天文学辞典 :ASJ glossary of astronomy | 天文、宇宙、天体に関する用語を3200語以上収録。専門家がわかりやすく解説します。

New

コラプサー

 

よみ方

こらぷさー

英 語

collapsar

説 明

重力崩壊した星のこと。崩壊星とも呼ぶ。昔は、星が重力崩壊した後に残るもの、つまり今でいうブラックホールのことを指す言葉として使われていた。最近では、ガンマ線バーストや爆発エネルギーの大きい超新星などのコラプサーモデルの崩壊星を指すときに良く使われる。

コラプサーモデルでは、太陽の10倍程度より重い星が重力崩壊したときに、中心からジェットや円盤風を放出して、ガンマ線バーストや極超新星爆発を起こす。星が重く回転が速いので、中心にブラックホールと降着円盤ができて、ジェットや円盤風を駆動すると考えられている。ブラックホールではなく、マグネターなどの中性子星が中心エンジンの役目を果たす可能性もある。

ロングガンマ線バーストに対するコラプサーモデルの妥当性は、いくつかのロングガンマ線バーストと同時に超新星爆発が発見されたことで決定的となった。最初に発見されたGRB980425に付随する超新星SN1998bwは爆発エネルギーの大きな極超新星であった。ただし、ロングガンマ線バーストに付随する超新星でも通常のエネルギーのものも観測されている。これらは主にⅠc型超新星である。このことは、コラプサーの親星が水素外層やヘリウム外層をもたず、それらが吹き飛んだウォルフ-ライエ星のような構造をもつことを示唆する。親星に水素外層があるとⅡ型の超新星になるが、ジェットが外層を突き破れずガンマ線バーストにならない可能性がある。ロングガンマ線バーストの母銀河は金属量(重元素量)が少なく、太陽組成の10%程度以下であることが、残光の吸収線の観測などから示唆されている。

2023年09月22日更新

この用語の改善に向けてご意見をお寄せください。

受信確認メール以外、個別のお返事は原則いたしませんのでご了解ください。

    関連画像

    画像をクリックすると拡大されます

    ガンマ線バーストを発生させる超新星爆発のコラプサーモデルのコンピュータシミュレーション。太陽質量(Msun)の35倍の親星の場合。(左)鉄の中心核(2.03 Msun)を含むヘリウム中心核(14.13 Msun)の崩壊が始まって7.59秒後の中心領域の密度分布。密度の高い円盤を横から見ていて、黒い丸の中心にブラックホールがある。円盤に垂直な方向に密度の低い細い放射状領域が広がっている。ここに後でジェットが噴き出す。(右)8.42秒後、ジェットが降着円盤に垂直な方向に7000 kmまで到達した時点のエネルギー密度分布。左図の約20倍の領域を示していることに注意。
    出典:MacFadyen & Woosley 1999, ApJ, 524, 262