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ミッシングマス

 

よみ方

みっしんぐます

英 語

missing mass

説 明

重力の大きさから推定された質量と観測された質量の差。行方不明の質量とも呼ばれたが、1980年代以降はダークマターと呼ばれるようになった。
1937年にツビッキー(F. Zwicky)が、かみのけ座銀河団でその存在を示唆した。1960年代にはオールト(J.H. Oort)が、星の運動の解析から、太陽近傍にも存在することを指摘した。当然そこに存在するはずの質量が見当たらないとの観点から当時はミッシングマス(行方不明の質量という意味)と名付けられた。その後さまざまな観測から、ミッシングマスは宇宙に普遍的に存在することが確かとなり、ダークマターと呼ばれるようになった。 現在知られているミッシングマス(ダークマター)の存在を示す証拠としては、以下のものがある。
1.  渦巻銀河の回転曲線が銀河円盤の外縁部まで平坦である(回転速度が減少しない)ことから銀河周辺部には可視光や電波で観測できる恒星や星間物質に比べてずっと多くの質量がある。
2. 円盤銀河の中で恒星が長期間にわたって円盤状に安定して分布しているためには、それを取り巻くように大きな質量が分布している必要がある。
3. 観測される銀河の運動によって銀河団がばらばらになってしまわないためには、見えている銀河の総質量による重力では不十分で、その数倍以上が必要となる。
4. X線で観測される銀河団を包み込む高温ガスが宇宙空間に飛び散らないよう銀河団中に引き留めておくためには、銀河と銀河団ガスの質量では足りない。
5. 重力レンズ効果によって銀河団の質量を推定すると、見えている銀河と銀河団ガスの質量よりもはるかに大きな値となる。
6. 宇宙マイクロ波背景放射には10万分の1程度の温度ゆらぎがあり、これは宇宙の晴れ上がりの時点での物質密度のゆらぎを反映している。この密度ゆらぎを種にした自己重力による天体の形成を考えると、宇宙の年齢に当たる138億年程度の時間では、現在観測されている宇宙の大規模構造はもちろん、銀河スケールの天体も形成することができない。従って、宇宙マイクロ波背景放射に影響しない、電磁波との相互作用がない物質による密度ゆらぎが宇宙の晴れ上がり以前にできていたと考えられる。

2018年10月06日更新

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