スペクトル型(星の)
よみ方
すぺくとるがた(ほしの)
英 語
spectral type
説 明
スペクトルによる恒星分類で用いられるグループ(下の表参照)。星の放射スペクトルには、連続光成分に加え星の大気中の原子や分子によるスペクトル線吸収が現れる。この吸収スペクトルの種類と強度により、星のスペクトル型が定義される。ハーバード分類では、吸収スペクトルの種類と強度によってO型、B型、A型、F型、G型、 K型、M型という温度に対応する系列と、化学組成の違いに対応するR型、N型、S型がある。さらにそれぞれの型を10分割して0から9を付けて細分類する。温度系列については、後年、M型よりも低温な褐色矮星の分類としてL、T、Y型が追加された。
それぞれのスペクトル型の特徴を表に示す。最も高温のO型ではヘリウムの吸収線が特徴である。温度が下がるにつれてさまざまな中性原子の吸収線、さらに低温になると分子の吸収帯がスペクトル型の決定に使われる。具体的には、B型からA型では水素のバルマー系列の吸収線(Hα~Hε...)が顕著である。F型からG型にかけてはカルシウムのHK線が強く、K型に向かうにつれ多数の中性原子(金属)の吸収線が現れそれによって紫外部分の連続光が弱まる。M型星ではさまざまな分子とくにTiOのバンドが目立つ。 また、一部の星では炭素が酸素に比べて著しく増加し、その比(C/O)が1と同程度ないしは1以上になっている星もある(太陽ではC/Oがほぼ0.5)。炭素が過剰な低温度星では、M型星と違って C2 や CN などの炭素を含んだ分子の吸収スペクトルが現れる。これらはC型星(炭素星)と総称され、比較的温度の高いR型と、低温のN型に分けられる。低温だが酸化チタンも炭素関連の分子吸収も弱い星はS型星と呼ばれ、この星ではC/O比がほぼ1となって両元素がほとんど一酸化炭素(CO)になっていると考えられている。
また、特異なスペクトルを持つものに対し、pの添え字で特異性(peculiar)のあること、eの添え字で輝線(emission)を持つことを示す。Of はHe IIとN IIIの輝線を示すO型星、Amは金属線のあるA型星を示す。白色矮星を示すために、wまたはDを頭に付けること(wG, DBなど)、準矮星を示すためにsdを付けることがある(sdGなど)。また、矮星、巨星、超巨星の3つを識別するために、d,g,cを付けることがある(dG, gK, cAなど)。
一方、恒星の光度(絶対等級)の違い(光度階級)による分類では、I(超巨星)、II(輝巨星)、III(巨星)、IV(準巨星)、V(主系列星)、VI(準矮星)、VII(白色矮星;記号Dが用いられることが多い)が定義される。これを細分するには、a, ab, b(aはより明るく, bはより暗い)を後につけるか、2つの階級記号をハイフンでつないで中間を表す。
温度系列を表すハーバード分類に光度階級分類を加えた方式としてMK分類が現在はもっぱら用いられている。たとえば、太陽はG2V型と表記される。スペクトル分類(星の)も参照。
出典:安藤裕康「星のスペクトル分類」、シリーズ現代天文学第7巻、野本・定金・佐藤編『恒星』1.1節 表1.1(日本評論社)
2023年05月08日更新
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