天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3300語以上収録。随時追加・更新中!専門家がわかりやすく解説します。(すべて無料)

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ドーム(望遠鏡の)

 

望遠鏡ドームは、地上望遠鏡およびその観測装置を、太陽光、風、雨、湿気、雷、大気中の塵やゴミなどから保護する役目を持つ。観測時には望遠鏡の駆動を妨げず、観測可能なあらゆる天域に望遠鏡が向くことが可能なように設置されている。このため、望遠鏡ドームは一般に上部構造と下部構造に分かれている。上部構造は望遠鏡を覆う中空構造となっており、360度水平旋回可能で開閉可能なスリットを有している。回転する上部構造を持たず、観測時には望遠鏡指向範囲から完全に退避してしまうもの(スライディングルーフ式)もある。下部構造は上部構造を支えるビル構造部分からなる。下部構造には観測制御室や実験室、大型の観測装置などが置かれることが多いが、近年は、ドーム内の熱環境改善のために熱源となる構造物、特に人の居住空間は設置しないのが一般的になりつつある。
望遠鏡や観測装置のメンテナンスのためには、望遠鏡周囲に広い空間が確保されていると都合が良い。しかし、そのような空間を確保しようとすると、ドームが巨大化するとともにドームの熱容量が増大し、ドーム内が外気に追随しにくくなり、シーイングが悪くなる。ドーム内や望遠鏡が外気よりも暖かいと観測中に上昇気流が生じ、それが外気の冷たい空気と混じり合うことでシーイングを劣化させる。したがって、近年ではドームと望遠鏡の熱容量をできるだけ小さくし、さらに観測中には積極的に外気を取り入れて外気と速やかになじませること(フラッシングと呼ぶ)に注力するようになっており、ドームはできるだけコンパクトな構造にすることが主流である。
よりシーイングを向上させるために、ドーム構造を工夫してドーム内に空気が層流となって流れるようにしたものもある。具体的な例として、すばる望遠鏡新技術望遠鏡(NTT)で採用されている茶筒型のドームがある。次世代の超大型望遠鏡になると、望遠鏡主鏡に直接当たる風による主鏡変形が非常に深刻な問題となってくる。このため、たとえばTMT計画では、望遠鏡に当たる風を最小限にするためにキャロット型と呼ばれるドーム構造を採用することが考えられている。計画されているTMTドームでは、望遠鏡主鏡に直接風を当てずにフラッシングを行うために、ドーム側面にいくつもの窓を設けている。

日本とオーストラリアの共同によりオーストラリアのウーメラ近郊の砂漠地帯に設置された大気チェレンコフ望遠鏡。第1世代は3.8 m口径で1992年から、第2世代は10 m口径で1999年から、第3世代は10 m口径4台のシステムとして2004年から観測を開始した。南天の利点を生かして超新星残骸などのTeVガンマ線天体を発見した。2012年に運用を終了した。

標高4200 mのハワイ島マウナケア山頂で、カナダ、フランス、およびハワイ大学が共同で運用する口径3.6 mの望遠鏡。完成は1979年で、マウナケア山頂に最初に建設された4 mクラスの大型望遠鏡である。
ホームページ:http://www.cfht.hawaii.edu/

スペイン領カナリア諸島のラパルマ島山頂地域(2267 m)に建設された有効口径10.4 mの望遠鏡。スペイン語の名称(Gran Telescopio Canarias)からGTCあるいはGranTeCanと呼ばれることもある。ハワイのケック望遠鏡の設計をもとにしている。スペイン、メキシコ国立大学、フロリダ大学の国際協力で建設され、2009年7月に、スペイン国王夫妻らが参列して完成式典を開催した。
ホームページ:http://www.gtc.iac.es/


GRAN TELESCOPIO CANARIAS VERSUS IAC LA PALMA TIMELAPSE

カナリー大型望遠鏡とラ・パルマ島の望遠鏡群のビデオ

 

https://youtu.be/MopKAf1Ydgo

アメリカ、イタリア、ドイツの国際協力事業で設立された大型双眼望遠鏡会社(Large Binocular Telescope Corporation: LBTC)が、アリゾナ州グラハム山(3200 m)に建設した2つの8.4 m望遠鏡を組み合わせた大型望遠鏡。LBT天文台本部はアリゾナ州ツーソンにあるアリゾナ大学の構内にある。2005年に単体の望遠鏡がファーストライトを実現し、2008年に双眼でのファーストライトに成功した。2025年現在のLBTCの加盟機関は、アリゾナ州の3大学、イタリアの国立天体物理研究所(INAF)、ドイツの5研究所、オハイオ州の4大学の計13機関である。

LBTは、口径8.4 mの主鏡を有する全く同じ望遠鏡2台を1つの経緯台に並べて載せて、口径11.8 m相当の集光力を有する望遠鏡とするものである。主鏡の口径比はF/1.14と極めて明るいので鏡筒が短く、望遠鏡全体と建屋が極めてコンパクトになっている。双眼鏡形式にして、2台の望遠鏡を干渉計とするところに設計のユニークさがある。二枚の主鏡は中心間が14.4 m離れており、主鏡の端まで含めると干渉計としての基線は22.8 mとなる。

LBTは多数の焦点で観測出来る。各鏡筒先端の主焦点2ヵ所、副鏡を用いる2ヵ所のグレゴリー焦点(各主鏡の裏)、平面の第3副鏡を利用する複数のベントグレゴリー焦点(主鏡のすぐ上で望遠鏡構造の中央)がある。副鏡や観測装置のいくつかは6本の可動アームを利用して短時間で交換できる。補償光学機能を有する副鏡と干渉計を組み合わせた大型双眼望遠鏡干渉計(LBT Interferometer: LBTI)は、赤外線領域での高解像度、低熱雑音、高感度を実現する基幹装置である。観測装置としては、主焦点の広視野大型双眼カメラ(The Large Binocular Cameras : LBC)、多天体分光器(MODS1/2)、赤外線の分光器/カメラ(LUCI 1/2)、大型項分散分光器(PEPSI)、中間赤外線カメラ(NOMIC)、コロナグラフ付き赤外線カメラ(LMIRcam)などがある。

ホームページなど
https://www.lbto.org/
https://www.lbto.org/instruments-overview/
https://nexsci.caltech.edu/missions/LBTI/

光線の軌跡を追いかけて光学系を論じる幾何光学に対し、マクスウェル方程式を用いて、光の波動としての性質を考慮し、光の干渉、回折偏光散乱を取り扱う手法を指す。物理光学ともいう。

負の宇宙定数を持ったアインシュタイン方程式の真空解。ド・ジッター宇宙も参照。

KAGRA大型低温重力波望遠鏡を参照。

1平方キロメートル電波干渉計を参照。


Square Kilometre Array (SKA) Official Animation

https://youtu.be/8BBoDw2qVD0

スペインのロケデロスムチャーチョス天文台にある口径4.2 mの望遠鏡。1987年に完成した。建設計画はグリニッジ王立天文台が中心となり、望遠鏡本体の製作はイギリスのグラブ-パーソンズ社が行った。完成時には、世界第3位の口径であり、可視光望遠鏡としては、経緯台方式の駆動を成功させた実質上最初の大型望遠鏡であった(1976年にロシアで建造された口径6mの望遠鏡も経緯台方式を採用したが、所期の性能を実現できなかった)。現在WHTは、同天文台にある2.5 mのアイザックニュートン望遠鏡(INT)、1 mのヤコブス・カプタイン望遠鏡(JKT)とともに、アイザックニュートン望遠鏡群として、イギリス、オランダ、スペインの共同組織が運用している。
ホームページ:http://www.ing.iac.es/

2組の異なる色指数を縦軸と横軸にして表した図。右図は色指数 U-B と色指数 B-V を用いた標準的な例、どちらの色指数とも数値が大きいほど「赤い」と表現する。スペクトルエネルギー分布のおおまかな形状を判断する際に用いられる。主系列星などの星は二色図上では特定の曲線にほぼ沿って分布するため、観測された天体の種類の判断や星間減光量などを推定することが可能である。また、クェーサーライマンブレイク銀河などの特異なスペクトルエネルギー分布の形状を持つ天体を探す際にも利用される。

南米チリのアンデス山脈の中、標高5000mのチャナントール高原に建設された、周波数80-950 GHz帯のミリ波サブミリ波領域で稼働する電波干渉計。口径12 mと7 mのアンテナ計66台を最大基線長16 kmで展開し、大気による波面ゆらぎを補正する技術を導入することにより、この周波数帯で0.01秒角の分解能を実現する。日本・台湾・韓国の東アジア、アメリカとカナダからなる北米、ヨーロッパ南天天文台を構成する16か国と建設地のチリ共和国の国際協力で2002年より建設が進められ、2011年より部分運用を開始し、2013年より本格的な運用を開始した。従来のミリ波干渉計を圧倒的に凌ぐ角分解能と集光力で、遠方銀河の星生成活動、太陽系外惑星の形成過程、有機分子の探査などの分野で画期的な成果を挙げている。
アルマ望遠鏡の運用は、日本の自然科学研究機構と、アメリカ国立科学財団、ヨーロッパ南天天文台が共同して行っている。アルマ望遠鏡の現地での運用は国際組織である合同アルマ観測所が統括し、日米欧にはそれぞれ地域支援センターが設置されて各地域の天文学者に対する支援業務を行っている。
開口合成望遠鏡も参照。
ホームページ:https://alma-telescope.jp/


アルマ望遠鏡運用10周年 宇宙の歴史をさかのぼる

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アメリカのSETI協会とカリフォルニア大学バークレー校の電波天文学研究室が協力してカリフォルニア州北部のハットクリーク電波天文台に建設中の電波干渉計である。口径6.1mのアンテナを最終的には350台配置する予定で、ポール・G・アレン家財団からの寄付により建設が始まり、第一期計画では42台のアンテナを建設して2007年から観測を開始している。観測周波数は0.5-11.2 GHzである。天文学的な観測とSETIの研究を行うことを目的としている。
ホームページ:https://www.seti.org/ata

輝線スペクトル吸収線スペクトルを合わせた総称。スペクトルも参照。

国立天文台の観測所の1つで、全世界の天文学者から公募される観測提案に基づいた電波天文観測が行われている。所在地は長野県南佐久郡南牧村の野辺山高原で、八ヶ岳のふもとの標高1,350 mの野辺山高原にある。冬は-20 ℃以下となる寒冷地で水蒸気が比較的少ないため大気による宇宙からの電波の吸収が少なく、日本国内ではミリ波電波の観測に適しているとされる。1960年代から望遠鏡計画が構想され、1978年に正式に観測所が設置され、1982年3月に野辺山で開所した。現在の主力観測装置は45m 電波望遠鏡。45m 電波望遠鏡はミリ波単一鏡としては世界最大級である。NROと略称されることも多い。
ホームページ:https://www.nro.nao.ac.jp/


宇宙への情熱を継承する ー野辺山宇宙電波観測所の歩みー

提供:NAOJ https://youtu.be/Pie892iLMPI

眼視ではなく専ら写真撮影を目的とする天体望遠鏡。天体の位置測定を主目的とするものは長焦点であるため視野はさほど広くない。サーベイ観測を目的とするものは、観測効率の観点から、できるだけ口径は大きく視野は広い方がよい。1930年シュミットが提案したシュミット望遠鏡はその代表例であり、広い視野を撮影できるので、小惑星彗星流星などの太陽系天体や、変光星新星などの観測に使われる。

基準となる波長での星間減光と比べて特定の波長における相対的な星間減光を表す言葉。通常は、波長$λ$ の星間減光$A(λ)$とVバンド(中心波長0.55 μm)の星間減光$A(V)$の差、$E(λ-V)=A(λ)-A(V)$で定義する。星間減光曲線も参照。

ある一定の現象の統計的性質を調べる際に、サンプルの選択方法あるいは観測や測定の方法に何らかの問題があることによって、真の統計量から偏りが生じることを指す。調査対象とする量に対して選択効果がないと考えられるサンプルは完全サンプルと呼ばれる。マルムキストバイアスなどの例がある。

国立天文台が長野県南佐久郡南牧村に有する太陽電波観測用の観測所であり、1969年に開所され、2015年に閉鎖された。八ヶ岳のふもとの標高1,350 mの野辺山高原にある。寒冷地で水蒸気が比較的少ないため電波の大気吸収が少なく、また周囲が山に囲まれているため雑音を低減しやすい。主な電波望遠鏡としては当初は観測周波数160 MHzの干渉計を持ち、後に17 GHz干渉計が設置された。1992年から電波ヘリオグラフ(口径80cmアンテナ84台で構成)が観測を開始し、観測周波数は17 GHz(1992年から)と34 GHz(1995年から)である。また1~80 GHzの7周波数帯で太陽全体の電波強度と偏波を測定する太陽電波強度偏波計を有した。観測所閉鎖後は、名古屋大学宇宙地球環境研究所を中心とした野辺山電波ヘリオグラフ運用延長国際コンソーシアムが電波ヘリオグラフを、野辺山宇宙電波観測所が強度偏波計を運用している。
ホームページ:https://www.nro.nao.ac.jp/

アメリカニューメキシコ州のサンスポットにある標高2800 mの天文台。シカゴ大学、プリンストン大学、プリンストン高等研究所などアメリカの7大学によって1984年に設立された天体物理学研究連合(Astrophysical Reserach Consortium: ARC)が建設した3.5 m望遠鏡、スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)のための2.5 m専用望遠鏡、ニューメキシコ州立大学の1 m望遠鏡などがある。約2 kmほど離れたすぐ隣に、アメリカ国立太陽天文台(NSO)のサクラメント・ピーク観測所がある。
ホームページ  http://www.apo.nmsu.edu/