ハッブル
よみ方
はっぶる
英 語
Hubble, Edwin
説 明
エドウィン・ハッブル(Edwin Hubble; 1889-1953)はアメリカの天文学者。渦巻星雲が銀河系(天の川銀河)と同規模の恒星の大集団(銀河)であることを発見し、さらに銀河の速度-距離関係を見つけて宇宙が膨張していることを実証した。アメリカのミズーリ州に生まれ、奨学金でイギリスに留学し、シカゴ大学ヤーキス天文台で星雲の研究で学位を取得した。
宇宙の大きさと渦巻星雲の正体に関する大論争を聞いて、その解決の鍵は渦巻星雲中のセファイドの観測にあることを確信した。渦巻星雲とは、天球上で天の川から離れた場所で見られる淡いぼんやりした天体で、微かに渦巻き模様が見られることからこの名前で呼ばれていた。当時は渦巻星雲の距離がわかっていなかったので、その正体も不明で大論争のきっかけとなった。ハッブルはウィルソン山天文台で渦巻星雲の写真観測を行い、1923年についに渦巻星雲の一つであるアンドロメダ星雲(M31)中にセファイドを発見して、周期-光度関係からその距離決定に成功した。その結果、M31は銀河系の外にある島宇宙であることが明らかとなり、島宇宙は後に銀河と呼ばれるようになった。これは「銀河の発見」とも言われるが、人類の認識する宇宙の広がりを100倍以上も拡げる画期的な発見であった。
さらにハッブルは、24個の銀河の距離をセファイドなどの観測から決定し、すでに公表されていたヤーキス天文台のスライファー(V. Slipher)による赤方偏移(4個は同僚のハマソンによる値)から求めた後退速度との関係を調べた。その結果、銀河までの距離と後退速度とが比例する(遠方の銀河ほど距離に比例する速い速度で我々から遠ざかる)という関係を1929年に発見した。これは宇宙が膨張していることを示すもので、それ以降「ハッブルの法則」と呼ばれてきた。ところが、この関係はベルギーの宇宙物理学者でカトリックの神父でもあるルメートルが(G. Lemaître)1927年にベルギーの学術雑誌にフランス語で書いた論文にも記述されていたので、国際天文学連合(IAU)は2018年に、「宇宙膨張を表す法則は今後ハッブル-ルメートルの法則と呼ぶことを推奨する」という決議を採択した。
ハッブル-ルメートルの法則の比例定数はハッブル定数と呼ばれ、ハッブル自身も最初の数値を求めて以後、パロマー天文台の200インチヘール望遠鏡も使って、改良に努めた。1953年の急逝によってハッブルの構想はサンデージに引き継がれた。1936年にハッブルがエール大学出版会から出版した「The Realm of the Nebulae」(邦訳「銀河の世界」戎崎俊一訳;岩波文庫)は、初めての体系的な銀河の教科書として、銀河天文学のバイブルとも言える存在である。王立天文学会ゴールドメダル受賞。ハッブル宇宙望遠鏡(HST)はハッブルを記念して命名された。
2025年01月26日更新
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