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バーデ-ウェッセリンク法

 

よみ方

ばーでうえっせりんくほう

英 語

Baade-Wesselink method

説 明

星の真の大きさと見かけの大きさ(視直径)から、セファイドこと座RR型変光星のような脈動変光星の距離を求める幾何学的方法。年周視差による方法と同じ幾何学的方法なので、宇宙の距離はしごの最も基本的な方法の一つである。アメリカのバーデ(W.Baade)により1926年に提案され、1946年にオランダのウェッセリンク(A.J.Wesselink)により改訂されたのでこの名前がある。

この方法では脈動の1周期にわたる分光観測によって、星の表面の速度変化 $v(t)$ を測定し($t$ は時間)、

$$\int_{t_0}^{t}v(t)dt=R(t)-R(t_0)=\Delta{R}$$

として半径の変化量 $\Delta{R}$ を求める。一方で対応する1周期での星の視直径の変化 $\Delta\theta$ を求める。星までの距離を $d$ とすると両者の間に $2\Delta{R}=d\Delta\theta$ の関係があることを利用して $d$ を求める方法である。

視直径の変化 $\Delta\theta$ を求めるには二通りの方法がある。一つは星の有効温度 $T_{\rm eff}$ として、星の単位表面積から放射されるフラックスを $F_\lambda(T_{\rm eff}(t))\equiv{F}_\lambda(t)$ と書く。モデル大気あるいはG, K, M型の巨星に対する星の色指数表面輝度の経験則から $F_\lambda(t)$ を求め、星の明るさ $S_\lambda(t)$

$$S_\lambda(t)=\frac{\pi{R(t)^2}F_\lambda(t)}{d^2}=
\frac{\pi\theta(t)^2F_\lambda(t)}{4}$$

で表されることから、$S_\lambda$ の時間変化(光度曲線の振幅)から $\Delta\theta$ を求める。もう一つは高分解能の干渉計観測で直接 $\Delta\theta$ を求める方法である。

2023年05月12日更新

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