可視光では暗く、赤外線で明るく輝く星や点源のこと。
分子雲中で濃いガスに埋もれた赤外線点源と呼ばれる形成途上の星や、褐色矮星などが赤外線星である。
スペクトル線の観測からそれとわかる連星。2つの星が分離して観測できなくても、スペクトル中に複数の恒星からのスペクトル線が観測され、その波長が周期的に変化することから確認される場合があり、それらは二重線分光連星と呼ばれる。また、実質的に明るい星のスペクトル線しか観測できない場合でも、その波長の周期変化から伴星の存在を認識できることもあり、その場合は単線分光連星と呼ばれる。実際には多くの場合は単線分光連星である。星の視線速度を、周期変化の解析から得られる位相に対してプロットしたものは視線速度曲線と呼ばれる。1889年に、ドイツのヘルマン・フォーゲル(H.Vogel)とアメリカのエドワード・ピッカリング(E. Pickering)によって、独立に発見された。
連星を参照。
星間物質を参照。
解離を参照。
励起を参照。
星間空間を電磁波が、伝搬する途中で星間空間の物質に吸収されること。
実際には物質による吸収と散乱があり、その両方の効果を合わせて減光と呼ぶ。星間吸収を星間減光と同じ意味に用いることもある。
銀河の中の空間で、個々の星の影響が強く及ぶ近傍を除いた部分を指す言葉。星間物質、星間媒質も参照。
個々の物質の特性に依存しない方法で定義した温度で、単位はケルビン(K)。
熱力学を基礎として、古典論的には原子や分子の熱運動がゼロとなる温度が 0 Kである。1968年の国際度量衡総会で水の三重点(0.01℃)を 273.16 K と定義したので、日常使われる摂氏温度との換算は、
絶対温度(K) = 摂氏温度(℃) + 273.15
となる。天文学では特に断らないかぎり、温度は絶対温度を表す。
主に、変光星について、その変光周期と平均光度の間で成り立つ法則。脈動変光星であるセファイドやミラ型変光星での法則が有名。脈動変光星では、恒星の内部構造の不安定性が変光の原因となっていることを考えると、このような関係が説明できる。周期-光度関係を用いると変光周期から光度(したがって絶対等級)を求めることができるので、それと見かけの等級を比較することで、変光星までの距離を求めることができる。
マゼラン銀河中のセファイドに対してリービットにより発見されたセファイドの周期-光度関係(図1)は、銀河までの距離、ひいてはハッブル定数、を決める最も基礎となる距離指標である。それは宇宙の距離はしごの主要な構成要素なので、その精度を高める観測的研究は現在まで活発に継続されている。
マドア(B.Madore)とフリードマン(W. Freedman)は1991年に、マゼラン銀河中のセファイドに対して、可視光から近赤外線に渡る多波長観測をまとめて、当時の集大成とも言える周期-光度関係を導いた(図2)。波長が長くなるにつれ、周期-光度関係の振幅は小さくなり、傾きは急になり、関係式の周りのばらつきは小さくなる。高精度の距離決定には近赤外線での観測が有利であるが、振幅が小さいので発見は短波長の方が有利である。図3は大マゼラン銀河中で、1999年時点で10回以上の観測がある33個のセファイドの周期-光度関係である。
マドアとフリードマンらは2017年には、ヒッパルコス衛星のデータ等から高精度の距離が求まっている59個の銀河系(天の川銀河)中のセファイドに対して可視光から近赤外線の6バンドで周期-光度関係をまとめた(図4)。関係式の周りのばらつき(σ)が図2より小さくなっている。図2、図3、図4から求まる周期-光度関係の式とその周りの分散(σ)を図5に掲げてある。周期-光度関係の式に色指数を含めて、周期-光度-色指数関係を作るとばらつきが小さくなることが知られている。2017年のVバンドの周期-光度-色指数関係ではばらつきがわずかに0.06等級となるものもある。2024年には、スピッツァー宇宙望遠鏡による中間赤外線データを用いた周期-光度関係も報告されている(図6)。
ある量子状態にあるガス構成粒子(原子、分子)が他の粒子と衝突し、その結果として別の量子状態に移る確率を表現する係数。時間の逆数の物理次元を持つ量として定義される。具体的には、
1 衝突粒子の数密度
2 衝突してくる粒子の平均入射速度
3 衝突断面積
以上3つの積
標的に向けて粒子が1つ入射する場合、無限遠での入射速度ベクトルが示す直線から標的までの距離のこと。標的と粒子との間に力がまったく働かなければ、両者の最接近距離となる。慣例的に変数
一定方向に伝搬する電磁波が物質による吸収(星間吸収)や散乱を受け、前方に到達する電磁波のエネルギー総量が減少することを減光と呼ぶ。
星間空間を伝搬する波長
分光連星のうち、明るい方の星のスペクトル線のみ観測されている単線分光連星においては、視線速度曲線の解析から得られるのは星の質量ではなく、2つの星の質量に関する次の量となり、f(M)を質量関数と呼ぶ。
ここで、M1, M2 は主星と伴星の質量、i は軌道面の傾きである。 連星も参照。
標的と考えられる粒子に対してもう1つの粒子を入射するとき、両者の間で発生する相互作用の発生確率を評価する指標で、面積の物理次元を持つ。相互作用の程度が標的と入射粒子の距離で変わる場合には、相互作用の強さを対応する断面積の重みを付けて積分した量で定義する。入射粒子が空間的に均質で時間的にも一定の割合で入射する場合には、入射粒子が単位時間に単位面積あたりに降り注いでくる数(流束、あるいはフラックス)に対する相互作用の発生数の比例係数と考えても良い。主に原子分子の衝突など量子力学が対象とするスケールで論じられる物理量だが、古典力学的には「標的が及ぼす相互作用の範囲が有限で、その内外で衝突が発生するか否かが決まる」というイメージでの幾何学的断面積に対応する概念である。衝突係数も参照。
電離を参照。
一般の星間空間における選択減光のスペクトルのこと。
星間減光の波長依存性、すなわち選択減光の波長依存性を表す曲線のこと。通常は、縦軸を規格化された星間減光
星間減光の主な原因である星間ダストの性質を反映しているため、天の川銀河(銀河系)内でも視線方向によって星間減光曲線はわずかに異なる。また大小マゼラン銀河の減光曲線は天の川銀河のものとは少し異なる。
励起を参照。
銀河団の規模を表す指標で、エイベル(G.O. Abell)が、エイベルカタログで導入した。銀河団の中で3番目に明るい銀河の等級とそれから2等級暗いところまでの等級範囲に入る銀河の個数によって定義され、0-5までの6段階に分けられ、数字が大きいほど銀河団の規模が大きくなる。0は30-49銀河、5は300個以上である。最も明るい2つの銀河を除外したのは、前景の銀河がたまたま銀河団に重なって紛れ込む影響を避けるためである。