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東京大学アタカマ天文台

 

よみ方

とうきょうだいがくあたかまてんもんだい

英 語

The University of Tokyo Atacama Observatory(TAO)

説 明

チリ共和国・アタカマ地方にある標高5640 mのチャナントール山の山頂におかれる口径6.5 mの大型光学赤外線望遠鏡(TAO望遠鏡)と、山麓のサンペドロ・デ・アタカマ市にある山麓研究施設を中心とする天文台。東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターが運用している。2024年4月30日にTAO望遠鏡サイトの完成記念式典が行われた。2025年からの本格運用を予定している。TAO望遠鏡サイトは、世界一標高の高い天文台として2011年にギネスに認定された(2009年から同サイトで口径1 mの望遠鏡miniTAOが運用されている)。

TAO望遠鏡は世界一の標高にあるため、大気中の水蒸気量が少なく赤外線の波長域でも大気の透明度が極めて高い(大気の窓を参照)。このため、従来は地上からの観測が難しかった中間赤外線での観測が可能となる。この特長を活かしてTAOは、宇宙初期に生まれた銀河(原始銀河)の観測を進めて銀河の形成・進化をさぐることと、原始惑星系円盤惑星の形成およびその材料となるダスト(固体微粒子)の形成と破壊過程などをさぐることの二つを主要な目標に掲げている。

TAO望遠鏡の観測装置には、中間赤外観測装置 MIMIZUKU (Mid-Infrared Multi-field Imager for gaZing at the UnKnown Universe) と近赤外線 2 色同時多天体分光撮像装置 SWIMS (Simultaneous-color Wide-field Infrared Multi-object Spectrograph)の二つがある。 MIMIZUKU は、中間赤外波長の 2-38μm という広い波長範囲をカバーし、30 μm 帯で 1 秒角と言う世界最高の角分解能(解像度)を有する。また、Field Stacker という 2 視野を同時に観測できるシステムを世界で初めて実用化し、赤外線の時間変動も高精度で検出できる。

SWIMS は、0.9~2.5 μm の近赤外線波長域において撮像機能と冷却スリットマスクによる多天体分光機能を備えた近赤外線観測装置である。 0.126秒角/pixel という高い空間分解能で直径9.6分角の広視野をカバーし、近赤外線の 2 波長域(blue: 0.9~1.4 μm/ red: 1.4~2.5 μm)の同時撮像・ 同時多天体分光を行うことができる。TAO 望遠鏡サイトの特長である連続的な大気の窓を活かし、波長0.9~2.5 μm のスペクトルを切れ目なく取得することができる。このほか、初期観測装置として近赤外線エシェル分光装置NICE(Near-Infrared Cross dispersed Echelle spectrograph)を有しており、第二期観測装置の開発も進めている。

TAO計画では、最先端のプロジェクト研究を行うのみならず、観測時間の一部を共同利用として国内からの提案を募り、大学による次世代研究者育成も大きな目標としている。

2024年07月02日更新

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    TAO望遠鏡サイト(標高5640 m)の山頂施設。右が口径6.5 mの大型赤外線望遠鏡のドーム。
    https://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/TAO/news/20240430/index.html
    サンペドロ・デ・アタカマ市にある東京大学アタカマ天文台(TAO)の山麓研究施設
    https://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/TAO/news/20141121/index.html
    TAO望遠鏡サイト(上)とVLT 8m 望遠鏡が設置されているパラナル山(下)での大気透過率モデル。TAO望遠鏡サイトでは、波長1~2.5μmの近赤外線波長域がほぼ切れ目なく観測できる。また、中間赤外線では波長30 μmあたりまで観測できることが分かる。
    https://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/TAO/intro/intro2.html