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サーベイ観測

 

よみ方

さーべいかんそく

英 語

survey observation

説 明

空の一定の天域あるいは全天を覆い尽くす観測モードのこと。単にサーベイということもある。古くは掃天観測と呼ばれた。特定の天体を同定しカタログ化することを目的とすることが多い。多くの場合専用の望遠鏡と観測装置が用いられる。観測モードだけでなく観測プロジェクトの名称にもサーベイという語が用いられる。サーベイ観測によるカタログや画像は多くの場合公開される。

天文観測には大別して2つの観測モードがある。一つは、既に知られている天体に望遠鏡を向けてその天体を詳細に調べる観測で、もう一つは、特定の性質を持つ天体を探す、あるいはそれらの天体すべての性質を定量的に測定するために、特定の天域あるいは全天を望遠鏡で覆い尽くす観測である。前者をポインティング観測、後者をサーベイ観測という。サーベイ観測のうちで、撮像観測によるものを撮像サーベイ、分光観測によるものを分光サーベイと呼ぶ。また、サーベイ観測はその対象によって区分されることもある。たとえば、Tタウリ型星サーベイ、球状星団サーベイ、銀河サーベイ銀河団サーベイ、などなどである。多数の銀河の赤方偏移を決めることを主目的にした分光サーベイは、銀河の赤方偏移サーベイと呼ばれることもある。

眼視観測時代の広がった天体(銀河星雲星団など)のサーベイからは、有名なメシエカタログNGCカタログICカタログなどが作られた。サーベイ観測は写真観測時代に大きく発展した。写真によるサーベイ観測を効率的に行うためには望遠鏡の視野が広いことが重要である。伝統的な可視光観測においては、パロマー天文台スカイサーベイを契機として、広視野のシュミット望遠鏡写真乾板を用いて撮像サーベイをして天体のカタログを作り、その中の興味ある天体を大望遠鏡で詳細に分光観測するという役割分担が行われていた。口径1mクラスのシュミット望遠鏡による写真撮像観測の限界等級が、4mクラス望遠鏡の分光観測の限界等級にほぼ等しかったこともあり、1970年代から90年代にかけては、大型シュミット望遠鏡によるサーベイとそれからの天体カタログの作成が活発に行われた。

当初はサーベイの写真乾板をルーペなどで見る眼視検査から天体のカタログが作られた。銀河サーベイではこの方法で作られるカタログに含まれる銀河の数は3万個程度が限界だった。しかし、コンピュータの進歩により、写真乾板を測定機でデジタル化したデータをコンピュータ処理してカタログを作るようになると、1000万個以上の天体が扱えるようになった。8mクラスの望遠鏡が登場すると、シュミット望遠鏡の写真観測の限界より暗いものまで分光観測できるため、感度の高いCCD(電荷結合素子)を用いた新しい撮像サーベイとそれに基づく分光サーベイが必要となってきた。

2000年から観測をはじめた口径2.5 mの専用望遠鏡と640チャンネルの多天体分光器によるスローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)は、撮像と分光を並行して行うCCD時代のサーベイ観測の嚆矢となった。すばる望遠鏡ハイパーシュプリームカムによる撮像サーベイは2022年に完了した。2021年から始まった、キットピーク国立天文台の口径4 mメイヨール望遠鏡と5000チャンネルの多天体分光器を用いたダークエネルギー分光装置(DESI)による分光サーベイは、望遠鏡口径と分光器のチャンネル数でSDSSを凌駕し、2025年現在観測を続けている。すばる望遠鏡超広視野多天体分光器(PFS)による分光サーベイは2025年より観測を開始した。目的を特化した可視光のサーベイには、ヒッパルコス衛星ガイア衛星による位置天文学を主目的とする全天サーベイ、ケプラー衛星TESS衛星による太陽系外惑星探査などがある。

次世代のサーベイ観測と期待されているのは、ベラルービン天文台の時空間レガシーサーベイ(Legacy Survey of Space and Time: LSST) である。口径8.4 m(有効口径6.4 m)のシモニーサーベイ望遠鏡で全天のほぼ半分の20000平方度を、可視光近赤外線の6つのバンド(u, g, r, i, z, y)で観測する。天文台から見える全天の1バンドでのサーベイを数夜で完了する。このサーベイを繰り返して10年間継続する。2025年6月に初期観測画像を公開した。

可視光以外のサーベイにもさまざまなものがある。赤外線では2ミクロン全天サーベイ(2MASS)、IRAS衛星あかり衛星WISE衛星による全天サーベイ、X線ではROSAT衛星による全天サーベイなどがある。

2025年06月29日更新

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    * 銀河の撮像サーベイと分光サーベイの概念図。撮像サーベイは左のような画像から、銀河の位置と明るさと大きさなどを測定する。分光サーベイは、その中から一定以上の明るさの全ての銀河のスペクトルを撮る。スローンディジタルスカイサーベイ(SDSS)のデータより。
    (作成 岡村定矩)
    * シュミット望遠鏡による代表的な写真サーベイ
    出典:岡村定矩「銀河系と銀河宇宙」1999年(東京大学出版会)(新しい情報を追記した)
    * シュミット望遠鏡による写真サーベイから眼視検査で作られた主な銀河カタログ
    出典:岡村定矩「銀河系と銀河宇宙」1999年(東京大学出版会)