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プラネタリーディフェンス

 

よみ方

ぷらねたりーでぃふぇんす

英 語

planetary defense

説 明

天体の地球衝突から人類を守ろうとする活動のこと。スペースガード(spaceguard)と呼ばれることもある。「地球防衛」という日本語が当てられることもある。
太陽系の約46億年にわたる歴史において天体の衝突は常に起こっていることではあるのだが、この天体衝突が人類にとって非常に大きな脅威になりうるということが広く認識されるようになったのは、恐竜絶滅が小天体の地球衝突によるという説が1980年にルイス・アルバレス(Luis Alvarez; 1911-1988)らによって発表されたことによる。1990年代になると、天体の地球衝突に具体的に対応していこうという活動がスペースガードという名称で開始された。1996年には、国際スペースガード財団や日本スペースガード協会が設立されている。1998年頃からは、地球接近天体(Near Earth Object: NEO)の発見が急速に増大しはじめた。また、2000年頃からは国連の中でも議論が始まり、名称もプラネタリーディフェンスと呼ばれるようになった。
プラネタリーディフェンスとして行うべきことは、第一に地球に衝突するNEOを発見し、追跡観測を行って軌道を正確に求めることである。軌道が正確に分かれば、地球に衝突するかどうかを軌道計算によって確認することができる。第二には、地球に衝突するNEOが発見された場合に備えて、衝突回避方法の検討を行うことである。そのためには、NEOがそのような物理的性質を持っているのかも把握しておく必要がある。また、地球衝突回避ができない場合には、どのようにして被害を最小化するのかも重要な検討課題である。国際協力やそのための法整備、そして一般への情報発信の仕方の検討など、プラネタリーディフェンスの活動は多岐にわたる。
現在、NEOの発見個数は急速に増大しており、2022年半ばで約3万個発見されている。小惑星の物理的性質を調べる探査も進められており、探査機が接近したNEOは約10個にのぼる。一方で天体の地球衝突回避のために小惑星の軌道を変更する実験がアイーダ計画として行われている。アイーダ計画は米国のダート探査機と欧州のヘラ探査機で構成されている。ダート探査機は、2022年9月に小惑星ディディモス(Didymos)の衛星ディモルフォス(Dimorphos)に衝突し、その軌道を変更する実験を行った。2029年には大きさが300 m余りの小惑星アポフィス(Apophis)が地表から約3万kmの地点を通過することが予想されており、その観測も計画されている。
ホームページ
NASAのPlanetary Defense Coordination Office
https://www.nasa.gov/planetarydefense/
ESAのホームページ
https://www.esa.int/Space_Safety/Planetary_Defence

2023年11月07日更新

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