星のまわりを周回しておらず孤立して存在する、質量が約13木星質量以下の(重水素の核融合が起きない)天体。自由浮遊惑星あるいは、質量に基づく定義から惑星質量天体と呼ばれることもある。英語ではfree-floating planet のほかに、planetary-mass object、rogue planet、interstellar planet などさまざまな呼び方がある。
浮遊惑星(惑星質量天体)の検出では、近くに明るい恒星がないため、高コントラスト観測よりも高感度観測が重要になる。また、低温度天体のため赤外線における探査が有効である。
最初の浮遊惑星は大朝たち(1999)によって、カメレオン座にある星形成領域の探査観測から発見された。撮像観測によって木星質量の数倍から13倍の天体が複数見つかり、その後、オリオン座、ペルセウス座、S106など様々な星形成領域で続々と報告された。これらは生まれたばかりの天体であるが、WISE衛星などの大規模近赤外探査観測から、太陽近傍において、太陽程度の年齢の天体も多数見つかってきており、太陽から近い星のリストは年々更新されている。現在では候補天体を含むと1000以上にのぼる。さらに、撮像観測だけでは天体の色を考慮しても背景銀河などの混入が避けられないことも指摘されており、候補天体の分光観測固有運動の測定なども重要である。すばる望遠鏡などを用いた分光観測では約6木星質量の浮遊惑星も確認されている。
一方、撮像観測とは独立に、重力マイクロレンズ法によっても浮遊天体の存在が示唆されている。重力マイクロレンズ現象とは、ある星(ソース星)の前を別の星(レンズ星)が横切ると、レンズ星の重力によってソース星からの光は曲げられてレンズの様に集光され、ピーク状の増光現象が観測されることである。増光期間はレンズ天体の質量の平方根に比例し、普通の星で約20日、木星質量では約1日になる。住たち(2011)は銀河中心方向の観測から、増光期間が2日以下の増光現象を10例検出し、それらが木星質量程度の浮遊惑星であることを示唆した。統計的には、銀河系天の川銀河)全体では少なくとも恒星の数と同程度数の浮遊惑星が存在する可能性も示している。
浮遊惑星の成因としては、通常の恒星や褐色矮星のように自己重力で収縮して形成される説と、恒星のまわりで惑星として形成され、それらが惑星系から飛び出したとする放出説に大別される。浮遊惑星として最初に発見された天体であるカメレオン座のOTS44は、アルマ望遠鏡ハーシェル宇宙天文台により原始惑星系円盤が付随している証拠も得られている。つまり、前者の、恒星のミニチュア版として誕生する説を支持するものである。最近、フランス・日本などのチームにより、大規模な撮像観測と固有運動を組み合わせて、さそり座の星形成領域で約100個の浮遊惑星が直接撮像により発見され、後者の放出説の可能性も提唱されている。

 

太陽系外惑星の間接検出方法の一つ。惑星が中心の恒星からの光を反射して見える場合、その惑星からの光は偏光している。一方、恒星からの光は無偏光なので、恒星と惑星を空間的に分解できない場合、両者からの光は混合されて、極めて小さな(10-6 程度以下)偏光を持ち、その大きさは惑星の公転の位相と共に変化する。この微小偏光とその周期的変化を検出するのが偏光法である。通常の偏光器では測定不可能な微小偏光のため、大気の揺らぎに伴う偽偏光や検出器の感度ムラによる限界を除く特別な偏光器が開発されている(英国ハートフォードシャー大学のPlanetPolなど)。この検出法に関しては、HD189733で初検出の報告があるが、別の望遠鏡・装置による観測では否定されている。

惑星の反射光を利用して惑星大気の性質を調べる手法。恒星からの光を惑星が反射している場合、惑星の公転運動と共に惑星反射光のスペクトルがドップラー効果で時間的に変化する。惑星大気中の特定の原子・分子に着目した場合、観測したスペクトルと公転運動から期待されるスペクトルとの相互相関(クロス・コリレーション)を取ることにより、その原子・分子の存在を確認することが可能になる。近年、原子・分子の精密なライブラリが揃い、大型望遠鏡において高分散分光観測が行われるようになり、惑星大気の検出に成功する例が増えてきている。

ハビタブルゾーンに位置する惑星をハビタブル惑星と呼ぶことがある。文字通りの意味では生命存在可能な惑星となるので、必ずしもハビタブルゾーンの位置とは関係がなくなく注意が必要であるが、慣用的に広く使用されている。

透過スペクトルによって太陽系外惑星の大気の性質を調べる手法。天文観測以外の通常の一般的な分光でも、測定する資料を透過した光を分光することを透過光分光、資料表面で反射した光を分光することを反射光分光という。

恒星の前面を惑星が横切り、トランジットを起こしている最中の恒星のスペクトルのこと(トランジット法を参照)。透過光スペクトルとも呼ぶ。透過スペクトルには惑星大気の上層を透過した光が含まれているため、トランジット以外の場合のスペクトルと精密に比較することにより、惑星大気の情報を引き出すことができる。これまで、巨大ガス惑星から地球型惑星(TRAPPIST-1など)までの透過スペクトルが観測されている。最初の例は、ハッブル宇宙望遠鏡のSTIS 分光器によるHD209458bからのナトリウムのD線(Na D線)の検出である。これは、ホットジュピターの大気にアルカリ金属が含まれる最初の証拠となった。この手法により、太陽系外惑星の大気中のさまざまな原子、分子、ダストの検出が報告されている。透過スペクトルを利用するこのような手法は透過光分光と呼ばれる。

太陽系外惑星の探査においては「第二の地球」の発見が重要なマイルストーンとされる。第二の地球という言葉にはいくつかの意味があることに注意が必要である。(1) 地球のような小さなサイズ(1.25地球半径以下)の惑星。これはケプラー衛星などで既に480個程度発見されている(ケプラー惑星)。(2) 地球質量程度の軽い惑星。惑星質量を決定するためにはドップラー法トランジット時間変動(TTV)が必要であるため、ほぼ地球質量程度の惑星はまだ20個程度しか発見されていない。(3) ハビタブルゾーンに位置する地球サイズの惑星。これは20個程度報告されている。このうち、地球に近いものが生命の兆候を探査する上で最も重要であり、現在の地球型惑星探査の中心課題となっている。(4) 狭義の第二の地球として、生命の兆候が発見された太陽系外惑星。このような天体はまだ発見されておらず、次世代望遠鏡の最大の課題の一つである。もちろん、これ以外のさらに別の定義も可能である(知的生命の兆候が存在する惑星など)。

スノーラインを参照。

半径が2地球半径以下で1.25地球半径以上の小型の太陽系外惑星を指すことが多い。質量では、約10地球質量以下、約1地球質量以上に対応する。太陽系には存在しない種類の惑星であるが、地球型惑星の形成過程と惑星の軌道移動の関係の理解に繋がるとともに、惑星大気の有無や組成という観点から生命居住可能な惑星環境を議論する上でも重要な天体となっている。2021年現在で約980個のスーパーアースが報告されている。

太陽系外惑星、特に、直接観測で発見された巨大惑星の成因を説明するモデルの一つ。恒星褐色矮星のように、超低質量コアが重力収縮し、孤立した超低質量天体を形成する場合に相当する。この場合、初期状態のエントロピーは高い。これは星周円盤において重力不安定性により一気に巨大惑星が形成されることに対応する(重力不安定性モデル)。これまで直接撮像法により発見された太陽系外惑星はホットスタートモデルに合致している。

 

太陽系外惑星、特に、直接観測で発見された巨大惑星の成因に関する議論に用いられるモデルの一つ。標準的な惑星形成理論では微惑星が先に形成され、ガス降着を経て巨大惑星が形成される。この、いわゆるコア集積モデルでは、初期状態のエントロピーは低く、ガス降着時の短い時間の間だけ光度が上昇する。そのため平均的な光度進化は平坦で、ホットスタートモデルのような比較的高い光度から減少してゆくという進化を示さず、コールドスタートモデルと呼ばれる。

太陽系惑星は、その自転軸と公転軸がなす角度は約10 度以内で一致する。また、標準的な惑星形成モデルによれば、恒星の自転軸と惑星の公転軸は一致し、かつ、同じ向きを持つと考えられる。この角度を天球上に射影した角度は、ロシター-マクローリン効果によって測定できる。トランジット時(トランジット法を参照)には惑星が恒星の一部を隠すため、その部分の恒星の自転の効果がスペクトルに現れるからである。最初にロシターーマクローリン効果が観測されたHD209458の観測では、その惑星は順行していることが示された。しかし、HAT-P-7b については、2009年の成田憲保ほか、Joshua Winnほかによる独立な観測で、この角度が約180度、すなわち公転面が自転軸にほぼ垂直で、自転と逆向きに公転している(逆行している)太陽系外惑星であることが発見された。また、順行でも逆行でもない傾いた軌道を持つ惑星も多数発見されている。逆行惑星や傾いた惑星は、複数の惑星系同士の相互作用などによる軌道変化で形成されたと考えられている。

アメリカ航空宇宙局(NASA)のケプラー衛星が発見した太陽系外惑星のこと。一般に、トランジット法による太陽系外惑星の検出では偽陽性である場合も含まれるので、追加観測などによる確認が必要である。ケプラー衛星が発見した惑星候補は遠方にあるものが多い。そのため、確認済みケプラー惑星と惑星候補に分かれており、それぞれ約2700個と2100個(合計約4800個)が報告されている。

ガス吸収セルあるいはガス吸収フィルターとも呼ばれる。高分散分光器を用いたドップラー法による太陽系外惑星の検出では、波長を高精度で測定する必要がある。恒星のスペクトルと、同じ経路に置かれた特定のガスのスペクトルとを同時に比較することによって波長を校正し、波長シフトの測定精度を向上することができる。地球大気の吸収線を用いた波長校正よりも大気変動の影響は大きく抑えられる。また、大気揺らぎが分光器に及ぼす星像の形の変化なども抑えられる。
太陽系外惑星検出用のガスセルは、カナダのキャンベル(Bruce Campbell)とウォーカー(Gordon Walker)が開発したもので、これによってドップラー法の太陽系外惑星観測が初めて実用的なレベル(約13 m/s)に達した。彼らはフッ化水素 HF(Hydrogen Fluoride)を用いたが、これは有毒で扱いにくく、使用波長範囲や長い透過長が必要なことなど問題点が多かった。その欠点を補う形で使われたのがヨードセルである(ヨードはヨウ素 -元素記号I- の一般名称)。ヨードセルは室温で使え、10-20 cm の透過長でも十分な吸収線が見える。ヨウ素ガス(I2ガス)はセルを溶かさず、有害でもなく、圧力シフトも小さい。gasこれらの理由で、HF セルは現在では使われず、I2セルが可視光校正法のひとつの主流となっており、ガスセル法自体もヨードセル法と呼ばれることが多い。