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IRD

 

よみ方

あいあーるでぃー

英 語

IRD

説 明

InfraRed Doppler instrumentの略語で、アイ・アール・ディーと呼ばれる。すばる望遠鏡用に開発された、恒星の視線速度を2メートル毎秒という非常に高い精度でドップラー効果を利用して測定し、地球型の軽い太陽系外惑星を発見することを目的とする観測装置。波長0.97ー1.75 μmの近赤外線波長で天体の光を約7万色に分解してスペクトルを測定できる。2048×2048素子のHgCdTe赤外線アレイ検出器を2基使用し、エシェル型回折格子で高分散された上記の波長帯のスペクトルを一度に取得できる(エシェル分光器も参照)。
図のように、すばる望遠鏡のナスミス焦点において、補償光学系で地球大気による乱れを取り除いたあと、星の光を光ファイバーに入射する。光ファイバーはクーデ室と呼ばれる望遠鏡ドームの地下室に設置された分光器に接続されている。天体の光と同時に、レーザー周波数コムと呼ばれる波長の基準となる光源のスペクトルも同時に測定し、恒星の視線速度を高精度に測定する。アストロバイオロジーセンター、国立天文台、東京大学、東京農工大学などを中心に開発された。2018年にすばる望遠鏡における試験観測に成功し、現在は赤色矮星まわりに地球型惑星を発見するための大規模サーベイ観測を行っているほか、一般共同利用に提供され、テス衛星による太陽系外惑星のフォローアップ観測など多彩なサイエンスに用いられている。

2022年01月10日更新

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    IRD装置の概念図。すばる望遠鏡からの光は、赤外ナスミス焦点において光ファイバーに入射され、望遠鏡の真下に設置された赤外線分光器に接続されている。分光器の近くにはファイバー・モードスクランブラーとレーザー周波数コムが設置されている。
    https://abc-nins.jp/press/20180702/20180702_IRD_main.html