ガスの主成分である水素が電離状態になっている領域のこと。HⅡ領域ともいう。
主に大質量星から大量に発する電離光子を浴びて大質量星や大質量星を多く含む生まれたばかりの星団の周りに形成される。電離水素領域の形状はおおむね球形をしており、ストレムグレンが提唱した理論モデルはストレムグレン球とも呼ばれる。
ある着目する粒子種の総量に対する電離した粒子数の割合のこと。
ある着目する粒子種に対して、単位体積当たりの電離した粒子数を $n^+$ 、中性のままの粒子数を $n^0$ とし、その粒子種の単位体積当たりの総量が
$$n_{\rm total}= n^0+ n^+$$
で表されるとき、電離度 $x$ は
$$x = n^+/n_{\rm total}$$
と表される。
電離とその逆過程の再結合がつり合い、電離度が時間的にほぼ一定になった状態が電離平衡である。
電解質などを扱う化学における使い方と違うので注意が必要である。
ガスの電離と再結合がつり合った状態。主に電離度が高い平衡状態を表す場合が多い。
電離エネルギーを参照。
黄道上で太陽の黄経(黄道座標系を参照)が270度になる時刻。この時刻を含む日(冬至日)も一般には冬至とよばれている。12月22日頃で二十四節気の一つである。日本(北半球)では冬至の日に太陽の南中高度が最も低くなり、昼の時間が最も短くなる。二至二分も参照。
等時線を参照。
天文観測で用いる干渉計で干渉させる2つの光路長に対応する時間のこと。時間は遡ることができないので信号を記録しない限り、遅延による表現の方が本質的といえる。干渉強度は光路差で変化するので、遅延量の絶対値よりも、遅延の違いや変化がより重要で、2光路の遅延の差を単に遅延と呼ぶことも多い。遅延には、信号伝播に伴い必然的に発生するものと光学系などを制御して人為的に生じさせるものとがある。前者には、2つの素子アンテナを結ぶ直線(基線)と直交する方向に対して光線の入射方向が傾いているために生じる幾何学的遅延のほか、大気の屈折率による遅延、干渉部分までの伝送路による遅延などがある。後者には、幾何学的遅延を調整して視野中心を移動させる位相遅延追尾や、1/4周期の遅延を加えることで位相差を一意に測定する複素測定などがある。
原子や分子、さらには固体微粒子などから電子が放出される現象のこと。イオン化ともいう。主な電離機構としては、高温ガス粒子の熱的運動に伴う衝突のために電離される熱電離、宇宙線などの高エネルギー粒子との衝突による衝突電離、紫外線などの十分なエネルギーを持つ光子との相互作用による光電離がある。解離も参照。
原子や分子を電離させるのに必要なエネルギーのこと。
通常は、電離される原子や分子1個から電子を1個放出させるのに必要なエネルギーを電子ボルト(eV)の単位で表す。
電離ポテンシャルと呼ばれる場合もある。
プラズマの電離平衡状態を表すサハの電離式を用いて電離度を表した場合に、サハの式に現れる温度パラメータのこと。電離温度はプラズマの運動温度とは必ずしも一致しない。励起温度と同様の形式的な温度の定義である。
外場中を運動する天体の自己重力の及ぶ範囲を指す。潮汐半径の位置で潮汐力と天体の自己重力が等しくなる。たとえば、質量が $M$ の天体の周りを軌道長半径 $a$ で円運動する質量 $m$ の天体の潮汐半径は1次近似では $r_t =(m/3M)^{1/3}a$ となる。
ロッシュ限界ともいう。ヒル半径も参照。
星間物質として最も多く存在している水素のほとんどが電離して陽子の状態になっているガスのこと。
慣用的に、中性の水素をHⅠ、電離した水素(陽子)をHⅡと表す。
電離ガスが存在している領域を電離水素領域またはHⅡ領域と呼ぶ。
潮汐作用により天体が変形することに伴う摩擦現象のこと。たとえば地球の場合には、月と太陽の潮汐作用で海水が移動して変形する(海洋潮汐という)が、この際に生じる海水と海底(固体地球)の間の摩擦が顕著である。程度に差はあるが、海水に限らず、地殻や大気でも潮汐摩擦は発生する。地球に及ぼす潮汐力は太陽よりも月の方が大きい。潮汐摩擦がなく、海水が瞬時に移動できれば、月の真下(およびその真裏)の地点で海面が最高(満潮)になる。
月による地球の潮汐変形は、月が移動していることと、地球表面が不均質な海陸分布を持つことのために、複雑な時間変動をし、緯度・経度によっても異なる複雑な空間分布を持つ。時間変動の基本成分は、半日周期と一日周期の二つであるが、月の軌道が円軌道でなく楕円軌道であること、月の軌道が地球の赤道面と傾いていることなどからさまざまな周期と振幅のものがある。この潮汐変形を記述するために潮汐モデルの研究が進んでいる。
1990年代になって人工衛星に搭載された海面高度計によって、全球での海面の変動が実測されるようになり、潮汐モデルはより高精度に海面変動を記述できるようになった。この新しい潮汐モデルによると、海面高度が最も高くなる場所(いわゆる満潮の場所)は、月の位置の直下から約3度自転の向きに進んだ方向とその真裏(180度反対側)となる。地球の中心と月の中心を結ぶ線に対して約3度傾いたわずかに楕円形の地球(海洋が両側で満潮となっているため)に働く月の引力は偶力となって、地球の自転を遅くするように働く。
このため地球史的な長時間スケールでは地球の自転は遅くなっており、現在では1日の長さは100年あたり約0.002秒のペースで長くなっている(ただし、100年程度以下の短い時間スケールで見れば地球の自転はさまざまな要素に影響されて複雑に変化する;うるう秒を参照)。地球と月を合わせた系の角運動量は一定に保たれるので、地球の自転が遅くなることの補償として月は毎年約3.8 cmの速度で地球から遠ざかっている。
ダストを参照。
潮汐を参照。
電波望遠鏡の重要な性能の一つで、アンテナビームの全立体角 ΩA に占める主ビームの立体角 ΩMB の割合をいう。0から1の値をとり、1に近いほど性能が良い。慣例的に変数ηMB で表記される。すなわち、ηMB≡ΩMB/ΩA である。観測で得られた(大気吸収補正済み)アンテナ温度 TA* を主ビーム能率で割ったTMB=TA*/ηMB は主ビーム輝度温度と呼ばれ、天体の広がりが主ビームの立体角程度と考えられる場合には、その天体の真の輝度温度とほぼ等しくなる。
アンテナパターン,アンテナ開口能率も参照.
ダストのこと。
励起を参照。
ベンゼン環を多数持つ一群の分子で、星間ダストのモデルとして考えられている炭素系の微粒子。
赤外線放射による銀河面の表面輝度スペクトルにおいて、6-14 μm 帯に見られるいくつかの放射ピークからなるバンド構造が見られる。このバンド構造の起源であると考えられている。PAHと略称されることが多い。急冷炭素質物質(QCC)も参照。
0.001mm(1μm)程度の大きさの固体の微粒子のことであり、星などが発する光を効率的に吸収したり散乱したりする。塵微粒子あるいは単に塵とも言う。主に星間空間に存在している星間ダストのことを指すが、ダストの存在する場所により、銀河間ダスト、星周ダスト、惑星間ダストなどと呼ばれる。
彗星や小惑星に起源を持つ惑星間ダストは高層大気中で採集できるが、最終的に地表に降下したものは、南極の氷床や深海底堆積物からも回収されている。
