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シンクロトロン自己コンプトン

 

よみ方

しんくろとろんじここんぷとん

英 語

synchrotron self-compton(SSC)

説 明

磁場中の電子は磁力線の回りを円運動(加速度運動)し電磁波放射する。電子の速度が遅い場合をサイクロトロン放射、光速に近い相対論的な場合をシンクロトロン放射と呼ぶ。
低エネルギー光子の場合、光子は自由電子を振動させ、その振動が電磁波を再放出する。したがってその波長(エネルギー)はもとの光子とおなじである。この過程をトムソン散乱という。その断面積は光子のエネルギーによらず一定で、トムソンの断面積という。
高エネルギー光子の場合は電子にあたえる運動量とエネルギーが大きくなり、その分だけエネルギーが減少した光子が再放出される。
これをコンプトン散乱といい、そのエネルギーと反応断面積の関係がクライン-仁科の公式である。
逆に運動する電子に光子が衝突すると、これらの逆過程がおこり光子はエネルギーを獲得し、高エネルギー光子に変わる。これを逆コンプトン散乱と呼ぶ。
シンクロトロン放射によって生成された光子がもとの電子に衝突することによってより高エネルギーの光子となる現象をシンクロトロン-自己コンプトン放射と呼ぶ。
活動銀河核からの宇宙ジェットから放出されるX線ガンマ線はこのプロセスによるものと考えられる。

2019年05月11日更新

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