米国ハワイ州ハワイ島の北部にある標高4205 mの山。裾野にあたる太平洋の海洋底から測ると、10203 mの高さがあり、山体としては世界で最も高い山である。山頂平原には多数の噴石丘があり、最高点であるプウ・ヴェキウは噴石丘の1つである。山頂付近は世界で最も天体観測に適した場所の一つで、日本のすばる望遠鏡を含めた世界各国の13台の望遠鏡が設置されている。これらの望遠鏡群はマウナケア国際天文台群と呼ばれる。 冬期間には雪が降る悪天候が数日以上続くこともある。
宇宙科学研究所が開発と運用を行ってきた3段式の固体燃料ロケット。1997年2月12日に1号機が電波天文衛星「はるか衛星」を鹿児島宇宙空間観測所(内之浦)から打ち上げた。全長は30.8m、直径は2.5mで、低軌道への打ち上げ能力は1.85tであった。2006年9月23日の太陽観測衛星「ひので衛星」の打ち上げを最後に利用を終了した。この間、4号機(X線天文衛星(ASTRO-E))の失敗を除き、4つの天文観測衛星と2つの惑星探査機を成功裏に打ち上げた。
ホームページ:http://www.jaxa.jp/projects/rockets/m_v/index_j.html
ハーバード分類で表面温度の系列に属する非常に低温の星。表面温度は~3,900(K)。ヘルツシュプルングによって該当する恒星には、質量・大きさ・絶対光度のいずれもが大きく異なる2種類があることが発見され、小さて軽く暗い星を赤色矮星、大きくて重く明るい星を赤色巨星と呼ぶ。前者は主系列星の軽い方にあたる。同じ関係はK型星など他の低温度星にもある。
M型星の質量は、主系列星の場合で太陽の0.1-0.5倍程度、赤色巨星の場合で1-8倍程度とされる。水素のバルマー線は非常に弱い。酸化チタン(TiO)、中性カルシウム(CaI)、中性金属の吸収線が強い。
例として赤色巨星だとアルデバラン、主系列星(赤色矮星)だとバーナード星が挙げられる。
スペクトル型(星の)およびHR図を参照。
最大エントロピー法のこと。
赤道儀の一種。イギリス式架台のように北と南の2つのピアで極軸を支えるが、極軸は箱型ドーナツ状をなしており、これをヨークと呼ぶ。そのヨークの間に赤緯軸をわたして望遠鏡筒を支える。2つのピアと頑丈なヨークで支持するため、大型の望遠鏡を搭載することができる。ただし、広い設置スペースが必要となり、構造上、極方向とその周辺には望遠鏡を向けることができず、観測することができない。ウィルソン山の100インチ(2.5m)望遠鏡のヨーク式架台が有名。この他にNASAの赤外線望遠鏡(IRTF)、UK赤外線望遠鏡(UKIRT)などがこの架台を採用している。ヨーク型をさらに改良して、極方向の軸受に巨大な馬蹄形軸受けを採用して、極方向まで観測できるようにしたのがホースシュー式と呼ばれる架台である。ホースシュー式架台は、パロマー天文台の5mヘール望遠鏡に採用された。その後、ホースシュー式をさらに変形させて、馬蹄形軸受けを鏡筒のすぐ近くまで持ってきた変形ホースシュー式架台が開発され、キットピーク国立天文台のメイヨール望遠鏡などに採用されている。架台(望遠鏡の)も参照。
星の等級と見かけの明るさの間の関係を定めた式。1856年にイギリスのポグソン(N. Pogson)が提案した。 $m$ 等級の星の見かけの明るさを $I_{\rm m}、n$ 等級の星の見かけの明るさを $I_{\rm n}$ とするとポグソンの式は、
$$m-n= -2.5\,{\rm log}\,(I_{\rm m}/I_{\rm n} )$$
となる。これによると5等級の差は明るさにして100倍の違いとなり、1等級の差は 1001/5〜2.512 倍に相当する。ポグソンの式は、等級差と明るさの比を定めているだけなので、等級のゼロ点(原点)は別途定める必要がある。ベガ等級、AB等級も参照。
天空での種々の星の数密度(単位立体角あたりの星の数)を調べること。
観測された星の分布に基づく天の川銀河(銀河系)のモデルの構築に使われる手法。また星の数密度から減光量を推定することも可能となるため、星の光を減光する(遮蔽する)暗黒星雲の分布についての情報を得るために使うこともある。
物質が存在し、宇宙項(宇宙定数)を持つ空間的に一様な宇宙モデルのこと。ルメートルが1927年の論文で、1922年のフリードマンの論文(フリードマン宇宙)とは独立に発表した。
宇宙項や空間曲率の符号によって宇宙のスケール因子の時間発展の仕方が大きく変わる。
視線速度の精密観測に使われる、ヨウ素を用いるガス吸収フィルター。天体のスペクトルに見られる輝線や吸収線の波長が実験室での波長とどれだけずれているかを精確に測定する方法の一つとして、ガス吸収フィルターを用いる方法がある。これは天体の光を分光する前に気体の箱に通し、その気体の吸収線をスペクトルに焼き付ける方法である。この際、封入するガスとしてヨウ素を封入したのがヨードセルである。1988年にリブレヒト(K.G. Libbrecht)によって提案された。マーシー(G.W. Marcy)とバトラー(R.P. Butler)により太陽系外惑星検出法の一つであるドップラー法に使用された。
チリのサンチアゴの北約600kmのアンデス山中にヨーロッパ南天天文台(ESO)が1960年代に開設した天文台。標高は約2400m。1977年から運用を始めたESO 3.6m望遠鏡のほか、3.58 mの新技術望遠鏡、2.2 m望遠鏡、1 mシュミット望遠鏡(1998年に閉鎖)など、多数の望遠鏡がある。
ホームページ:http://www.eso.org/sci/facilities/lasilla/site/aboutls.html
レーン-エムデン方程式において、星の中心における密度と質量分布についての境界条件
($w(0)=1$, $w'(0)=0$)を満たす解のこと。
ワシントンのカーネギー研究所によって運用されている天文台。チリ共和国のサンチャゴから北に約400 kmにあるラスカンパナス山近郊に位置する。口径6.5 mの2台のマゼラン望遠鏡を筆頭に、2.5 mデュポン望遠鏡、1 mスウォーブ望遠鏡がある。サイト内に1996年から名古屋大学が4 mミリ波望遠鏡なんてん2(NANTEN2)を設置運用していたが2004年にアタカマに移設した。また、有効径25 mの大マゼラン望遠鏡(Great Magellan Telescope)を同サイト内に建設する計画がある。
ホームページ:http://www.lco.cl/
エラトステネス(Eratosthenes;c.BC276 - BC194)はギリシアの地理学者・天文学者・数学者。キュレネ(北アフリカ)の出身で、アテネで修学後、エジプトのプトレマイオスIII世に招かれてアレキサンドリアの図書館長にBC255年頃に就任したとされる。彼の最も有名な業績は、夏至の正午に、ほぼ同じ子午線上にあるシエネ(アスワン)とアレキサンドリアの太陽高度差を測定し、地球の全周長をわずか数%の誤差で決定したことである。また、素数かどうかを調べるための「エラトステネスのふるい」や、地理学研究の一環として世界地図を作成したことでも知られる。
回転するブラックホールでは、重力と回転の両方の効果によってブラックホールからある距離までは無限遠に対して静止した状態が取れずブラックホールの回転に引きずられて運動する。その限界面を定常限界面というが、事象の地平面(事象の地平線)と定常限界面の間の領域をエルゴ領域という。エルゴ球と呼ばれることもある。エルゴ領域内では遠方から見てエネルギーが負となる軌道が存在する。これを用いると次のようにしてブラックホールの回転エネルギーを外に取り出すことができる。まず物体をエルゴ領域内に落下させ、そこでブラックホールの回転方向と逆方向にそれぞれ運動する2つの破片に分裂させる。逆方向に運動する破片を負のエネルギー軌道に乗せてブラックホールに落とし、他方をエルゴ領域外へ再び放出すると、放出された破片は物体が最初にもっていたエネルギーよりも大きなエネルギーを持って飛び出してくる。このような操作でブラックホールからエネルギーを取り出す操作をペンローズ過程という。
エルゴというのは、ギリシャ語の「仕事」という意味が語源であり、この領域からエネルギーを取り出すことができることから名付けられた。
ロケデロスムチャーチョス天文台を参照。
一般にガスが放射などによって冷却する時間スケールのこと。
ガスから星の生成が効率よく起こるためには、この時間スケールが宇宙年齢に比べて十分短い必要がある。また、銀河団中心部にある高温ガス(1億度程度)では、X線放射によって冷却される時間スケールが宇宙年齢より十分に小さいことが知られ、加熱源がない限りガスは急速に冷えて収縮し、冷却流を引き起こすと考えられる。
宇宙開闢後ある時刻までに因果関係を持つことのできた距離の上限、すなわち光が届くことのできた距離を粒子的地平線という。通常のビッグバン宇宙論で想定されるような減速的膨張宇宙では、粒子的地平線は光速に時刻を掛けた程度の値を持つ。一方インフレーション宇宙論のように加速的膨張が起こると粒子的地平線は宇宙のスケール因子に比例して急激に増大する。粒子的地平線 $d_{\rm H}(t)$ はスケール因子 $a(t)$ の積分として、
$$d_{\rm H}(t)=a(t)\int_{t_i}^t\frac{c\, dt'}{a(t')}$$
という表式で与えられる。ただし、$c$ は光速度、$t_i$ は時空の古典的な記述が可能になった初期時刻とする。宇宙の地平線も参照。
アメリカ航空宇宙局(NASA)が1989年に打ち上げた金星探査機で、厚い大気を通す電波により金星のほぼ全面の地形を明らかにした。合成開口レーダーの手法を使い、120mの分解能で表面地形のデータを取得した。極軌道を通る探査機のアンテナから、Sバンド(波長12.6cm)の電波を進行方向に垂直で金星の表面に対して斜めの方向に射出して、反射シグナルの違いから、表面の地形や電波反射率を測定した。マゼラン探査機の解像度は、パイオニアビーナス、ベネラ15号、16号のレーダーをはるかに凌ぐものであり、金星表面のさまざまな火山のスタイルや溶岩流の分布、断層や褶曲(しゅうきょく)が複雑に入り組んでいて変化の激しい「テセラ」と呼ばれる地域の分布を明らかにしている。またマゼランは、電波を表面に垂直に射出して高度データも取得した。探査機の電波追跡による軌道変化から、金星全体の重力データも求められている。
国立天文台が編纂して毎年発行する暦および自然科学に関するさまざまな分野の基礎データを網羅したデータブック。暦部、天文部、気象部、物理/化学部、地学部、生物部、環境部、および附録からなる。初版は1925年(大正14年)に発行された。世界に類を見ない包括的なデータブックである。1988年には初版の復刻版が出版された。
理科年表に関する様々な情報が得られる「理科年表オフィシャルサイト」が以下にある。
https://official.rikanenpyo.jp/
銀河の周りを公転する天体について、銀河中心から最もはなれた点のこと。逆に最も近づく点を近銀点という。ただし、銀河の場合には質量分布が球対称とは大きく異なる上に、銀河内部を天体が通過することもできるので、公転軌道が閉じない場合が多く、恒星や惑星などに対する遠点とは異なり、遠銀点は1点になるとは限らない。遠点も参照。
