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回折スパイク

 

よみ方

かいせつすぱいく

英 語

diffraction spike

説 明

反射望遠鏡で撮影された明るい星の像から放射状に伸びる複数の線条のこと。反射望遠鏡の副鏡(シュミット望遠鏡では写真乾板ホルダーあるいはカメラ)を支える筋交い(スパイダーと通称されることが多い)により、入射する平行光線が回折されるために発生する。主鏡がモザイク主鏡で外周が円形でなく直線部分がある場合や、カメラの開口部(絞り)が円形でなく多角形型の場合にもそれらによる回折で発生する。線条は原因となる直線が1本に対して、それに垂直な方向の両側に2本伸びる。回折スパイクは点光源である星(入射光は平行光線)で発生するが、銀河など大きさを持つ天体では発生しない。回折スパイクは暗い星では次第に見えなくなる。
図1にさまざまなスパイダーのパターンによる回折スパイクの模式図を示す。図2左は東京大学木曽観測所の105 cmシュミット望遠鏡の焦点面、右はかつてこの焦点面に置かれた大型写真乾板で撮影された明るい星の回折スパイク(リングはハレーションによるもの)である。現在は焦点面には写真乾板でなく、左図に示す84台のCMOSセンサーを並べた「トモエゴゼン」カメラが置かれているが、スパイダーは変わっていない。図3はジェイムズウエッブ宇宙望遠鏡の近赤外カメラの画像に見られる回折スパイクで、モザイク主鏡の端の直線部による6本の明るく長い線条に、副鏡を支える3本の支柱による少し暗い3本の線条が重なった形をしている。

2022年08月16日更新

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    図1 さまざまな形のスパイダー(上)と開口部(下)のパターンによる回折スパイクの模式図。上図は望遠鏡を鏡筒の先から主鏡を見下ろしているもの。大きな円が主鏡、中心の小さな円が副鏡のイメージ。
    出典 https://wblog.wiki/ja/Diffraction_spike
    図2 東京大学木曽観測所の105 cmシュミット望遠鏡の「トモエゴゼン」カメラのスパイダー(左)とかつてこのカメラの位置に置かれた写真乾板に撮影された明るい星の回折スパイク(右;リングはハレーションによるもの)。
    出典 左 https://tomoe.mtk.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/
    右 http://astro-dic.jp/halation/
    図3 ジェイムズ・ウエッブ宇宙望遠鏡の近赤外カメラNIRCamの画像に見られる回折スパイク。
    出典 https://webbtelescope.org/contents/media/images/01G529MX46J7AFK61GAMSHKSSN