統計視差
よみ方
とうけいしさ
英 語
statistical parallax
説 明
まとまった数の天体について統計的処理を施すことで、その天体までの距離を求める方法。異なった原理に基づく複数の方法のいずれも統計視差と呼ぶことがあるので注意が必要である。具体的には以下のいずれかの方法を指すことが多い。
(1) 何らかの方法で相対距離がわかっている多数の天体について、その視線速度と固有運動を測り、視線速度の分散と相対距離で補正した固有運動の分散とが一致するように相対距離の原点を求める方法。セファイドの周期-光度関係が小マゼラン銀河で発見された直後に、これを天の川銀河(銀河系)内の多数のセファイドに対して適用することで、周期-光度関係の絶対値を決定したのが有名な例。
(2) 星団のように、同一の距離にあると考えられる天体中にある多数の天体について、その視線速度と固有運動を測り、視線速度の分散と固有運動の分散とが一致する距離を求める方法。超長基線電波干渉計(VLBI)による晩期型星や原始星周囲のメーザー電波源の観測結果に対して使用例がある。
(3) 収束点法のこと。流星視差ともいう。1つの星団に属する多数の恒星の固有運動を測り、その収束点を見つけることで天球上での見かけの大きさの縮小率を求め、それが一定サイズの星団が後退するためと仮定して、それが観測される視線速度と一致する距離を求める方法。
(4) すべての天体の明るさの分布が天体集団ごとに同一であるとして、その見かけの明るさと数の関係から距離を求める方法。ハーシェル(W. Herschel、1738-1822)が1785年に宇宙全体の形状として、天の川銀河の全体像に相当する恒星分布形状を描いた際に用いた。ただし、実際は星間吸収により、天の川銀河の一部しか見えないため、天の川銀河としても正しい全体像を得ることはできなかった。
2024年11月12日更新
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