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スピン温度

 

よみ方

すぴんおんど

英 語

spin temperature

説 明

量子力学的なスピンの励起状態を表す温度。
量子力学によると粒子の自転角運動量に相当するスピン角運動量の微視的状態は離散的なレベルに分かれる。その各レベルへの分布確率は熱平衡状態ではボルツマン分布に従う。そのボルツマン分布に現れる温度パラメータが励起温度である。熱平衡状態にない場合でも、各エネルギー準位への分布の比が、熱平衡状態での励起状態の分布の比と同じになる温度パラメータのことを励起温度と呼ぶ。天文学で通常使われるスピン温度は水素原子に対する励起温度である。水素原子核(陽子)のスピンの向きに対して、電子のスピンが平行になっている状態は反平行になっている状態よりもエネルギーがわずかに高い。このスピンが平行になっている原子の数と反平行になっている原子の数の比に相当するボルツマン分布の温度(励起温度)をスピン温度と呼ぶ。
なお、低温かつ低密度のガス中では十分な頻度でガス粒子の衝突が起こらないため、スピン温度は運動温度と等しいとは限らない。

2018年03月23日更新

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