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鏡材

 

よみ方

きょうざい

英 語

mirror substrate

説 明

鏡を作る材料物質のこと。よく用いられる鏡材はガラスを基本としている。望遠鏡に用いる鏡材は、数十年に渡って安定であり、運搬や設置時に破損しない強度が必要である。また、加工や運用時の変形を小さく抑えるため、内部応力および熱膨張係数が十分小さくなければならない。望遠鏡はさまざまに変化する温度環境下で使用されるため、特に熱膨張係数が重要である。大型望遠鏡の主鏡素材として用いられているULE(超低膨張チタニウムケイ酸ガラス)、ゼロデュワ、クリアセラムZなどのガラス材は、常温でアルミニウムより三桁小さい熱膨張係数(温度変化1^{\circ}C当たり膨張する割合が1億分の1程度)を持つ。すばる望遠鏡の主鏡はULEである。パロマー山の5mヘール望遠鏡の主鏡は、パイレックスという低膨張ガラスを使用しているが、これはボロシリケートと呼ばれるガラス材の一種である。ボロシリケートは安価かつ化学的に極めて安定で取り扱いやすいが、熱膨張係数はULEなどより二桁程度大きい。このため、大型望遠鏡では精密な温度管理が必要となる。

ガラス材以外にも、SiC(シリコンカーバイド)やベリリウムなどが、その高い剛性を生かして超軽量鏡を製作するのに使われている。両方の素材とも、熱膨張係数は大きく、また加工も難しいため地上望遠鏡で用いられることはほとんどないが、高い剛性と優れた熱伝導率は宇宙での使用に適しており、スペース望遠鏡用の鏡材として用いられている。反射望遠鏡ゼロデュワも参照。

2018年09月05日更新

関連画像

*よく用いられる鏡材の熱膨張係数の温度依存性
吉田道利「地上望遠鏡」、シリーズ現代の天文学第15巻、家・岩室・舞原・水本・吉田編『宇宙の観測I』第2版 5.1節 図5.2 (日本評論社)