重力波
よみ方
じゅうりょくは
英 語
gravitational wave
説 明
一般相対性理論などの相対論的な重力理論一般に予言される重力場の波動的振動。流体力学における重力波(gravity wave)とは別のものである。
一般相対性理論では、重力波は物質の四重極モーメント以上の高次モーメントの時間変化から放射される横波で、 その伝播速度は光速度に等しい。プラスモードとクロスモードと呼ばれる2つの偏光があり、 振動方向は45度違っている。1984年にパルサー連星PSR1913+16 における重力波放射による公転軌道周期の減少が観測され、 その減少率が一般相対性理論の予言と一致することから、重力波の存在は間接的に証明された。
重力波は電磁波を用いた通常の天文学的手段では観測できないブラックホールの形成過程、宇宙初期など超強重力場中における天体現象を 観測する唯一の手段であり、アメリカ、ヨーロッパ、日本、インドなどで大型レーザー干渉計を用いた重力波検出器(重力波望遠鏡ともいう)が建設された、あるいは建設中である。
このうちアメリカで建設されたLIGO (Laser Interferometer Gravitational-WaveObservatory)で、2015年9月14日、400メガパーセク(400 Mpc=13億光年)の彼方で太陽質量の約36倍と29倍の二重ブラックホール連星が合体して太陽質量の62倍のブラックホールができた時の重力波が初めて直接検出された。その後2017年8月までに二重ブラックホール連星の合体に伴う重力波が3回観測された。これらの重力波の発生源は、検出の年月日をつけてGW150914、GW151226、GW170104、GW170814と呼ばれている。この4回の重力波の発生源となった連星をなすブラックホールの質量は太陽質量の20倍を超えるものが多く、また合体後のブラックホールの質量はどれも太陽質量の20倍以上、最大のものは62倍である。さらに、2019年5月21日にはそれまでの記録を大幅に超える事象(GW190521)が観測された。GW190521では、太陽質量の85倍と66倍のブラックホールが合体して142倍のブラックホールが生成され、太陽質量の約8倍に相当するエネルギーが重力波として放出された。従来X線で観測されている天の川銀河(銀河系)内のブラックホールは太陽質量の10倍以下のものがほとんどなので、このような大質量のブラックホールの形成過程についても謎が生じている。
2017年8月17日に観測された5例目の重力波(GW170817)は二重ブラックホール連星の合体ではなく二重中性子星連星の合体によるものであった。銀河系から40メガパーセク(40 Mpc=1.3億光年)という近距離にある銀河NGC4993で、二つの中性子星が合体して重力波が発生してキロノバという大爆発が起きたことがすべての波長の電磁波で観測された。この観測から、キロノバでr過程により実際に金属(重元素)が合成されたことがほぼ確実と考えられるようになった。
その後も重力波の観測は進み、2021年までに観測された重力波は90例に達した。今後観測例が増えることを想定して、名称にはGW200322_091133のように観測時刻もつけるようになった。
イベントホライズンテレスコープ、マルチメッセンジャー天文学も参照。
重力波イベントの検出記録(LIGO-Virgo-KAGRA Collaboration)
https://www.ligo.org/detections.php
2020年3月までに検出された重力波イベントのカタログ
https://www.ligo.org/detections/O3bcatalog.php
Gravitational wave observation GW150914 with black hole merger simulation
https://youtu.be/-vYJdh8wALg
中性子星とブラックホールの合体を描いた動画「Neutron star-black hole merger」
(提供:Carl Knox, OzGrav – Swinburne University)
https://www.youtube.com/embed/dACjwnMhUJg
合体するブラックホールとその周りの空間のゆがみ。
クレジット: SXS (Simulating eXtreme Spacetimes) プロジェクト
https://www.black-holes.org/
https://www.youtube.com/embed/1agm33iEAuo
2024年05月13日更新
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