クェーサーを参照。
クェーサーを参照。
重力下にあるプラズマ中の磁束管には、磁束管を浮上させる向きの磁気浮力と、これを邪魔する磁気張力とが働いている。プラズマ中の乱れによって磁束管の一部がアーチ状に浮上すると、この部分にあったプラズマは磁束管の中を流れ落ちて行くので、アーチ内のプラズマ密度は小さくなって磁気浮力が増大し、この段階で磁気浮力が磁気張力を上回れば、アーチ部分はさらに浮上して行くことになる。これをパーカー不安定という。最初から磁気浮力が磁気張力を上回っている場合でも、磁束管の一部が先に上昇するとこの部分はさらに上昇して行くことになる。
活動銀河核のスペクトルに見られる幅の広い(数千km s-1)許容線の源となっている領域のことで、降着円盤からの紫外線によって電離されたガスでできていると考えられている。領域の大きさは0.1パーセク(0.1 pc=0.3光年)以下と極めて小さく、ガスの数密度は 1010 cm-3から 1011 cm-3と高い。活動銀河核の連続光強度(降着円盤から直接出た光)が時間変化すると、それにやや遅れて広輝線領域の輝線強度も変化する。この時間のずれから広輝線領域の大きさや形状を推定できる。これを反響マッピングという。スペクトルに幅の広い許容線の見られる活動銀河核は1型AGNと呼ばれている。狭輝線領域も参照。
銀河バルジを参照。
最も明るい部類の活動銀河核(AGN)。もともとは、恒星(点源)のように見える天体(quasi-stellar object)という意味の英語から作られた造語であり、日本語では準星あるいは準恒星状天体と訳されることもある。現在は、電波強度の大小に関わらず、可視で明るい(一つの基準として、絶対等級が-23等以下)活動銀河核はすべてクェーサーと呼ばれる。
クェーサーの画像から点源成分を差し引くと母銀河の姿が確認できる。最初に同定されたクェーサーは赤方偏移z=0.158にある3C273という電波源で、1962年のことである。2017年時点で知られている最も遠いクェーサーの赤方偏移はz=7.085である。クェーサーはz=2の頃に最も多く存在したことがわかっている。他の活動銀河核と同様、クェーサーもスペクトルの特徴に基づいて、1型AGNと2型AGNに分類される。クェーサーの中心部には1億太陽質量を超えるブラックホールがあると推定されている。
クェーサーのスペクトルには、クェーサーとわれわれの間にある銀河や銀河間物質についての貴重な情報が吸収線として刻みこまれている。クェーサー吸収線系の研究やガン-ピーターソン検定によってその情報が読み解かれている。活動銀河核統一モデルも参照。
米国によって運用されている衛星測位システム。英語ではGlobal Positioning System、略してGPSと呼ばれる。約30個のGPS衛星が打ち上げられており、同時に4機のGPS衛星からの電波を受信すると、自分自身の地球上の位置を正確に知ることができる。もともとは米国の軍事用のシステムであったが、現在では非軍事の用途にも広く利用されており、カーナビゲーションや携帯電話への組み込みなど急速に普及している。
時刻 tj に衛星から発信した電波を時刻 T に観測者が受信したとすると、衛星から観測者までの距離は ρj = c (T-tj) となり、3衛星からの信号を受信すれば位置を決定できるように思われる(c は光速度)。しかし、実際には tj は衛星の時計で、T は受信機の時計で記録されるため、両者のずれ ΔT だけ異なる値となる。3衛星でなく4衛星の信号を受信するのはこのずれを求めるためであり、それにより位置だけでなく時刻も正確に知ることができる。時刻標準、報時信号も参照。
クェーサーのスペクトルに見られる多数の吸収線を指し、われわれとクェーサーとの間の宇宙空間にある物質がクェーサーからの光を吸収することによって起こる。特に、ライマン系列のライマンα(アルファ)輝線よりも短い波長側には、宇宙空間にある水素原子起源の多数の吸収線が見られ、同様に炭素やケイ素の輝線よりも短い波長側には、宇宙空間にあるこれらの元素起源の吸収線が見られる。このような吸収線系を観測することによって、宇宙空間にある水素原子の電離状態や重元素の組成に関する情報が得られる。
これらの吸収線は中性水素原子の柱密度の違いによって、ライマンα雲(1017 cm-2 より小さい)、LLS(1017-1020 cm-2、DLA(1020 cm-2 より大きい)と呼ばれる。銀河間物質も参照。
活動銀河核のスペクトルに見られる幅の狭い(半値全幅が数百km s-1程度)許容線・禁制線が放射される領域。英語の頭文字を取ってNLRとも呼ばれる。中心エンジン(降着円盤とコロナ)からの極紫外線(EUV)〜X線を含む電離連続光により光電離されたガスからなると考えられている。領域の大きさは100パーセク(100 pc=326光年)程度とかなり大きく、ガスの温度は約1万 K、数密度は 102 cm-3 から 104 cm-3 程度である。スペクトルに幅の狭い許容線だけが見られる活動銀河核は2型AGNと呼ばれている。広輝線領域、活動銀河核統一モデルも参照。
特に活動銀河核を持つ銀河を指して言う用語。代表的なものとしては、セイファート銀河、電波銀河、クェーサー、とかげ座BL型天体などがある。詳細に観測すれば多くの銀河に大なり小なり活動性が認められるため、活動銀河とそうでない銀河の区別は曖昧である。銀河の中心にあるとされる大質量ブラックホールに周囲からガスが落ち込んで降着円盤が作られれば、活動銀河になると考えられている。スターバースト銀河や青色コンパクト銀河も活動銀河に含めることもある。
銀河の中には、中心部の非常に狭い領域から銀河全体を凌駕するような強い電磁波を放射しているものがある。このような銀河中心部領域を活動銀河核(しばしば AGN と略称される)といい、活動銀河核を持つ銀河を活動銀河という。活動銀河核から放射される電磁波は電波からX線(場合によってはガンマ線)までの広い波長域に及ぶ。ジェットを伴っているものもある。セイファート銀河、電波銀河、クェーサー、とかげ座BL型天体などは活動銀河の一種である。活動銀河核の莫大なエネルギーは、核の中心にあるとされる大質量ブラックホールに周囲の物質が降着して降着円盤を作り、重力エネルギーが解放されることで生まれると考えられている。多様な活動銀河核を降着円盤を見込む角度の違いで説明しようという活動銀河核統一モデルが提案されている。バルジの質量と大質量ブラックホールの質量に強い相関があることなどから、銀河の進化と活動銀河核の進化は密接に関係していると考えられる。
活動銀河核は、スペクトルにみられる許容線の線幅に基づいて2つのタイプに大別される。1つは半値幅が数千km s-1 と広いもので、1型AGNと呼ばれている。もう1つは半値幅が数百km s-1 程度しかないもので、2型AGNと呼ばれる。これらの特徴的な幅の許容線は、広輝線領域と狭輝線領域という、別々の領域から出ていると考えられている。なお、1型と2型という分類はもともとはセイファート銀河に対してなされたものだが、電波銀河やクェーサーも同じように分類できる。活動銀河核の統一モデルとは、1型と2型AGNの性質を統一的に説明しようとするモデルである。
このモデルでは、降着円盤と広輝線領域を取り巻くようにトーラス状の吸収体があると考え、トーラスの穴の方向に狭輝線領域が形成されているとするトーラスを上から見ると広輝線領域が直接見えるので1型として観測され、横から見ると広輝線領域がトーラスに隠されてしまい狭輝線領域しか見えなくなるので、2型として観測される。このモデルは、線幅の違い以外のAGNの性質も幅広く説明できることがわかっているが、AGN間の電波強度の違いをうまく説明できないなどの問題点も残されている。
年周視差を参照。
地球大気中の分子による大気吸収や大気散乱を受けた電磁波が、地上にまで到達する割合をいう。散乱を無視して、大気吸収率と大気透過率を合わせて100%とすることもある。大気減光も参照。
核反応の進行速度を、プラズマの密度と温度により表した関数。2つの原子核の衝突による反応の場合、体積あたりの反応率は $n_1 n_2 f(T)$ の形にまとめられる。ここで$n_1$と$n_2$ は反応する原子核の数密度である。温度 $T$ の関数である $f(T)$ は、原子核の相対運動のエネルギー $E$ の関数として表される反応断面積 $\sigma(E)$ を、原子核の相対運動の速度分布関数を表すマクスウェル-ボルツマン分布で平均して求める。反応が共鳴型であるか非共鳴型であるかにより、反応率の温度依存性は異なる。共鳴型では衝突する2つの原子核がある特定のエネルギーをもつ場合だけ反応率が高いので、
$$f(T)\sim A T^{-3/2} \exp\left(-Q/T\right)$$
となる。これに対し、非共鳴型の反応が主である場合は
$$f(T)\sim A T^{-2/3} \exp\left(-\alpha T^{-1/3}\right)$$
となる。ここで $A$ と $\alpha$ は定数、$Q$ は共鳴状態のエネルギー準位を表す。
電磁波に対して、大気吸収の小さい波長帯・周波数帯のこと。特に、可視光(波長0.35-1μm)と電波(波長1mm-30m、周波数10MHz-300GHz)は連続して大気吸収が小さいため、単に大気の窓と言えば、これらを指すことが多い。可視光側を可視光の窓、電波側を電波の窓と呼ぶこともある。大気の窓になっていない波長帯での観測を行うには、基本的には地上を離れて大気圏外から観測する必要がある。
大気の窓が生じるのは地球大気中に大量に含まれる物質の電磁波の透過・吸収・散乱に対する特性が波長によって異なることが原因である。このため、特に、上記の2つの窓の間は連続して大気吸収が大きいわけではなく、比較的狭い波長帯で大気吸収が大きく変動することに注意。波長/周波数域ごとの主な原因物質は以下の通り。
10MHzより低周波数、すなわち、30mより長波長は、大気上層部にある電離層が原因である。ここにある自由電子が低周波数の電磁波を効率的に反射・吸収してしまうため、この波長帯の電波は宇宙から地上まで届くことがなく、天体観測が未着手な波長帯であるといえる。オーストラリア南東部のタスマニア上空は他よりも電離層中の自由電子密度が低く、大気の窓が低周波数側まで伸びているとされ、20MHz帯の観測は主にここからなされている。
電波の窓と可視光の窓の間の波長域は地球大気中の分子による吸収・散乱によって生じる。酸素分子や水蒸気、二酸化炭素によるものが顕著。水蒸気は地表にある水分が気化することで供給されるため、海抜や気温、地表の気候条件に大きく影響される。このため、この波長帯での観測を行うには海抜が高く、乾燥地あるいは寒冷地であるために上空の水蒸気が少ない場所での観測が望ましい。それでも不十分な場合は航空機や大気球ないしは人工衛星に搭載した望遠鏡による観測が必要になる。
可視光の窓より短波長側は100nm程度までは、地球大気の分子、特に窒素分子と酸素分子、および、酸素分子が紫外線を吸収することで発生するオゾンによる吸収で生じる。さらに短波長であるX線領域まででは、大気中の分子が乖離したり、それを構成する原子が電離したりすることで大気吸収が大きくなり、ガンマ線領域になると大気を構成する原子核などと衝突し散乱されるため、やはり地上での直接観測は不可能となる。ただし、ガンマ線領域では、大気上層部での衝突によって大気の原子・分子が影響されて発生する可視光を地上で観測することが可能であり、これによって大気の窓とは関係なく、間接的に観測することはできる(大気チェレンコフ望遠鏡)。
電波の窓の短波長側では、22GHz付近は水蒸気、60GHzや120GHz付近は酸素分子による大気吸収が極めて大きく、この辺りはどんな望遠鏡を使っても地上から観測することはできない。
逆に、可視光の窓の長波長側は、波長1-20μm にかけて不連続にいくつかの大気の窓が存在する。この波長帯は近赤外線と呼ばれる。近赤外線での大気の窓は、短波長側から z, J, H, K, L, M, N, Q バンドと呼ばれる。このため、ほとんどの場合、これらの大気の窓に対応して測光システムが定義されており、両者のバンドの名は同一のものを用いる。なお、Kバンドについては、定義の当初用いられていた波長帯では大気吸収の影響が大きいことが指摘され、その長波長側の端を除いたバンドとして新たにKsバンドが定義され、近年ではKバンドに代わって用いられている。
より長波長の領域は遠赤外線と呼ばれ、電波の窓の波長範囲までは大気透過率が極めて低く、地上からの観測はほぼ不可能である。
なお、大気吸収量の値が大きくとも、周囲の波長帯に比べて吸収が少ない波長範囲が存在する場合、そこを指して大気の窓と呼ぶ場合もまれにある。
ハッブルが提唱した音叉図で示される銀河の分類系列。ハッブル分類を参照。
一般的にはオーロラや雷のほか、流星や高エネルギー宇宙線による発光などを含む大気中の発光現象の総称。天文学でいう大気発光は、太陽からの紫外線などにより励起された地球大気上層部の分子や原子の発する光(大気光とも呼ばれる)を指す。特に波長2μm までの近赤外線で上空のOH基の発する大気光(OH夜光)は、非常に強い夜天光として地上からの近赤外線観測の妨げとなっている。
高温で起きる核融合反応。天文学では一般に星の中心核や、高エネルギー天体現象に伴う高温で起きる核融合反応を指す。
空気の屈折率の変化に起因する大気差は波長によって異なるため、波長による天体の見かけの位置のずれ、すなわち天体の色のにじみとして観測され、これを大気分散と呼ぶ。大気分散は低高度であるほど大きく、可視光での低高度の観測時などでは、使用するフィルターの中心波長と波長幅で決まる大気分散量が、大気ゆらぎを含む観測システムの角分解能を上回る場合、大気分散補正光学系と呼ばれるプリズムを用いて光学的に補正する必要がある。
