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スローンデジタルスカイサーベイ

 

よみ方

すろーんでじたるすかいさーべい

英 語

Sloan Digital Sky Survey(SDSS)

説 明

北天を中心とした全天の約1/4の天域の可視光による撮像分光サーベイで、天文学史上最も重要なサーベイ観測プロジェクトの一つとされる。過去最大の銀河赤方偏移サーベイでもある。
プリンストン大学のジェームズ・ガン(James E. Gunn)らによって構想され、1991年に米国のアルフレッド P. スローン財団からの資金援助を受けて、米国の7機関によって開始された。1992年には日本参加グループが8番目の参加機関として加わった。望遠鏡と観測装置などの建設期間中にドイツのマックスプランク天文学研究所が参加し、9つの参加機関で2000年よりサーベイ観測が開始された。
観測には、米国ニューメキシコ州のアパッチポイント天文台に建設された口径2.5mの専用広視野望遠鏡が用いられ、撮像サーベイと分光サーベイが並行して行われた。撮像観測は視野2.5度の大型モザイクCCDカメラを用いて可視域全域をカバーする5つのバンド(u, g, r, i, z)で行われ、そのデータから選ばれた分光対象天体が、640本の光ファイバーを持つ多天体分光器で分光された。観測データはシカゴ近郊のフェルミ加速器研究所へ送られ、新たに開発されたSDSS専用のパイプラインソフトウェアで解析され、一定期間後に順次公開された。観測データの公開が始まると参加希望機関が増え、後にレガシーと呼ばれるようになった約8000平方度をカバーする当初構想の観測が終わる2008年には、参加機関はさまざまな国から25機関に上った。
レガシーサーベイにおいて、撮像サーベイで検出された天体は2.3億個、分光された天体は、銀河93万個、クェーサー12万個、天の川銀河銀河系)の星46万個である。レガシーサーベイのすべてのデータは世界に公開されており、インターネットを通してダウンロードできる。このデータを用いた研究は、太陽系から宇宙論まで、天文学のあらゆる分野に及んでいる。
レガシーサーベイの成功を受けて、SDSSはさまざまな研究目的を掲げた新たなサーベイへと発展した。対象を銀河系や超新星に絞った第2次サーベイ(SDSS-II)が2005-08年にレガシーと並行して行われた。2008年から2014年までは太陽系外惑星の探査、銀河系の探査、ダークエネルギーの研究などの第3次サーベイ(SDSS-III)が行われた。2014年からは、南天・北天からの銀河系の探査、近傍銀河の面分光、銀河とクエーサーの探査によるダークエネルギー研究を目的とする第4次サーベイ(SDSS-IV)が進行中である。
レガシーサーベイを構想し、装置開発からデータ解析までプロジェクト全体を主導したプリンストン大学のジェームズ・ガンは2019年の京都賞を受賞した。
SDSSホームページ: https://www.sdss.org/
京都賞受賞者: https://www.kyotoprize.org/laureates/

2019年11月19日更新

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    * 世界最大のSDSSモザイクCCDカメラ。
    (関口真木氏提供)
    口径2.5m望遠鏡。通常の望遠鏡とは異なり、観測時は望遠鏡から格納庫が完全に取り払われる。格納庫にたまった熱によるかげろうで像が劣化するのを防ぐためである。格納庫の外に置かれるため、風除けのバッフルは望遠鏡の本体に取り付けられている。鏡筒の周りに見えている四角い金属製の構造がバッフルである。
    http://www.sdss.org/photos/00_427.300dpi.jpg
    http://www.sdss.org/gallery/gal_photos.htm
    アパッチポイント天文台全景。一番左がSDSSの望遠鏡、中央奥がARCの3.5m望遠鏡、右奥に見えるのが、サクラメント・ピーク観測所の太陽望遠鏡の塔。
    http://www.apo.nmsu.edu/newimages/sitesm.jpg
    SDSSによる銀河の空間分布。
    http://www.sdss3.org/images/gallery/sdss_pie2.jpg