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天の川銀河

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よみ方

あまのがわぎんが

英 語

Milky Way Galaxy

説 明

太陽系が属している銀河のこと。銀河系とも言う。その一部が地球からは天の川として見えるので、この名がある。同じものを指す「天の川銀河」と「銀河系」という二つの用語の歴史については銀河系の項で解説している。
天の川銀河は渦巻銀河の1つで、銀河円盤は外縁部まで含めると半径15-20 kpc、1/e スケール長3.5 kpcで、厚さは1/eスケール長で0.3 kpcと見積もられている(1/e スケール長とは、ある量(この場合、面輝度)が等比級数的に変化する場合、1/2.718ずつ減少するのに対応する長さのこと)。太陽系は、その中心から8-8.5 kpc離れた円盤部のほぼ中央面(銀河面)の上(厳密には40 pcほど離れたところ)に位置する。バルジは軸比10:5:3の棒状の3軸不等楕円体で長半径約2 kpc、太陽系から見て東側(銀経が0°-90°の側)が手前にある。このため形態分類では棒渦巻銀河に分類される。暗黒物質を除く全質量は太陽の1000億倍程度。ハローはこれら全体を取り巻く球形の領域で、半径25 kpc内には多数の球状星団が散在し、その外側は高温で希薄なガスがある。
銀河面には背後の光を遮る多数の暗黒星雲分子雲が密集しており、それらがダークレーンとして見える。可視光では望遠鏡を用いても銀河面方向では太陽系から1万光年程度の範囲しか観測することができない。このため、天の川銀河全体にわたる観測的研究を行うには赤外線電波X線ガンマ線など可視光以外の観測が必須である。アタカマ砂漠のチャナントール天文台にある電波望遠鏡アタカマ・パスファインダー実験機(APEX)は、波長0.87mmのサブミリ波で銀河面をサーベイし、光を吸収するダスト(塵)の分布を詳細に描き出した。2MASSガイア衛星も参照。


ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が製作した天の川銀河(銀河系)の構造を示す解説動画

https://youtu.be/G5AdrupH788


太陽系から天の川銀河を飛び出しておとめ座銀河団まで行く仮想宇宙旅行の動画。天の川銀河と天の川の関係がよく分かる。(原作は、カリフォルニア大学サンディエゴ校マイケル・ノーマン(Michael Norman)教授による)

https://youtu.be/AXHPeX8hz8s

2020年01月07日更新

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    天の川銀河
    外から見た天の川銀河の想像図。赤い印は太陽系の位置で中心から8~8.5kpc離れている。国立天文台公開の宇宙表示ソフトMitakaによる想像図に記入。
    観測データに基づいた天の川銀河(銀河系)の想像図。正面から見た(face-on)図で、棒状のバルジがよく分かる。銀経の目盛り線とともに渦巻腕などの構造の名称が記されている。太陽は中心の少し下の 'Sun' の位置にある。(クレジット::NASA/JPL-Caltech/R.Hurt[SSC-Caltech])
    http://www.spitzer.caltech.edu/images/1925-ssc2008-10b-A-Roadmap-to-the-Milky-Way-Annotated-
    2ミクロン全天サーベイ(2MASS)で得られた5億個の星の分布と明るさを基に作成された天の川の全天図(銀河座標系で表示)。天の川銀河を太陽系から真横に(edge-on)見た姿である。J, H, Kバンドを青, 緑, 赤に対応させた代表色表示である。右下の二つのしみのようにみえるのは、大マゼラン雲と小マゼラン雲である。
    https://old.ipac.caltech.edu/2mass/gallery/showcase/allsky_gal/index.html
    APEX望遠鏡によるATLASGALサーベイを基にした南天から見える銀河面付近のダストの分布を表す画像。幅約3度、長さ約40度の細長いストリップを3分割して表してある。右に銀経方向でどこを見ているかを示す図が添えられている。波長0.87 mmのAPEXデータが赤、背景の青い色はNASAのスピッツアー望遠鏡のサーベイのより短波長のデータ、淡い赤色の広がった成分はヨーロッパ宇宙機関(ESA)のプランク衛星の観測データ。
    出典:https://www.eso.org/public/images/eso1606c/
    ESOプレスリリース:https://www.eso.org/public/news/eso1606/