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HR図

高

よみ方

えいちあーるず

英 語

Hertzsprung-Russell (HR) diagram

説 明

恒星のスペクトル型と光度(絶対等級)の分布図。縦軸を絶対等級(上が明るい)、横軸をスペクトル型(右が低温)にとる。この図を考案したヘルツシュプルング(E.Hertzsprung)とラッセル(H. N. Russell)の名前をつけたヘルツシュプルング-ラッセル図が正式名称であるが、多くの場合略してHR図と呼ばれる。
図1が初めて公表されたHR図である。斜めの二本線の間に多くの星が分布しており、ここは主系列と呼ばれ、ここに分布する星は主系列星と呼ばれた。主系列の上のほぼ水平な領域に分布する星は巨星と呼ばれた。このHR図は恒星の誕生と進化を理解する上で極めて重要なツールとなった。HR図上での星の明るさの違いを表すためには光度階級が用いられる(図2)。スペクトル型は星の有効温度の系列なので、スペクトル型の代わりに有効温度を表す色指数を横軸にとっても同様の図が得られる。これは色-等級図(C-M図)と呼ばれる。これも含めてHR図という場合もある。近年の研究ではHR図よりも色-等級図が用いられることが多い。
恒星は誕生から死まで進化に伴いHR図の中で移動してゆく。星の進化の様子は星の質量によって大きく異なる。 星団のように同時期に生まれた恒星の集団のHR図上では、質量の違いによる恒星の進化段階に対応したいくつかの系列が見られる(図3参照)。 恒星が中心での水素の核融合によって輝く段階では、質量が大きいほど温度が高く、光度も高くなり、HR図上で左上から右下に延びる主系列の上に乗る。中心部で水素が枯渇すると星は主系列を離れてゆく。ここを転向点と呼ぶ。主系列を離れた後には、低温で光度の高い領域に多くの恒星が存在するようになり、赤色巨星分枝が現れる。このほか、さらに進化の進んだ赤色巨星に対応する漸近巨星分枝金属量の低い星団などに見られる水平分枝がある。
理論的考察においては縦軸に絶対等級の代わりに光度を、横軸に有効温度の対数をとった図がよく用いられるが、表現している内容はHR図と同じである。

2024年11月19日更新

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    * 図1 ラッセルにより出版された最初のHR図。1913年春の時点で年周視差から距離が求められていた約300の星が対象である。黒丸は2-3個の測定の平均、白丸は1測定のみ。小さい点は誤差大(>±1 mag)。上の6個の大きな白丸は固有運動の小さい120個の星から求めた平均値。二本の線のあいだ(主系列)に多くの星がある。
    (Russell, H. N. 1914, 'Relations Between the Spectra and other Characteristics of the Stars. II. Brightness and Spectral Class', Nature, 93, 252 の原図より制作; Russell, H. N. 1914, Popular Astronoy, 22, 275 にも同じ図がある)
    太陽近傍の23.000星(「ヒッパルコスカタログ」からの22,000星と「グリーゼカタログ」からの1000星)のHR図。太陽は、縦軸で光度=1(絶対等級+4.8)、横軸でB-V=0.66(温度5780 K, スペクトル型G2V)の位置にある。
    https://en.wikipedia.org/wiki/Hertzsprung%E2%80%93Russell_diagram より
    以下の原図を改変した。
    https://en.wikipedia.org/wiki/Hertzsprung%E2%80%93Russell_diagram#/media/File:HRDiagram.png (Richard Powell - The Hertzsprung Russell Diagram)
    この原図のラベルを日本語とし、「Ⅶ 準矮星」は原図になかったが書き加えた(岡村定矩)。
    *図2 HR図上の光度階級。大脇他「天文資料集」(東京大学出版会)の原図より制作
    球状星団の色-等級図、実線は等時線(等時曲線)。
    理科年表オフィシャルサイト徹底解説(丸善、国立天文台)
    https://official.rikanenpyo.jp/posts/6138
    (Salaris, M. et al. 1997,The Astrophysical Journal, 479, 665にある図をもとに作成)
    *太陽から200 パーセク以内にある約「18000個の恒星のHR図。○印の大きさでその位置にある星の個数が表されている。
    安藤裕康「星の明るさと色」、シリーズ現代の天文学 第7巻、野本・定金・佐藤編『恒星』 1.1節 図1.7(日本評論社)