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ロッシュ限界

高

よみ方

ろっしゅげんかい

英 語

Roche limit

説 明

潮汐半径と同じ。衛星に働く惑星重力の強さが、惑星に近い側(または遠い側)の衛星表面と衛星中心とで異なり(潮汐を参照)、このことが原因で衛星に働く力を潮汐力と呼ぶ。衛星が惑星の十分近傍を公転している場合、潮汐力が衛星の自己重力よりも大きくなり、衛星を破壊しようとする(潮汐破壊)。衛星の物質強度を無視し自己重力流体であると近似した場合、衛星が潮汐破壊を受けてばらばらになる臨界の衛星軌道半径のことを、ロッシュ限界(またはロッシュ限界半径)と呼ぶ。惑星および衛星の密度を$\rho_c,\,\rho_p\,$、惑星の半径を$R_c$とするとき、ロッシュ限界は

$$a_{\rm R} = 2.456(\rho_c/\rho_p)^{1/3}R_c$$

と表される。太陽系の巨大惑星の衛星-リング系において、リングの存在する領域はほぼロッシュ限界より内側となっている。しかしリング粒子や衛星は流体ではないため、リング-衛星の境界とロッシュ限界の対応は厳密ではない。

なお、ロッシュ限界のことを「ロッシュ半径」ということもあるが、天体の重力圏の大きさを表す半径(ヒル半径を参照)のことを「ロッシュ半径」と呼ぶこともあるので、注意が必要である。

2023年04月18日更新

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    *太陽系の四つの巨大惑星のリング及び近傍の衛星の軌道の模式図。惑星半径を共通の単位として規格化してある。点線は惑星の周りを回る粒子の密度を1 g/cm^3としたときのロッシュ限界(ロッシュ半径)、破線は粒子の公転角速度が惑星の自転角速度と等しくなる同期軌道の位置を示す。
    大槻圭史「リング」、シリーズ現代の天文学第9巻、渡部・井田・佐々木編『太陽系と惑星』 4.4節 図4.9 (日本評論社)