フリードマン宇宙
よみ方
ふりーどまんうちゅう
英 語
Friedmann universe
説 明
宇宙の振る舞いを記述する宇宙モデルの一つで、1922年にロシアのフリードマン(A. Friedmann)が、アインシュタイン(A. Einstein)の一般相対性理論の方程式を宇宙全体に適用して発見した。フリードマンモデル、フリードマン解などとも呼ばれる。アインシュタインは、宇宙を静止させることができるように1917年にすでに方程式に宇宙項(宇宙定数)を付け加えていたが、フリードマンの解は宇宙定数がなくても宇宙は膨張したり収縮したりすることを示していた。1927年には、ベルギーのルメートル(G. Lemaitre)もフリードマンとは独立に、一般相対性理論の方程式から膨張したり収縮したりする宇宙モデル(ルメートル宇宙)を導き出していた。
宇宙定数 Λ=0 の場合、フリードマンモデルでは、宇宙は静止しているのではなく、時間とともに膨張あるいは膨張の後収縮する。そのどちらになるかは、宇宙にある物質密度によって決まる。宇宙の物質密度を臨界密度を単位として表したΩ0 を密度パラメータと呼ぶ。物質のない空っぽの宇宙(Ω0 =0)では、膨張は減速することなく一定の割合で宇宙が膨張する。密度が臨界密度より大きい(Ω0 が1より大きい)と、重力が強いので膨張がある時期に収縮に転じる。物質密度が臨界密度に等しい場合は、膨張は減速し続けるが止まることはなく、宇宙は無限の未来に静止する。宇宙のスケール因子を縦軸に、時間を横軸に取った図でこれらのモデル曲線の、現在における接線の傾きがハッブル定数(H0)で、その逆数であるハッブル時間は宇宙年齢の目安となる。
この解の発見当時は宇宙は静止していると考えられていたので、アインシュタインすらフリードマンやルメートルの計算間違いを疑うほどであった。計算が正しいことがわかってもフリードマンの宇宙モデルは数学的には意味があるが現実の宇宙とは関わりないとして重要視されなかった。1929年にハッブル(E. Hubble)により宇宙の膨張が観測的に確認され、アインシュタインは宇宙項を導入したことを大変後悔した。近年になって宇宙の加速膨張が確認され、宇宙項を含めた宇宙モデルが復活した(宇宙項の導入でアインシュタインが目指した宇宙定数Λが0でない静止宇宙は、実は安定ではなく、わずかなゆらぎによって膨張あるいは収縮する)。
ビッグバン、ビッグクランチ、ビッグリップ、ビッグフリーズも参照。
2023年07月30日更新
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