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光学くさび

 

よみ方

こうがくくさび

英 語

optical wedge

説 明

ガラスなどの光を透過する薄板の表面に、一方の端からもう一方の端に向かって一定の割合で光の透過率が変わるような処理をした光学素子。これを写真乾板や写真フィルムの前に置いて一様な光で露光し現像すると、露光量の変化に伴って写真濃度(黒み)がどのように変化するかがわかり、特性曲線を描くことができる。
光学くさびは濃度を階段状に変えてあることが多く、そのような素子は階段くさび(step wedge)と呼ばれる。階段くさびには非透過型のものもある。これは、階段状に濃度を変えて焼きつけた印画紙であると考えれば良く、焼きつけた写真(ポジ写真)と比較して、適切な焼き付け濃度であるかどうかを判定するために用いる。
特性曲線を作る別の方式で、写真乾板上に照度の異なる円形スポットの列を露光させるチューブセンシトメータと呼ばれる装置がある。これはチューブの出口と入り口の大きさを変えることで照度を変える仕組みである。
いずれにせよ、これらを用いて焼き付けられたくさびやスポット列は、その写真乾板の特性曲線を作るのに必須であり、天体写真測光に使うほとんどの写真乾板に見られる。アイリスフォトメータで星の明るさ(等級)を測定する場合には必ずしも必要ではない。
一方、くさび型プリズム(optical wedge prism)のことを光学くさびと呼ぶこともある。くさび型プリズムは、頂角が非常に小さい薄型プリズムである。頂角が小さく薄型のため、入射光はほとんど色分散せずにプリズムの厚い方に屈折する。この性質を利用して、ある特定の方向に光線を曲げる用途に主に用いられる。シュミット望遠鏡では「サブビームプリズム」と呼び、星のすぐそばに等級差が既知の暗い星像をペアで写し込み、星の等級測定のダイナミックレンジを広げるために利用された。

2022年01月24日更新

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    * 東京大学木曽観測所の105 cmシュミット望遠鏡で撮影された写真乾板に焼き付けられた階段くさび(四辺にそれぞれ焼き付けられている)
    非透過型の階段くさび。濃度を段階的に変えてあり、焼きつけた写真濃度を判定するために用いる。
    http://marathon.csee.usf.edu/Mammography/DDSM/calibrate/step-wedge.jpeg
    * チューブセンシトメータの原理図(左)と岡山天体物理観測所で使用された手札判の写真乾板に焼き込まれたスポット列と階段くさびのイメージ図。
    左図の出典 吉尾賢治、水野孝夫「写真測光用センシトメータ-」東京学芸大学紀要 4部門, 30, 329, 1978
    https://u-gakugei.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=21775&item_no=1&attribute_id=21&file_no=1
    右図の出典 岡村定矩「天体写真測光」現代天文学講座11巻『宇宙の観測Ⅰ』(恒星社)1981年
    * 木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡の補正板の前につけられたサブビームプリズム(左)と撮影された写真乾板(K3648; ⅡaO+GG385, 40分露光, 1982-02-26撮影)(右)。右図では明るい星の斜め左下にサブビームプリズムによる暗い像が見える(二つのみ矢印で表示)。
    左図の出典 木曽観測所40周年記念誌
    http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/OVERVIEW/40th_anniversary.html
    右図 SMOKA Kiso Schmidt Plate Archive Searchから取得したデジタル画像の一部を拡大し、コントラストを調整したもの。
    https://pplate.nao.ac.jp/KSPsearch