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セファイド

高

よみ方

せふぁいど

英 語

Cepheid

説 明

脈動変光星の一種。ケフェイドとも表記される。セファイド変光星(ケフェイド変光星)あるいはケフェウス座δ(デルタ)型変光星ともいう。名前は、1784年にグッドリック(John Goodricke)によりこのタイプの変光が観測されたケフェウス座δ星に由来する。ただし、セファイドの最初の観測例は、それに数週間先立つピゴット(Edward Pigott)によるわし座η(イータ)星とされている。

セファイドは、中質量星がヘリウム燃焼段階にセファイド不安定帯を横切る際に起こる外層の脈動により変光する。多くは星全体が膨張、収縮する基準振動をしているが、なかには半径方向のある位置に動かない節を持ち、その内側が膨張している時には外側が収縮するような倍振動を示すものもある。周期は1-200日程度で、光度曲線可視光ではのこぎりの歯に似た非対称で特徴的な形を示す。可視光から近赤外線にかけて波長が長くなるにつれ、非対称性が薄れ振幅が小さくなる。

セファイドはリービットが発見したその周期-光度関係により、周期から絶対等級が推定できるため、宇宙における距離測定の標準光源として利用されている。ハッブルは、ウィルソン山天文台の100インチ望遠鏡を用いた観測から、アンドロメダ星雲M31)中にセファイドを発見し、周期-光度関係を適用して距離を求め、渦巻星雲M31が銀河系天の川銀河)の外にあり、それと同等の規模を持つ恒星の大集団であることを示した。このような集団は当初、カントの宇宙観に起源を持つ島宇宙、あるいは銀河系外星雲とよばれた時期もあったが、後に銀河(galaxy)という名称が広く使われるようになった(大論争を参照)。

標準光源としてのセファイドは、宇宙の距離はしごにおいて種族Ⅰの1次距離指標を構成する。ただし、周期-光度関係を利用するには星の金属量星間減光星間吸収)の影響を補正する必要がある。セファイドループも参照。

2025年01月26日更新

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    * 各種の脈動変光星のHR図上でのおおよその位置。破線で囲まれた領域がセファイド不安定帯である。
    神戸栄治「星の振動の観測」、シリーズ現代の天文学第7巻、野本・定金・佐藤編『恒星』1.4節 図1.18(日本評論社)
    * セファイドの変光のイメージ図。三角関数の形からずれた「のこぎりの刃」の形の光度曲線が特徴である。大きさの最大最小となる時期と光度が最大最小となる時期はずれている。
    縣秀彦著 岡村定矩監修『ビジュアル天文学史』(緑書房)
    * セファイドの光度曲線(左)と周期ー光度関係(右)および周期光度関係の傾きとその周りの分散(ばらつき)の波長依存性(中下)。左図では、紫外線(上)から近赤外線(下)までの各バンドでの典型的なセファイドの光度曲線が示されている。波長が長くなるにつれて、振幅が小さくなり非対称性が弱くなる。また中下図に見られるように、波長が長くなるにつれて、傾きが急になり、分散は小さくなる。右図は大小マゼラン雲中のセファイドの各バンドでの周期ー光度関係。縦軸は見かけの等級であるが、大小マゼラン雲の星は地球からの距離が同じと見なせるので、距離引数の補正をすれば絶対等級目盛りになる。(原図はMadore, B.F. and Freedman, W.L. 1991, PASP, 103, 933)
    (左)ハッブルが撮影したM31の領域。Digitized Sky Surveyより作成。(右)ハッブルがセファイドを発見した写真乾板(左の白枠に対応)。変光星を表す「VAR」(変光星=variable star の略号)の文字と日付が手書きされている。「!」にハッブルの感動が込められている。
    縣秀彦著 岡村定矩監修『ビジュアル天文学史』(緑書房)より。
    原図は 米国物理学協会(AIP)